ARMORED CORE BATTLE FIELD OF RAVEN


第54話   イレギュラー消去計画―消去者―




 「うわっ!」
 「どうした?」
 「FCSが突然不調になりました、狙いが定まりません!」
 「・・・そうか」

 それはこの時代では至極当然のことだった。
 だが、1つの可能性―それが真実なのだが―を見逃していた。
 ブレードが、スナイピング体勢のACのコックピットを後ろから一撃で貫く。

 「無能者は粛正された・・・総員出撃!」

 この言葉を合図に総計50機にもなる精鋭AC部隊が出撃した
 ・・・たった8機のAC相手に。


 「む?」
 「近いな、これは敵の増援か?」
 「分からない、とりあえずは味方の増援という可能性はなさそうだが」
 「なら作戦は1つだろ、敵のいない方に撤退して・・・フリッツ、バーティアと合流する」
 「了解、それしかなさそうだな」


 「気付いているか?気付いてないか?フフフ・・・アパタイト発射ぁ!」
 綺麗な紫色の光が見えた、瞬間爆炎が舞い上がる。
 赤い機体が崩れ落ちたのが見える。

 「グレッグ!馬鹿な・・・あそこからではスナイパーライフルだって撃ち抜くのは不可能なはずだぞ!?」
 そう言いながらも蒼い機体は次弾に備えてビル影に隠れた。


 「こちらAグループ、例のACを作戦ポイントに追い込んだ、作戦開始してくれ」
 「了解、ペンタグラムを用意する」


 「何が起こったんだ?」
 「わからん、だが、どっちにしろ良い方向に進むことはなさそうだ」
 ジオとノアはビルの影に隠れたまま話していた。

 「敵の増援かしら?」
 「ちょっと待って・・・敵の増援、とは違うみたい、言ってみるなら第3勢力、かしら?」
 ミリアムは自らの忌むべき能力を使った、生き残って帰るために。
 そして、親友、カリナが死ぬことの無いように。


 「ペンタグラム、発射!」
 五つの発射口から、ミサイルが発射されてゆく。
 その光景は遠くから、ビルの影からでもはっきりと見ることが出来た。


 「ノア・・・あれって・・・こっちに飛んでくるんじゃないか?」
 「奇遇だな、俺もそう言おうと思っていたところだ」
 両者とも、声は冷静沈着そのものだが内心はかなり焦っていた。
 その時、ACが立っていた地面の一部が崩れた。
 「ノア、これを使えばどうにかなるんじゃないか?」
 そう言って地面に思い切り踏み込んだ。
 彼の予想通り地面にACがどうにか通れる程度の穴が開いた。
 その下には大きな地下水道。
 「よし、開いた、ミサイル予想到着まであと30ってトコロか・・・ノア、先に入れ」
 「・・・分かった」
 ここでどっちが先にはいるかを討論している時間は無い、そう判断して指示通り先に入るノア。


 「カリン、地面にグレネード撃って!地下に水道があるわ」
 「どうしたの?」
 「『見えた』のよ!もうすぐ大きなミサイルが飛んでくるわ!ACどころかビルが丸ごと吹き飛ぶようなのが!」
 「分かったわ!その後の指示よろしくね」
 グレネードを撃ち込み、地面に穴をあけ、2人は水道の中に消えていった。


 「ちっ・・・くしょう、敵が多すぎる!バーティア!無事だったら返事しろ!」
 白い機体から怒声が飛ぶ。
 だが黒い機体からの返答はなかった。
 「チイィ・・やられたのかよ、一体何だってんだ!」
 白い機体は7機のACに取り囲まれ、包囲されていた。
 その中で既に2機を倒していたが、既に限界が見え始めていた。
 「くそっ!バーティアの奴、俺より先に死にやがって!」
 そう思っていた矢先、攻撃が止み、敵が撤退を始めた。
 「な・・・何だ?」
 そう思って上を見上げる、大きなミサイルが見えた。
 「核兵器?」
 有視界戦闘を優先した彼の機体のモニターは五つのミサイルに書かれた核のマークを映していた。
 彼は知っている、いや、この時代、少しでも教育を受けた人間なら誰でも知っている。

 かつて存在したジャパンと呼ばれた国を、そしてヒロシマとナガサキの悲劇を。


 「冗談じゃない・・・さすがにアレで死ぬのは勘弁して欲しいな」
 そう思い必死に考える、生き延びる方法を。
 その時足下に水の音が滴る音が聞こえた。
 「地下水道か!」
 そう思った瞬間には行動を起こしていた、足下の地面を切り裂き、迷わずそこに飛び込んだ。



 ミサイルに気付き、地下水道に逃げ込む者達。
 ―再開の時は、すぐそこまで来ていた―
第54話 完


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後書き代わりの座談会

今回はジオとノアでお届け。

ジオ「お久しぶりです、54話です」
ノア「都市に核ミサイルが・・・」
ジオ「大破壊当時には記録は残っていないが核の被害ってあったと思うが・・・」
ノア「そうなのか?」
ジオ「・・・例えば一般的に(ACの世界上では)ジャスティスが原因って言われてるけど
   撃った後で各国の報復機構が作動して核が・・・って事もあるだろうし」
ノア「・・・何かの作戦で使われたって可笑しくないと?」
ジオ「勿論それは核に限った事じゃないし、例えば中性子爆弾とか」
ノア「まあそうだな・・・」




ノア「それはそうと地下に隠れるだけで核ミサイルのダメージから逃げられるのか?」
ジオ「・・・多分大丈夫だろう」
ノア「多分って?」
ジオ「はだしのゲン参照・・・」
ノア「ああ、物陰に隠れて生きてたからってことか・・・」
ジオ「ま、そう言うことだ、地下に隠れて爆心地から遠ざかっていけば無傷じゃなくてもACを吹き飛ばすような事にはならないだろう」
ノア「もしその通りなら中のパイロットも無事、か・・・」
ジオ「ま、そう言うことです」




アパタイト・・・燐灰石のこと。
ペンタグラム・・・いわゆる五芒星です、魔術の五つの特性、人間の五感、
         自然界の五大構成要素、人間の四肢と頭部とかいろんな意味があります。