ARMORED CORE BATTLE FIELD OF RAVEN


第52話   イレギュラー消去計画―戦場へ往く者達―




 4元帥、それが彼等の異名。
 そして、イレギュラーとしてこの廃墟都市に呼集された残りの4名。
 4人がそれぞれ卓越した戦闘能力を誇り、かつてはそれを束ねたレイヴンも居た。
 だが、現在彼等はその長を失っていた。

 「4人揃っての仕事なんて久しぶりだよな」
 『赤き脅威』、グレッグは陽気に言った。
 「そう言えばそうだな・・・あれから・・・もう7年になるかな」
 『白い幻影』、フリッツは過去を懐古しつつ言った。
 「その間、色々あったな」
 『蒼き虚空』、ジェニスは、落ち着いた、何かを諦めたように言った。
 「・・・」
 『黒き死神』、バーティアは終始無言だった。

 多彩な感情、それらを、少なくとも作戦中はまとめていたかつての隊長。
 それは既にこの世から永遠に失われた。
 『虹色の奇術師』、それが束ねた者の異名。

 「バーティア、お前、何も喋らないで疲れないか?戦闘中はともかくまだ作戦区域には入ってないぜ」
 「・・・何も話さない方が楽」
 「あーそうですか」
 グレッグはこれだけでも疲れがたまるらしい。




 「それにしても・・・」
 ノアは口を開いた。
 「どうした?」
 ジオも口を開く。
 「お前、性格変わったよな」
 「それは前も説明したろ『色々あった』って」
 「俺はそれだけじゃわからん」
 どうやら彼は行方不明になっていた数年間を『色々あった』で済ませてしまったらしい。
 少なくともレイヴンになったことだけは教えたらしいが・・・
 「お前は殆ど変わってないよな」
 「ま、知っての通り俺も『色々あった』し」
 こちらは詳しく説明したようだった。

 「レイヴン、後20分で作戦領域です、そろそろ準備してください」
 「おっと、そろそろ作戦領域だ、行こうぜ、ジオ」
 「ああ・・・」
 2人とも、休憩室から格納庫へと歩き出した。




 「生物兵器、まだあったなんてね」
 カリンは溜息と同時に言った
 「予想外のことだけど、考えられなくもないわ」
 ミリアムは愛機を眺めつつ言った。
 「あの時破壊したのはたった1つの施設よ、あれが最後らしいとは聞いていたけど、まだあった可能性もあるわ」
 「そうよね、実際こういった依頼が来てるんだし・・・その可能性もあるわね」

 「もしこれから先、あんな生物兵器が出てきたらどうするの?」
 「分かってるでしょ?私たちは元々生物兵器を全滅させることが目的の組織に所属していたのよ?
  全滅していないとしたら再び叩きつぶすだけよ」

 それが自分の存在意義だったから。
 義務だったから。
 そのために死んでいった人が居るから。

 それはお互いに分かっているから。


 暫く無言が続いた。
 「作戦領域まであと5分です、ACに搭乗してください。

 「行きましょう、カリナ」
 「ええ」
 2人は格納庫に向かって歩き出す。



 全ての者には未来があるはずだった。
 それでも、未来無き存在はある。

 イレギュラー・・・そう呼ばれた者達。
 かつてネストで排除されるべき存在のことをそう呼んだ。
 再び、新たに構築された秩序を守るために。
 『一部の大人の都合』、そう呼んでしまってもいい。
 イレギュラーの排除、それが任務であり、義務。

 ネストに所属した者達の業と、それを知るネストに所属した者達。


 そして未来を信じる者達の希望。



 業と希望、その戦いが始まろうとしていた。
第52話 完


第53話へ

第51話へ

戻る


後書き代わりの座談会

今回はセンターのプレ模試で疲れましたしメンツも集まらなかったので座談会はありません。


ただし、一つだけ。
この部については番外編8「魔術師の宴」を読んでから読むとサブキャラ達の行動の理由がよく分かります。


では、次回をお楽しみに。