ARMORED CORE BATTLE FIELD OF RAVEN



第27話   少年




 「前方に敵部隊を発見、攻撃を開始する」

 その戦乱はすぐに終結するかに見えた・・・

 「AC中量級3機、MT有明改12機確認」

 刹那、黒い風が戦場を舞う。

 「作戦完了、帰還する」

 そしてその戦乱は当初の予定の数倍の期間を必要とし、そして数倍の人命が消えた。

 「被弾による損害、0」

 黒い風と呼ばれた、1人の天才によって・・・



 その天才は少年だった。

 心に深い傷を負っていた。

 無力な自分が許せなかった。

 それが彼の強さの理由。

 そして彼は孤独だった。

 その強さのせいかもしれない。

 それでも彼にとってはどうでもいいことだった。

 仲間がいても、自分が弱ければ今度はその仲間に不幸を呼ぶ。

 そう考えていたのだから・・・
                   「エリザベート・エルンスト著 少年のココロ」より



 自らを貶めても何も感じない少年がいた。
 少年は全てを諦めていた。
 いつからか帰る場所を求めていた。
 それは一人の青年が声を掛けてから。
 自分を受け入れてくれるところだから。
 そして自分が弱くても、守ってくれるところだから。
 そこで強くなろう、そう決めたから・・・
                    「エリザベート・エルンスト著 1人の孤独な少年」より

 「ルシード、なにしてるんだ?」
 青年は彼に声を掛ける。
 「ん・・・ああ」
 少年は酒を飲んでいた。
 彼は数日後、18になる。
 つまりは未成年な訳だが、この時代、そんな事を気にする人間はいない。
 「あの頃のことか?」
 彼は少年に問いかけた。
 「まあ、な」
 いつまでも、あの頃のことを忘れることは出来ないだろう。
 少年はそう考えている。
 あの頃の事とはいつのことか。
 それは12年前、少年が力を望んだ日。
 ネスト崩壊の2年前。
 そしてそれから2年前までの『時代』を。

 そして青年の言う時代はそれに近くて遠い『時代』。
 彼が少年に出会ってから・・・
 今より8年前から2年前までの『時代』のことを指す。



 12年前、少年は力を望む。
 11年前、ネストが一時その活動を完全停止。
 10年前、行動の指針、ネスト崩壊。
 そして7年前、少年は青年と出会う。
 そして5年前、少年と青年は再び出会う、戦場で。



 だが、この時、何が起こったかを知る者は少ない。



 12年前のとある一地方、世界で言うならアイザック地方のとある地上の小さなシェルター都市の一つ。
 その小さな教会に、少年はいた。
                              第27話 完


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後書き代わりの座談会

ジオ「27話、ルシード編プロローグをお送りしました」
ノア「何故キャスター風?そして18歳の12年前って・・・無理だろ、力をいくら望んでも」
ルシード「まあこの設定は俺が望んだ物だから非はジオだけってわけでもないだろ」
ジオ「いや、むしろ全面的にお前が悪いと思っている俺が居るのだが、その辺どうよ?」
ルシード「気のせいだ」
ジオ「即答かよ」
カリナ「ところで新しい歴史書と著者が出てきたわね」
ミリアム「でもファミリーネームは一緒よね」
ジオ「気付いた?家族って言う設定なんだけど」
ノア「そりゃ・・・必要ないんじゃないのか?登場もしてない人の設定は」
ジオ「安心しろ、このあと出す予定だ」
ノア「あ、そう」
ミリアム「ま、それはそうと・・・この話ってルシード編のプロローグでしょ?」
ジオ「そうだけど・・・何?」
ミリアム「予定の数倍の時間と人名を必要としたって・・・アレはルシード1人の戦果で?」
ジオ「そうだけど・・・設定上無理はないぞ、正面から叩きつぶしていったわけだけどそれは敵が無能だったからで」
カリナ「確かにそうね、他のAC小説を幾つか見たけどランカー対一般兵の戦いで100対1で勝利してるのもあったし」
ジオ「おっ、嬉しいね、ちゃんと予習していてくれたわけだ」
ノア「いや・・・多分引きずり込まれただけだと思うぞ、これだけ長い期間のAC小説なんてあんまりないし」
カリナ「まぁ引きずり込まれた気もするけど・・・それはもういいわよ、結構面白いし」
ミリアム「諦めムードね」
ジオ「それは言うなって、じゃあ終了してどっか行くか?」
ルシード「うむ、そうしよう」
ジオ「あ、そうだ、忘れるところだった、この部では結構多くのゲストが登場するんだけどそれのコメントくれ」
ノア「かなりの人が死ぬんじゃないか?」
ジオ「その通り」
ミリアム「さ〜遊び行こう」
ジオ「って、お前らちょっと待てぇ!」

追いかけるジオ、録音停止して、幕。




次回予告
迫害される孤独、孤独な少年は共に住む者との時間の中で力と力の、愚かな図式を知る。
それでも、少年は突然訪れた悲劇を黙って受け入れることは出来なかった。


全てを滅ぼす者、黒い風が生まれた瞬間。

それはこの時代にはよくある悲劇にすぎなかった。
愚かなことと知りつつも、全てを受け入れるほど、少年は大人ではなかったのだ。


次回28話『紅き闇の与えた悲劇―殺意と黒いACと―』