ARMORED CORE BATTLE FIELD OF RAVEN


第26話   誰が為の過去(きのう)―希望の未来(あす)へ―




 「それ・・・どういうこと?」
 自分の考えを口にしてしまった事を、ユキムラは後悔した。
 「言葉通りです・・・会長から全てを聞かされていました」
 「・・・そう・・・」
 既に知っていたのだ、会長と、そしてユキムラは。
 「そして、もし事が起こったら・・・」
 「もう、いいわ、聞いてみるから、みんなに、どうしてみたいか」
 言葉を遮り、ミリアムはコックピットを出た。

 コックピットを出た彼女は生き残っている人間全てにこのことを要領よく説明した。
 そして、下手に戻れば殺されるであろうことも。
 「そして、これから先の進路については私自身どうしようか決めかねている。
  そこであなた達みんなの意見を聞きたいの」
 直後は、皆無言だった。

 15分ほど経った。
 「・・・俺は、どこかに身を隠す、後のことはそれから考えるさ」
 トガワは立ち上がる。
 そして稼働できる自分のACへと乗り込む。
 それに生き残った殆どの兵士とユキムラも続いた。
 コックピット内部に乗れるだけ、あとはパイロットスーツの気密状態を確認した後、機体の手のひらに乗る。
 後に残ったのは・・・ミリアム、カリナ、そして四人の兵士だった。
 「あなた達は・・・行かないの?」
 ミリアムが残った兵士に問いかける。
 「ええ、身を隠す、そこまではいいんです、それでもその後に一般生活を送れるか、それが不安で」
 「・・・あなた、名前は?」
 カリナが聞く。
 「僕ですか?」

 ぽつり、ポツリと意見を交換し、雑談する。
 それを繰り返す残った六人。
 そして数時間が過ぎた。

 警報が鳴る、敵機接近のサインだ。
 「何?」
 「解らないわ、とにかく、動ける機体に乗って、できれば交渉、出来なければ戦うしかないわ」
 一応、人数分、機体は動いた―動かせたと言った方が正しいかもしれないが―

 この時の稼働率
 ミリアム機『紫電』 稼働率85% 右肩部、損傷 左脚部、損傷。
 カリナ機『屠龍』 稼働率50% 右腕部、全壊 左脚部、損傷 右腕部、損傷
 飛燕14号機 稼働率15% 左脚部、全壊 右腕部、損壊 コックピット内、サブモニター損失
 飛燕23号機 稼働率20% 右肩部、損失 コックピット内、メインコンピュータに一部異常
 飛燕31号機 稼働率90% 左腕部、損傷
 飛燕43号機 稼働率5% 左右脚部、損傷 左右腕部、損壊 コックピット、メインモニター損失

 上記のように燦々たる物である。

 接近してきたのはACが一機。
 「敵AC・・・ラフィング・パンサー確認」

ラフィング・パンサー・・・
笑う雌豹の名が示すとおり、カラーリングもエンブレムも豹が描かれ、
ランカーAC以上の実力を持つと言われる、ノーランカー。
ここ近辺の都市ではアリーナランキングによって分類されているためこのような事がある。

 「嘘ぉ・・・」
 いつものように明るいセリフも出てこないカリナ。
 「私が交渉してみるわ・・・みんな、下がって」
 そういうとミリアムはおもむろに武器を下げ、戦闘システムを停止させた。


 「・・・変ね、抵抗がない・・・昨日調査したときと全然違うじゃない・・・」
 そういってコックピットの彼女は依頼文を呼び出す。

研究所壊滅
依頼主 マサムネ社
前金 15000c  成功報酬 25000c

我々に敵対する戦力が未だ残存していることが確認された。
ついてはこれの壊滅に当たってもらいたい。
敵主力はMTだが精鋭のACも確認されている。
またこれは未確認情報だが旧ネスト防衛主力の大型ACがいるという情報もあった。
それを確認したら破壊して欲しい。
その場合一機につき当別報酬50000cを出そう。
健闘を祈る。

 少なくとも昨日は対空、対地ともにほぼ完璧といえる砲台があった、何故それがないの?
 「ん?敵機の反応?」

 通常のACはFCSで味方には反応しないように設定されている。
 だが、それ以外の物、例えそれが中立の物であっても反応するようになっている。

 「研究所の戦力ね・・・私以外の戦力が攻めてきたのかしら・・・」
 だとしたら少なからず戦力は低下しているはず・・・

 問答無用に攻めてきたラフィング・パンサー。
 これをどうにか回避して全チャンネルで呼びかけるミリアム。
 「待ちなさい!私とその後ろにいる人々は敵ではない!
  少なくとも今は敵対する事はないわ!」
 「そうかしら?ならばそれを証明してみなさい!」
 攻撃の手を緩めないAC。
 「戦闘システムを切っているのよ!見て解らないの?」
 「だったらそのACを破壊して、あなたが死んだら後ろの人達は見逃してもいいわよ!」
 自分が死ぬことも嫌だった、そして味方が死ぬことはそれ以上に嫌だった。
 「とどめよ!」
 一機に接近してブレードで斬りかかる。
 「話を聞いてって・・・言ってるでしょう!」
 戦闘システムを意図的に暴走させて左腕にブレードを光らせる。
 これが彼女の最速の攻撃だった。
 切り裂かれるはずだった彼女のコアは切り裂かれることなく、ラフィング・パンサーを吹き飛ばす。
 「だから・・・話を聞きなさいよ・・・」
 ACのバランサーでも立つことが出来ないほどに吹き飛ばされた雌豹を、
 ミリアムは殺すことも出来たはずだった。
 だが、彼女はあくまで話し合いをするつもりだったので、殺すことはなかった。
 「・・・わかったわ」
 パイロットもそれを察したのか話し合いに応じた。



 「私の名前はフィレンツエイン・フォン・ミューア、ミューアとでも呼んで頂戴」
 雌豹のパイロットはそう名乗った、それにつられる形で次々と自己紹介をしてゆく。
 それに続いて、要領よく事情を説明してゆくミリアム。
 「・・・なるほど、それでどうするかってトコロなのね・・・」
 僅かな思考時間、その後。
 「うん、レイヴンになればいいわ」
 名案とばかりに手をポンと叩いて提案を口にする。
 「大丈夫よ、特に・・・ミリアムさん、でしたね、あの機体状況から私の機体を吹き飛ばしたんですもの
  それに、みんな都市所属の特殊部隊だったんでしょう?
  それなら誰であっても技量を心配する必要もないわ」
 「そう、ですね、俺はこの人に付いていこうと思います」
 MTパイロットの一人が賛成した。
 「確かに・・・」
 それに続いて全員が賛成する。
 「あ、そうそう、私は今回のミッションは遠出だったから輸送できる機は少ないわよ・・・
  そうね、そのAC2機とそのMT・・・飛燕だったわね、それがせいぜい2機・・・」
 「別にイイですよ、元々飛燕は一機を除いてまともに戦闘できる状態じゃないんですから」
 そう言った彼女達は笑っていた。
 明日への希望、それが見つかった瞬間なのだから・・・



 「そう、か・・・それでレイヴン、今に繋がるわけだな・・・」
 「そう、トガワ達の行方は知らないけど、まあユキムラといっしょなら大抵のことはどうにかなると思うわ」
 「そうだな・・・」
 話を聞くと、妹が辛い人生を過ごしてきたことがよく分かる。
 「さて、休憩も入れたし、引っ越し作業再開だな」
 気合いを入れ直し、立ち上がるジオ。
 「そうね、じゃあもう一段落付いたら紅茶でも煎れようね」
 「よっしゃ!楽しみができた、さあ続きだ」
 「うん」
 そうして兄と妹と・・・そのうちに帰ってきた3人の仲間達と共に、彼等は今日一日を過ごすのだった・・・
第26話 完


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後書き

本日疲れたので座談会無し。
書くときは座談会の方が楽なんだけど話すときも疲れるのでこっちを選択しました。



えー・・・ミリアム、カリナの過去編の最終話ですね。
ミューアもきっちり登場してます。

・・・ま、とりあえず前回のお話通りクーデターの顛末についてでもお話しましょうか。
会長派を殲滅し、会長の座に着く副会長。
しかし、各所にその支配力を伸ばしていた会長派は副会長派を弾圧、抵抗を行った。
苦境に立たされた中で、副会長は反対派を粛正する。
これが一般市民からの反発を触発し、ついには市民、及び生き残っていた会長派が暴動を起こす。

これにより副会長派は全滅する。


しかし、不幸にも会長派も副会長派との戦いで大きく疲弊。
兵員も殆どが死亡し、指揮を執っていた、いわゆる上層部も死亡し、急進力を失う。
そして、ついには市民の支持さえも得られず(この時、支配が不可能になったので民主制をしいていた)
かといって新たな急進力が存在しないため、惰性による政治が続いた。



・・・まあこんな感じです。
結局クーデターによってこの都市の人全てが不幸になったというお話でした。




まぁとりあえずこれにてミリアム、カリナ編は終了。
次はルシード編になります。
で、以前から募集していたキャラがかなり出る予定ですのでお楽しみに。


・・・後でこの後書きを書き直そうかと考え中のgeoでした