ARMORED CORE BATTLE FIELD OF RAVEN


第39話   戦場―遠くの再開―




 「あれ?」
 間抜けな声を発したのは、先程の青年。
 「やっこさん何処行ったんだ?」
 この要塞はそれほど広いわけではない、しかし元々人数が少ないため、こんな事はよくある。

 「何だ?」
 青年の首にナイフを突きつけつつ、少年は言った。
 「ちょっ〜と、待ってくれると、嬉しいんだけど・・・」
 おどけた口調で、青年は言った。
 「・・・用がないなら、行け」
 すぐにナイフをしまい、再度座り込む。
 そこに青年は布にくるまれた何かを突き出す。
 布を取ると、そこにはパンとコーンスープ。
 「ほら、お前さんの分だ」
 そう言うと、表情を緩めて笑いかける。
 少年は無言で受けとり、食べ始める。

 「・・・なぁ、お前さん、なんで傭兵なんかやってるんだ?
  まだ若い、つうかガキなのに・・・」
 少年はそれに答えず、無言で食べ続ける。
 青年はふぅ、とため息1つ。
 「そもそもこの反乱の起こり、知ってるか?」
 その少年が無反応なのを見て、続ける。
 「フィルゼリア社、このくらいは知ってるな、この戦いを起こした会社だ。
  その社長が死んで・・・これはただの老衰らしいけどな、とにかくその息子、長男が会社を引き継いだ。
  ところがこのガキはトンだ馬鹿息子だったんだな、これが」
 少し笑わせてやろうと努力してみるが、少年は眉1つ動かさない。
 「で、あっさり財政難に、下部組織からの直訴もあったんだろ・・・
  要請もあって末弟が、こいつはかなり有能らしい、まぁ社長の座に着いたわけだ。
  でも長男の方は面白くない、だから反旗を翻して戦争を始めた・・・
  これが俺達『反乱軍』、ってわけだ」
 多少の身振り手振りを交えつつ青年は言った。
 「だがまぁそれもそろそろ終わる、今、上層部(うえ)の連中はどう降伏するかに腐心してる。
  正統軍側に付くならまだしもこっちにいたってしょうがないだろ?」
 たっぷりと長い時間をかけてから、少年は言った。
 「・・・俺に大義や勝敗なんて関係ない、思想なんてのもだ・・・
  金を貰えればそれでいい、それがレイヴン・・・傭兵だろう・・・」
 面食らったように青年は目を見開く。
 「・・・悪いが、それだけとは思えないんだよな、お前の戦い方見てると・・・
  死ぬために力を振るう、そんな感じだったぜ・・・」
 苦笑なんて表現がよく似合う、そんな表情で青年は続ける。
 「いくら腕前に自信があっても1人で敵陣に突っ込むなんて正気の沙汰じゃないぜ、自殺行為だ」
 少しだけ、ほんの少しだけ少年の表情が動く。
 「恐らく何かから逃れようとしてるんだろ・・・」
 少年の動きが完全に止まる。
 「過去か、自分の運命か、それとも・・・」
 不意に少年が動く、青年の首にナイフを、側頭部に拳銃を突きつける。
 「黙れ」
 青年はフゥ、と一息つく。
 「外は、いい天気だったな・・・きっと、今晩はイイお月様が拝めるぜ」
 「・・・そうだな」 
 少年は言った。
 要塞の壁に阻まれた、外の世界を見ながら・・・



 「くそぅ・・・また失敗したのか・・・さっさと落とさないとこっちの立場がやばくなると言うのに」
 作戦司令部で男は呻いていた、絶好の点数の稼ぎどころだと思っていたところが、一向に落とせないのだから当然といえた。
 「戦力の逐次投入・・・」
 不意に女の声が響く
 「誰だ!」
 「そして補給の軽視・・・」
 今度は男の声。
 「誰だと言っておろう!」
 「そして今度は戦力の小出し」
 「これでは勝てるものも勝てないって・・・」
 一組の男女が入ってきた。
 「ご機嫌よう、常務」
 「だ、誰だ!」
 声が震えていた。
 「私達は社長と契約を結ばせていただいました、本日よりこの司令部は私達の管轄下に入ります」
 女の声が優雅に響く。
 「ふ、ふざけるな!お前達ごとき若造の手助けなぞ借りぬ!」
 「そうですか・・・それでは仕方ありませんね」
 銃声。
 男の拳銃は頭に5発、女の拳銃は胸に3発命中した。
 「相変わらずの早撃ちね、Mrノア」
 「いえ・・・そのワンホールショット、こちらが見習いたいくらいですよ、Ms望月」
 「そうですか、お世辞が上手いですね、Mrノア、それと私のことは司(ツカサ)と読んでください」
 「そうですか、ではそうしましょうMsツカサ」

 こうしてあっさりと「シュテイト」サイドの首脳部交代劇は終了した。
 トップに立った人物は2人。

 1人は女、ツカサ・モチヅキ。「死なない機械知性」の異名を持つ女性で、戦略に長ける。
 もう一人は男、ノア・ヴァーノア。異名こそ無いが、およそ謀略で右に出る者は居ないとされる。



 一週間後。
 「作戦は打ちあわせたとおり、いいわね」
 「了解した、それでは後で・・・」
 「ええ、お茶くらいならご一緒しましょう」
 そう言って女は笑う。
 既に命令は各部隊長に通達された、あとは決行を残すのみとなった。
 「そうですね、そのために・・・何としても生き残らねば・・・」
 そう言って、男も笑った。




 「どうだ?」
 隊長は聞いた。
 「はい、要塞の連中、ここ一週間攻撃が無いので気が抜けてるようです、楽勝ですよ」
 「ははっ、そうで無くったってあれだけの戦力で落とせなきゃアホだぜ」
 だから前のヘッド(ボス)はアホだったと、暗に言っている。
 「いいか、俺達、第2中隊はあくまでバックアップだ、敵主力部隊は望月隊に任せればいい」
 「でもですね、隊長、聞いたトコロによると敵に恐ろしく腕の立つ傭兵がいるって噂ですけど」
 「へっ・・・それが本当なら、『嬉しい』んだがな」
 そう言って隊長、ノア小さく笑った。
第39話 完


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後書き代わりの座談会

ジオ「39話でした〜」
ノア「俺が出てるし・・・」
ジオ「別にいいだろ?面白いじゃん、こういう方が」
カリナ「ところで先週も思ったけどナインボールをポコポコ墜とせる人が居るのに負けそうなの?ルシード側」
ジオ「そりゃそうさ、一カ所で防衛する訳じゃないからな、一カ所を守りきっても他が全部後退すればこっちも下がるしかないんだし」
ミリアム「・・・そうねぇ」
ジオ「ACだって完全無欠じゃないしな、現代兵器で言うと戦車みたいな物か、空戦も出来るが」
ルシード「間違ってはいないだろう、あくまで現代兵器では、と言う点から見れば」
ミリアム「だったら戦車じゃなくて戦艦じゃないの?大和とか」
カリナ「あ、それいいかも〜」
ジオ「そう言えばガンダムでもあったな、戦車の主砲並みの砲を持ち歩き、戦艦並みの装甲を持つ無敵の兵器とかなんとか」
ノア「ザクは死にまくったが」
ジオ「それは気にしちゃいけない」





ジオ「で、本編だがまたもゲストキャラが出てます。
   『未来』嬢の『ツカサ・モチヅキ(望月 司)』です、
   それはそうと音信不通なんですが・・・もし見ていたら連絡を下さい」
ノア「難儀だな、連絡が取れないってのは」
ジオ「実はもう1人ゲストキャラが居るんだが・・・まだ名前は出さない」
ミリアム「何で?」
ジオ「実はこの部のメインキャラに昇格しちゃったのさ」
カリナ「そんなに気に入ったの?」
ルシード「贔屓はよくないと思うが・・・」
ジオ「だってさ、投稿されたキャラは好き勝手に使うって書いたし、実際登場直後に1人死んじゃったろ?ゲストキャラ」
ミリアム「つまり了承済みって事?」
ジオ「ま、そう言うこと、そこのところ読んだか不明だが」
四人「ダメじゃん!」(ほぼハモる)



つーわけで座談会は終了しました。
次回もよろしくです。