ARMORED CORE BATTLE FIELD OF RAVEN


第44話   2つの心―理性と本能―




 轟く爆音の正体、それはバック・ドラフト現象と呼ばれる物。

 密閉された空間で、プラズマ化されるほどの高温を持つ火炎放射器が放たれ続けた結果。
 室内の酸素量は限りなく減っていた。
 そこに、未だ火を放つ火炎放射器を持ったまま、新鮮な室外の空気が侵入した場合、
 その炎に向かって外部の空気は収束する。
 その結果、爆発する。
 2機とも吹き飛ばされた。


 青年は機体を立ち上がらせた。
 「機体の損傷状況確認・・・重大な損傷無し・・・」

 瞬間、声が、聞こえた。


 ―――壊せ、と。


 その時に、何か―それが理性や自制と呼ばれる物かもしれない―が、切れた。



 何かが弾けて、未だ起きあがれない敵機に躍りかかる。


 「おおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!」


 倒れている敵機の上に乗った。
 「楽しませてやるよ・・・死への旅路をおおぉぉぉ!」
 ブレードを振り上げた。

 刺した。
 何度も、何度も。

 ヘッド部がもぎ取られた。
 「どうだ!楽しぃだろう!お前がやってきたことはぁぁ!」
 青年は、刺し続けた、まるで楽しむかのように。

 コックピットにブレードが突き刺さる。
 「どうした、楽しんでくれよ!楽しんでくれよぉ!」

 その後、青年は、ACの腕を切り裂き、足も切り裂いた。
 「最後のプレゼントだ・・・受け取れえええぇぇぇ!」
 もぎ取られたロケットを、貫いたコックピットに砲身を当て、撃った。
 砲弾の爆発が逆流し、ロケットごと吹き飛んだ。



 ノアはしばらく気を失っていた。
 目覚めれば、そこには最早原型をとどめていない残骸があった。
 残骸の色から、それが先程戦っていた仇のACであることが分かる。
 「・・・終わった・・・のか?いや・・・これは・・・俺がやったのか?」
 不安だった。
 「もし生きているのなら、トドメをさす・・・
 外部の汚染度・・・30、通常生物生存可能、か」
 パイロットスーツのヘルメットをコックピットに置くと、ノアは外に出た。


 「うっ・・・」
 生臭い血の臭いと火薬の臭い。
 パイロットスーツのヘルメット越しならば逃れられたであろう臭い。
 無惨な死体が、目の前にあった。
 原型さえもとどめていない死体。
 それでもなお残る生臭い血の臭い。
 焼け残ったパイロットスーツがそこにいたであろう人間の血の臭いを残したのだった。

 強烈な嘔吐感。
 バラバラになったACから離れ、地面に降り立ち、吐いた。


 落ち着いた後、もう一度覗き込む。
 一本の焼けこげたコードを見つけた。
 「何だ・・・これは?」
 様々な考えが頭をよぎる、やがて1つの結論が出た。
 「・・・強化人間・・・」

 彼も聞いたことがあった。
 人間であることを捨て、強さを求め、機械と一体化した人間のことを。
 彼が手にしているのはACと人間を『接続』するためのコードである。

 ・・・こんな奴のために、みんなは・・・
 仇をとってなお、彼の憎悪は続いていた。


 ACに乗り、さらに奥へと進んだ。
 警備の本命は既に彼が沈黙させた、だからこそ、冷静さを失った彼でも無事に生き残ることが出来たのだった。

 「ああああああああああああああああ!」
 全ての敵をずたずたに引き裂く、まるで怒りの捌け口を探すかのように。

 青年は泣いていた。
 何一つ悲しくはないのに・・・
 感情は、全て切り捨てたはずなのに・・・
第44話 完


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後書き代わりの座談会

ジオ「久しぶりの座談会、44話!ノア編終了」
ノア「おい、なんでこんな終わり方やねん」
ルシード「心が砕けた、って奴か?」
ジオ「ちょっとそれに近いかな?」
カリナ「え〜っと、それで何で今現在は普通なの?」
ジオ「一時的な物だから」
ミリアム「きれちゃった、ってこと?」
ジオ「まあそう言うこと」
ノア「仇はとったわけだけどどうするんだ、これから」
ジオ「新章突入、ってことだ、今までのは過去の出来事、ああ、第1部は違うか、次は出会い編、ってところかな?」
カリナ「ふぅん・・・」
ジオ「まあ、ストーリーはありがちなんだけどね」
ミリアム「やっぱり戦場で出会うの?」
ジオ「王道でしょ?」
ノア「陳腐すぎ・・・」
ジオ「う〜ん・・・ほら、あるだろ、効果が有るから常用されるし、常用されるから陳腐になるって」

ルシード「そんな物なのか?」
ジオ「そんなものだ」