ARMORED CORE BATTLE FIELD OF RAVEN


第55話   脱出へ―再開―




 「ジオ、トコロで、見えたか?」
 「何が?」
 「ミサイルに何かのロゴマークが入ってたろ?」
 「それは気にしなかったな、でかいミサイルと言うだけで」
 「アレ・・・俺もよく見えなかったが、もしかしてアトミック・ボムだったんじゃないかな〜って」
 ジオとノアは話しながら地下水道を進んでゆく、爆風がなさそうな場所へ向かって。
 その中で交わされた1つの言葉、核爆弾(アトミック・ボム)。

 レイヴン間で核と呼ばれる『WM‐AT』とは威力が違う。
 数キロの物体をほぼ完全に吹き飛ばし、数千数万の熱を辺りにまき散らす。
 ある学者はこれを『狂った太陽』と表したほどだという。

 「それは・・・シャレにならないな」
 「だろう?」
 そう言って2人は歩行速度を上げた。


 「所で、大きなミサイルって言ってたわよね?何が『見えた』の?」
 「よく分からないけど・・・とても大きな爆発よ、この都市の地表部分をほぼ一瞬で吹き飛ばす位の威力はあるみたい」
 「それ・・・核じゃないの!」
 「え?あの核弾頭?」
 「だとしたら急がなきゃ・・・ミリィ、急いでもっと地下に潜らないと危ないんじゃないの?」
 「そ、そうね、急がなきゃ!」


 「さて、核と言ったが、あの大きさ、マークからして戦略核ではなく戦術用の限定核のようだな・・・」
 蒼い機体、ジェニスは呟く。

 戦略核と戦術核では威力がある程度違う。
 吹き飛ぶ事には変わりないが限定核の方が威力がある程度小さい。

 「だとしても地表付近が危険なことには変わりないな、とりあえずビルか何かの下にいた方が良さそうだ」
 蒼い機体は歩を進めた。


 通常核弾頭は地表面ではなく空中数百メートルで爆発させたほうが威力がある。
 その方が爆発力が空中に拡散せず、地上を破壊することが可能だからだ。
 今回の爆弾もその例に漏れることはなく、空中で爆発した。

 「ペンタグラムの全弾爆発確認、味方の被害は・・・確認されておりません」
 「そうかそうか、では一応敵を探しに行くとしようか、最も、あんな爆発の中生きているACなど存在すれば、だがな」
 退避していたAC部隊は再び動き出した。



 「どうにか無事だったようだな、お互いに」
 「そうだな・・・ACにも損害は見あたらないぞ」
 「それでだ、次にやることは残存する兵器の回収だと思うんだ、それで発見される可能性がある」
 「回収?核汚染された武器をか?というよりも形すら残ってないんじゃないのか?」
 「当然だろ?地表面は核汚染される前から大破壊の爪痕がさんざん残ってるんだ、核汚染を除去する手段があってもおかしくないだろ?」
 「ちょっと待て、レーダーに反応・・・もう見つかったのか?」
 「いや、高度を見てみろ、同じ高度に反応がある、ということは敵ではないだろう、多分今のところは」
 「・・・そうだな、でも油断するなよ、敵だったらブチ倒すだけなんだから」
 「了解」
 レーダーに反応のあるところへ、2人、ジオとノアは歩を進めた。


 「ところで、普段あの力を使わないわよね、どうして?」
 「あの力、あの時は役に立ったけど・・・普段は使いたくないの、それに・・・疲れるし」
 「そうなの、まぁ疲れる上に嫌悪感があるんじゃ普段は使いたくないわよね、でもどうやってるの?」
 「普段は自己催眠をかけてるの、使えないようにって、それでも時々見えちゃうんだけどね」
 「そう言えばさっきも突然だったけど、アレも偶然?」
 「そうよ、偶然に助けられるのってイヤ?」
 「別にそう言うのはないけど・・・ちょっと待って、レーダーに何か映ってるわ」
 「敵なの?」
 「そう言うのではないみたい・・・でもこっちに通信しようとしてるみたい、指向性通信で何か送ってきているわ」

指向性通信・・・
一定の方向に電波を送り、電波が広域に拡散しないようにした特殊な通信のこと。
傍受されにくいなどの効果があるので近距離ではよく使われる。
ただし、相手が移動してしまえばその電波は相手に届かないなどの欠点もある。

 「どうやら文字での通信みたいね、えっと・・・
 『地表で核を使った連中の仲間でないならば俺達は敵ではない』ですって」
 「一方的ね、でも敵が何かの工作をする時間なんて無かったから敵じゃないんじゃないの?」
 「まぁ味方かどうかは実際会ってみないと分からないしね、言ってみましょう、ミリィ」



 4機のACが向かい合っていた。
 だが誰も動こうとはしない、互いが互いに警戒していた。
 数秒の逡巡の後、1人が口を開く。
 「どうやらお互い、目的は似たようなモノらしいな、そして、互いにはめられたと言うことも」
 青年の声だった。
 「とりあえず、今から俺はACを降りる、信用してくれよ」
 その声に、何か懐かしさを感じる者が1人。

 兄さんの感覚と似ている・・・

 そんな風に感じたのはミリアムだった。
 でもそんなはずはないと理性が答える。
 兄は既に死んでいて、だからここに自分はいる。
 仇を討ちたい。
 そんな気持ちだったから。


 ACのハッチが開く。
 年の頃は20前後の男だった。
 しかし地下は暗くて顔までは見えない。
 「そのままでいい、話を聞いてくれ」
 ACを前に、物怖じすることなく、男は話し出す。
 「互いに罠にかけられたってのは信用してくれ、ただ、この俺の提案に乗ってくれとまでは言わない」
 そんな言葉から始まった。
 「どうだろう?互いに協力して・・・出来れば4人全員で生きて還らないか?」
 やはりそれか、少女達は思った。
 確かにそうすれば比較的生還できる可能性が高くなるだろう(最も、この状況が最悪なので大して変わらないが)
 罠の可能性があるため迂闊には提案に乗れない、彼女達はそう考えた。
 「分かったわ、でも、こっちはあくまでバックアップ、そちらが中心になって戦う、これが条件ね」
 それは不振な動きをしたら即座に撃つと言うことだ。
 「よし、決まりだ」
 以外にもその男はあっさり条件を飲んだ。
 「ノア、決まりだ!条件を受けてくれたぞ!」

 ノア、それは彼女の兄の名前。

 「分かった分かった、そんなにでかい声じゃなくても聞こえるぞ、ジオ」

 ジオ、それは彼女の兄の名前。


 『兄さん?』
 2人の声が、見事にハモった。
 2人が、同時にコックピットから這い出し、それぞれの兄の元へと駆け寄る。
 「・・・やっぱり」
 「え・・・」
 お互いがお互いに、まさか、としか考えられなかった。
 一瞬の間が空き、互いに抱き合う。

 「生きてた・・・生きてたんだね・・・兄さん!」
 「おお・・・生きてる、ここにいるぞ」
 互いに何を言っているのかは分かっていないだろう、心は、再開という事実で一杯だったから。



 「感動のシーンに水を差すようで悪いが・・・」
 ACの外部スピーカーから聞こえた音、彼等、彼女達ではないACの声。
 素早く、ACの影に隠れる4人。
 「ああ、そう緊張しないでくれ、俺も君達と同じく罠にかけられたレイヴンだよ」

 「ミリィ・・・ACに向かって走れるか?」
 一瞬で彼等は戦士の顔に戻る。
 「うん・・・ここからなら30秒もあれば起動までできるはずよ」
 「じゃ、それで行こう、でもコックピットに入ってもすぐに起動して攻撃するなよ、交渉できる相手かもしれないからな」
 「わかったわ」
 感動の再開から瞬時に作戦会議へと移れるあたり、互いが互いに、尋常ではない修羅場をくぐってきたことが分かる。
 でも、それはあえて口にしない。

 「立ち聞きとは良い趣味じゃないな」
 目の前に立っているのは彼の機体と同じ白いAC。
 「まあそう攻めないでくれないか?この機体は特別製でね、外部からの音がとても良く聞こえるんだ、有視界戦闘を考慮しているからね」
 有視界戦闘では音の聞き分けも重要視されていると言うことか、彼はそう考えた。
 「まあそういうことなら仕方ない、それで・・・さっきの話だが」
 「ああ、脱出作戦だね?もちろんだが、こっちが勝手に参加するんだ、最前衛で行かせてもらうよ」
 「じゃあ交渉成立だな、その後ろにいる奴も、聞いてるんだろう?」
 「あ、分かっちゃいました?」
 「そりゃあ、な、見えてるんだから分からなきゃおかしいさ」
 「そうですね」
 そういって、蒼い機体のパイロットは笑っていた。


 再開・・・奇跡の起こした物だろうか?
 ならば脱出で、奇跡は起こるのだろうか?
第55話 完


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後書き

パソコンに関するゴタゴタのため今回は座談会を中止します