ARMORED CORE BATTLE FIELD OF RAVEN


第24話   誰が為の過去(きのう)―絶望―




 空中で発射された大量のミサイルは狭い通路だということも重なり、威力は分散せず、正面のMTを吹き飛ばす。
 「うああ!」
 叫び声もほんの一瞬だ。
 MTは鉄屑とかして周辺に散らばる、何処にパイロットが吹き飛んだかすら分からない。
 ミリアムは一瞬で判断を下し。
 「カリナ、ユキムラ、トガワ・・・頼みがあるの・・・」
 通信で仲間に呼びかける。
 「どうした?撤退するのか?」
 「いいえ・・・残存する全ての飛燕を連れて奥へ向かって、こいつは私が引き付けておくから・・・」
 「馬鹿言うなよ、こんな奴どうやって一人で足止めするんだ?」
 「危険すぎますよ!」
 「これは命令よ!隊長としてのね!」
 反論を許さない強い声。
 「・・・この強さから判断して後ろから近づいてる敵はあくまで予備のはず・・・
  それさえ突破すれば多分大した敵はいない、あとは奥の方にあるシステムか何かを破壊すれば終わるはずよ」
 「・・・了解、ミリアムさん、生きて会いましょうね」

 その会話の間にも数機の飛燕がバラバラになってゆく。
 ミリアムは腰にぶら下げた補助用ハンドガンを装備し、敵のメインカメラに照準を合わせる。
 パシュッ!
 その直後、周辺に閃光が閃く。
 閃光弾だ。
 「今!突破して!」
 この瞬間のうちにミリアム以外の全員が敵の後方、すなわち奥へ向かって突入してゆく。
 「・・・さて、あとは時間稼ぎ・・・」
 その直後、デストロイから大量のバルカンが降り注ぐ。
 もともとは迎撃用のバルカンか対人兵器だったであろうその武器は少しずつ、だが確実に
 ACの装甲を削り落としてゆく。
 「くぅ・・・」
 その弾幕に囚われ衝撃で呻くミリアム。
 バランサーがその衝撃で混乱し、動けなかった。

 ズシャア!

 その音と共に弾幕が止まる。
 その瞬間を不思議に思う前にそこから離脱していた。
 デストロイの後方には1機のAC、そして2機の飛燕。
 「時間稼ぎなら、多い方がいいでしょう?ミリィ?」
 「そういうことですよね、それに数が多ければ全員が生き残る確率もでかくなります」
 「と、言うことで加勢しますよ、それに上手くすればこの化け物をブチ倒せるかもしれないしね」
 「・・・参ったわね、いつの間にこんなに人気者になったの?私は」
 「そうねぇ・・・何ヶ月か前の、あの時以来じゃないかしら?」
 「・・・そう、なの?」
 「へへへ・・・こういってはなんですが、あなたは死んでもらうには惜しすぎるんですよね、美人だし」
 「何よ、それは?」
 微笑みつつその名前も知らない自分の指揮下の飛燕を見た。
 そしてそれが配属間もない新兵だと分かる。

 ・・・こういう人は決して死なせてはいけない。
 自分が死線を彷徨っていることも知らない人間は・・・
 例え、自分が死んでも・・・
 彼女はそう考えていた。
 そして、それは以前の彼女なら考えなかったことだった・・・

 しかし、増援をもってしても戦況は変わることなく、そのうちに一機の飛燕が吹き飛ばされた。
 「ハインツ!」
 もう一機の飛燕のパイロットが叫ぶ、ハインツとはそのパイロットの名前だろう。
 「よくも!」
 残った飛燕のパイロットが飛び出し、射撃を加える。
 しかしそれは何の効果も上げなかった・・・
 逆に回避行動を怠った飛燕が吹き飛ばされる。
 「うあっ!」
 壁に吹き飛び、それきり動かなくなる飛燕。
 パイロットも脱出していない。
 ・・・死んでしまって出来ないのだろうか・・・

 一瞬だけそちらに気を取られるミリアム。
 その一瞬で巨大なACがミリアムに近づく、
 まるで死が具現化したかのように・・・

 爆音で視界が遮られ、その直後にACを突き飛ばされた感触があった。

 そして目の前を緑色の機体が飛んでゆく・・・
 それはカリナの機体で・・・
 あの時の再現が目の前で行われ・・・
 彼女は目の前が暗くなってゆくのを感じ・・・

 意識は深淵へと漂っていった・・・
第24話 完


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後書き代わりの座談会

ジオ「24話ですぞ」
ノア「オーバーテクノロジー機・・・予想通りというか・・・強すぎだろ」
ミリアム「それにしても、ミサイル迎撃用はともかく対人兵器なんて必要なの?」
ジオ「必要だと思うぞ、歩兵に大量に接触されたら間接部を狙われて危険なことになる可能性だってある」
ルシード「・・・ブースターで振り落とせばどうだ?」
ジオ「う・・・言われてみればそれでいいのかも」
カリナ「じゃあ対人兵器説は没ね」
ジオ「まあそう言うことになるだろうな」
ミリアム「それでもMTの初期の頃は必要だったんじゃない?」
ノア「まあ機動力なんて殆ど無かったろうし」
カリナ「でも今はACが戦闘の中心でしょ?高火力戦闘がメインになるんじゃないの?」
ルシード「つまり逆に歩兵に接近される可能性があるわけか」
ジオ「っておい、高機動戦があるのを忘れてるぞ」
ノア「高機動戦ならば問題はないよな、歩兵なんて接触されても機動力で振り落とせるし」
ミリアム「敵が旧日本の神風よろしく自爆してきたら?」
ジオ「馬鹿かお前は、そんな精神構造の奴なんて多分いねえぞ、この時代」
カリナ「いたとしてもACに重大な損傷を与えられるだけの火薬なんて1人の人間が持てるわけないじゃないの」
ジオ「っと、待て、何故対人兵器の話題に移ってるんだ、内容の話に切り替えようじゃないか」
ルシード「何かあるか?」
ノア「あるとしてもオーバーテクノロジーの話になるだけだと思うぞ」
ミリアム「でも、死んじゃった新兵の気持ちとかそう言う部分もあるはずだし」
ジオ「ナイスフォロー(正直どうしようかと思った)」
カリナ「大概新兵って実戦の怖さを知らないのよね」
ノア「ま、それを言ったら実際に戦争を、人が死ぬところを見たことのある人間なんてそうはいないぜ」
ジオ「まあそうだな、戦争映画とかそう言うのでもあくまで擬似的な物だし」
ルシード「実際にミサイルは飛ばせても実際人が死ぬところを撮るなんてわけにもいかないしな」
ミリアム「そんな事したら捕まるわね、監督を含めてスタッフ全員」
ジオ「だから話題そらすなー!」

geo:今回まともな座談会じゃなかったな。(感想)


まとまってないのでシメるために次回予告でも。


GOAD、そして支援部隊飛燕は最後の仕事を、大きな被害と共に成し遂げる。
そして、目の前で死に往く仲間、何も出来ない無力さに悲しみに暮れる少女達。
それに追い打ちをかけるように、さらなる悲しみが少女達に舞い降りる。
そして悲しみの中で知る、驚愕の事実。

第25話「さらなる絶望」お楽しみに。