ARMORED CORE BATTLE FIELD OF RAVEN



第30話   若き天才―創造と破壊と―




 最初の仕事、それはハッカーを捕らえることだった。
 そしてそれは上手くいった。
 「今出ていくから、撃たないでくれよ」
 そのハッカーはそう言った。
 だが・・・
 「ん?もう一人・・・」
 そして入ってきた方向へとメインカメラをそちらへ向ける。


 それは一瞬の自失。


 「ナインボール・・・アリーナのトップがどうして?」
 その直後、ハッカーの乗っていたリグが炎上する。
 ナインボールのグレネードが直撃したのだ、恐らく即死だろう。
 「私を追っているらしいな・・・」
 威圧感、それを感じる。
 だが少年は喜んでいる。
 仇を見つけたことを。
 自分の運の良さを笑うように。
 「誰であろうと私を超えることなど不可能だ」
 そういうとナインボールは反転して離脱する。
 「待て!」
 手にしたライフルを撃つ。
 そして目標、ナインボールに向かって駆けた。
 「奴がお前の敵・・・」
 冷静さを失った少年に声を掛ける。
 「後で話がある、とりあえず戻ってこい」
 かちっ、という弾切れの音と共に冷静さを取り戻し、少年は初仕事を終えた。



  『『殺したい相手がいる。だからレイヴンになりたい』
  ネットワークで初めて私と出会った時、お前はそう言った。
  機体名、ナインボール。
  パイロットはハスラー・ワン。
  アリーナランキング1位。
  それが奴について分かる全てだ。

  アリーナへは企業の推薦があれば、どんなレイヴンでも参加できる。
  やがてチャンスも来るだろう。

  だがこれだけは言っておく。
  ナインボールの前に立つ者は確実に排除される。
  お前にそれだけの覚悟があるのならいつか奴に会えるようにしてやれるだろう。
  以上。』



 少年は仇のことを―それは勘違いなのだが―知った。
 ナインボール、それがAC名。
 ハスラーワン、それがレイヴン名。
 自他共に最強と認める存在・・・

 資料とプリントアウトされたメールを放り投げ、ベッドに寝転がる。
 そのまま深いまどろみの中で思考を止め、眠りについた。



 数ヶ月後、彼はアリーナに登録された。
 『プログテック社』
 それが少年のスポンサーとなった企業。
 当初、首脳陣は若すぎる彼を登録しない方向で進めていたが彼の急激な成長を無視することが出来ず登録したらしい。

 「よろしく、Mrルシード」
 軽く10年以上、恐らく20年近い年の差はあるであろうエラン・キューズビス開発主任はそう言った。
 「私も、研究員の間では若い若いと言われてきましたがね、実力さえれば関係ありませんからね」
 「・・・ええ、そうですね」
 6歳という年齢からは、いや、10代でも充分すぎるほど大人びているであろう口調を少年は使った。
 「そうだ、我が社で新開発中の、これは私のチームの管轄なのですが、
  エネルギータイプのスナイパーライフルがあるんです・・・
  そのモニターテストを行って貰えませんか?」
 「・・・それは構いませんが、良いのですか?そんな大事なものを勝手に新人にテストさせて?」
 「ええ、もちろん大丈夫です、現物を見てみますか?」
 「じゃあ、お願いします」
 「では、こちらへ」
 そう言って、若い博士はさらに若い少年を手招きした。
 ちなみにこの会社はこの自由(というより適当という印象しか受けないが)な気風で勢力を拡大させていったことを少年は後に知った。


 「WG−RF/E?」
 「ええそうです、通常のエネルギータイプの兵器、主にWG−1−KARASAWAの技術を応用しました。
  それをさらに高速化し、尚かつ一撃の威力を上げる事に成功したのです、その半面弾数は減りましたが」
 「ほう・・・」
 少年は顔に興味の色が走る。

 通常エネルギー兵器は光速で発射される。
 それはどのようなエネルギー兵器であっても同じである。
 ならばなぜ実弾兵器とそれほど弾速が変わらないか?
 理由は1つである。
 光の収束、それが答え。
 つまり光そのものが当たっても装甲を破壊するには足りない。
 装甲を貫くほど収束した光はそれほど早くない。
 結果的に実弾系とそれほど変わらない弾速となるのである。

 「どうです?悪くはない出来でしょう?」
 「・・・ああ、だが一回のマガジンで10発だけってのは少なすぎる」
 「もちろんその対策は作ってあります・・・ACを2時間ほど貸していただけますか?」
 「?・・・構わないが・・・」
 「ではお待ちを」

 2時間が経過し、ACが改造されていた。
 外見上は変わっていないがコックピットに入るとどこが改造されたかすぐに解った。
 両腕部のマニピュレーター(人間で言う指)である。
 それが戦闘用の指、WA−fingerに換装されていた。
 いつでも使用可能な状態にしたらしい。
 「どうです?」
 「ああ、悪くない、全体的に操作感覚も軽くなっている」



 こうして二人の若き天才は出会った。
 そして少年が巨大な闘争に巻き込まれるのはそれからしばらくしてのことである。
                                第30話 完



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後書き代わりの座談会

ジオ「はい、30話、エラン・キュービスとルシードの出会いです」
ルシード「微妙に原作と違うな、アレはただの贈答品じゃないのか?」
ジオ「気にしないことだ、送られたという事実だけを見ておいてくれ」
ノア「ほう、適当だな、設定も」
ミリアム「fingerを指に換装するなんて良く考えつくわね」
ジオ「だってfingerって指だろ?英語の意味で」
ミリアム「それはそうだけどね・・・」
カリナ「この装備ってどっちにしろバランス崩すわよね、ゲームだと」
ジオ「接近戦でfinger、距離を取ったらスナイパーライフルだ、バランス崩すって言うか反則だな」
ルシード「それで『創造する天才』というわけか?」
ジオ「んにゃ、微妙に違う、創造じゃなくてこの場合は改造、だな」
ノア「全然違うぞ、改造と創造は」
カリナ「それにしても1話の展開がちょっと早いわね、最初の仕事からアリーナに登録するまで、なんて」
ジオ「今までが遅かったという面もあるが・・・まあそうだな」







カリナ「ところで、エネルギー兵器の解釈って上のであってるの?」
ジオ「それしか解釈のしようがないだろ?AC世界に限定すれば」
ノア「ま、そう言うことだな、普通はレーザー光の攻撃なんて回避できないって」
ジオ「まあそれ以外の上手い解釈があったらメールとか掲示板とかで募集って事で」
ミリアム「そう言えばその類って来たことがないよね?」
ジオ「それは気にしない、所詮は小型サイトの戯言だよ」
ルシード「まあそれならそれで自分で好き勝手出来ることだし」
ジオ「そやね、じゃあ終了しよっか」
全員「次回もよろしく」




次回予告

全ての敵を薙ぎ倒し、着実に強くなりゆく少年。
それはネストという秩序から疎ましがられることとなる。

そして、彼は遂に憎むべき赤き機体と相対する事となる。

次回31話『決着―真相への道標―』




これから先、MOAプレイヤーには暫く先が見え見えの展開になるけど見捨てないで楽しんでくださいね。