ARMORED CORE BATTLE FIELD OF RAVEN



第28話   紅き闇の与えた悲劇―殺意と黒いACと―




 小さな教会に一人の神父とシスター、そして少年が住んでいる。
 小さな都市だったからそれはみんなが知っていた。

 ある日、とある親子が教会にて怒っていた。
 子供は男の子で、傷だらけだった。
 「いい加減にして下さいな!」
 その時、少年は教会の近く、穢れた外の大地の見える小高い丘で1人外界を観ていた。
 「いくら神父様のお育てしているとは言っても!これではあまりにひどすぎます!」
 「・・・そうですか、あの子には私からよく言っておきますので」
 「しかしですね!無抵抗のうちの子を・・・」
 「お願いします」
 神父はそれからお辞儀をした。
 とても深く、礼儀正しく。
 「よろしく頼みますよ!」
 不満そうな顔つきのままで、親子は帰っていった。



 少年は教会に帰り、本を読んでいた。
 少年に傷は見あたらない、先程喧嘩をしていたにもかかわらず・・・
 別にその本が好きな訳じゃない。
 現実を見るのが嫌になったとき、教会の書庫に籠もるのだ。

 そこに神父が入ってきた。

 「理由は聞かない、だいたい想像が付くからね・・・」
 少年は何も答えない。
 本を畳んで神父の方を見た。
 「孤児であることを・・・からかわれたんだね?」
 図星なのか、少年は本を閉じ、眼を背けた。
 それを見た神父は小さく笑う。
 「何でも、力で解決しようとするのは良くないことだよ?」
 「でも・・・俺は」
 反論しようとしたところを優しく制す。
 「君は強い、それは私も知っているし、当然みんな知っているはずだ。
  でもね、だからこそ力だけで解決しようとしてはいけないんだ」
 神父はぽん、と軽く少年の頭に手をのせた。
 「わかったね?」
 「・・・はい」
 それを聞くと、神父様は書庫を出ていった。



 神なんて物は存在しないと言うことを少年は知っている。

 もしいるのなら自分は孤児になることもなかっただろうし、
 記憶の片隅にある存在―自分のことを兄と言って慕う少女―とも、ずっと一緒にいられたのかもしれない
 それに大破壊・・・何十年も前のあの悲劇も起こらなかっただろうと信じている。
 彼もそれを見た訳じゃない、だからその中で起こった悲劇も知らない。
 でも、地上から文明の光が消え、人間は地下世界に生きる者、そして地上のシェルターに生きる者とに別れた事は知っている。



 それから数日後たったある日のことであった。
 少年は書庫である本を見つける。
 それはレイヴンの本。
 それは悲劇を記録した本でもあった。
 彼はそれを読んだ。
 悲劇は今も繰り返されていることを知った。



 「ルシード・・・神を信じたことはある?」
 ある日、シスターにこう問われた。
 「信じてはいません、でも存在したとしても、無力な存在だと思います」
 「そう、ね・・・そうなのかもしれないわ、そう考えているのなら・・・来なさい」
 少年はシスターの後を付いていった。

 「これは・・・」
 目の前には黒い巨人が佇んでいた。
 「あなたは、あの本を読んだわね?これがACよ・・・
  本当は見せるべきか迷ったの・・・
  でも・・・この世で最も残酷なのは、人の形をした生き物なのだから・・・
  これで・・・あなたの妹を捜しに行くといいわ・・・
  操作方法は・・・大丈夫かしら?」
 「あの本の通りなら、もう既に頭の中に入ってます」
 「そう・・・では、明日出発なさい・・・神父様には、明日、あなたが行ってから説明するから・・・
  今夜は豪華な夕食を作ってあげるからね」
 その好意に少年は無言で頷いた。



 夜、ここで過ごした最後の夜。
 ぐっすり眠っていたはずなのに、目が覚めた。
 外が明るかった、夜は赤く紅く染まって。
 少年は外へと駆けだした。


 少年を見つけた神父は少年に言った。
 「早く隠れなさい!出てきてはいけない!」
 避難してゆく人を導きながら。
 「・・・でも、これは・・・」
 「これは業だよ、自分の体以上の力を持った人間の・・・
  その力の誘惑に負けた人間のなれの果て・・・」
 シェルターへの避難を終えた神父様は惚けたかのように動けない少年の腕を掴み、教会へと向かった。

 1機のACがそれに気付く。
 「へへへ・・・カモ発見」
 ミサイル迎撃装置を改造した対人兵器に使用武装を変更し、教会と2人の間に立ちはだかる。
 それに気付いた瞬間、神父は少年を突き飛ばした。
 祠のような小さな入り口へ。
 次の瞬間、神父が対人兵器の小型機銃に撃たれ、倒れる。
 その直後、ACはそこから離脱し、そこには血だらけの神父と、少年が残された。

 少年は血だらけの神父に駆け寄る。
 「早く・・・逃げなさい」
 明瞭な言葉で、少年に。
 「できれば、シスターも一緒にね・・・」
 血だらけの手で少年の頬を優しく撫でる。
 「この子に・・・神のご加護がありますように・・・」
 神父は、最期の瞬間まで、人のことを、育てている少年のことを思っていた。
 血まみれの手から力が抜ける。


 ・・・涙?
 泣いている?
 それは人が死んだから?
 違う・・・きっと、大切な人が死んだから・・・



 殺す。


 突然生まれた殺意。



 お前ら全員、殺してやる。




 気付いたとき、少年は祠の奥、AC格納庫に来ていた。
 「ルシード・・・」
 そこには、血まみれのシスター。
 そこに駆け寄る少年。
 既に涙に濡れたその瞳に、さらなる哀の色が加わる。
 「いい?・・・ACに乗って、そのまま逃げなさい・・・」
 「・・・でも」
 「力に力で対抗しても解決はしないの・・・」
 「でも神父様は・・・」
 殺された。そう言おうとしていた。
 「きっと仇を取って・・・なんて言わないわよ・・・きっと・・・」
 少年の言いたいことを分かっていたかのように。
 「でも・・・」
 「大丈夫・・・あなたが生きていることが・・・最大のプレゼントよ」
 もう少年は何も言えなかった。
 「だから・・・」
 生き抜いて。
 その言葉は少年に届くことなく、途切れた。
 神父、シスター、街のみんなが殺された。
 体の中に渦巻く感情、殺意を抑えることが出来なかった。
 だから、この黒いACに乗って、戦うことを決めた。
                             第28話 完



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後書き代わりの座談会

ジオ「紅き闇と聞いて『夜現れたナインボール』を思った方、申し訳ない、28話です」
カリナ「まぁ意外性があるんじゃないの?想像にない展開だ〜って」
ミリアム「シスターが何故ACを持ってるの?」
ノア「シスターと言うよりも何故ルシードに妹が出てくる必要があるんだ?いるけどさ、確かに」
ジオ「書きたかったんだよ!妹キャラを!」
ルシード「でてないけどな」
ジオ「じゃあ何か?突然何の脈絡もなく『お兄ちゃん・・・』とか言わせたいのかお前は?」
ミリアム「・・・それで、さっきのACだけど・・・」
ジオ「おおそうだった、アレは・・・元々神父様の物だったんだよ(実は即興)」
カリナ「戦い疲れて・・・ってこと?」
ジオ「そう言うこと、慈善事業しかする事がなかったんだよ」
ルシード「襲撃の時も戦うにしても勘が戻らないだろうしな」
ノア「だから戦わずに避難させようとしてたわけか・・・」
ジオ「その通り、戦って勝ったとしても街への被害は免れないしね」
ミリアム「それはそうと・・・レイヴンの本が教会の書庫にあるの?」
ジオ「教会の書庫って何でもありそうだし、そう言うのがあってもおかしくはないだろ?」
ジオ以外全員「おかしいよ!」

以下切り取り