ＡＲＭＯＲＥＤ ＣＯＲＥ BATTLE FIELD OF RAVEN
第２０話 生と死の境界線（はざま）で・・・―死ぬ覚悟―
あれから数日後・・・
「ＧＯＡＤ各員、及び飛燕分隊各員に告ぐ、飛燕第１、２、４、及び５部隊は全て出撃せよ、
バグを工業地帯のＢ２１区域で確認した、よってこれを包囲、撃破する、
各分隊はＧＯＡＤ各員の指揮下に入れ、以上だ」
いつものように冷めた口調で指示を与える。
「この野郎！死にゃあしねぇ！」
今までの敵とは比べ物にならない強さだった。
命中する弾も少なく、当たってもその驚異的な耐久力―ＡＣ以上の―は砲弾を受け付けなかった。
「うあああああああああああ！」
被害も大きかった、既に出撃時の３割以上の飛燕を失っており。
残った部隊も弾薬がつき始めていた。
「こちら彗星！今度の敵はかなり手強い！手持ちの弾薬が底を尽いた！
本部の予備兵力を投入するか、補給に戻った方がいい！」
「こちら疾風、負傷者多数、継戦能力低下・・・」
「こちら紫電、発見したバグは即時破壊するのが任務、作戦は続行する」
「なっ・・・馬鹿言ってんじゃあねぇ！お前だってろくに弾薬が残って無ぇんだろ？」
こういうとき、普段の彼女ならば、悩んだ末であれ、後退命令を出すはずであった。
だが・・・
「残りの弾薬が１パック残っている、私の隊が前面にでて囮になるからそこを仕留めろ」
「じょ、冗談じゃねぇ！こんな状況で！」
「俺達はあんたらと違って感染したら死んじまうんだぞ！」
ミリアム指揮下の飛燕分隊のメンバーから反対の意見があった。
それは他の飛燕分隊のメンバーも同様だった。
「・・・分かった、ここは私一人でやる」
「・・・え？」
「聞こえなかったのか？全員一時退却だ、早急に補給を済ませて戻ってこい。
その間は私一人で奴の足止めをする」
それは極めて危険な物で、当然そんな指示には従えるはずもない。
「何馬鹿なこと言ってやがる！あの強力なバグ相手に一人でどうにかするつもりか！？」
「そうですよ！」
「いつものお前らしくもねぇ！いつものお前は何処行った！」
そして今まで黙っていた少女が口を開く。
「『隊長』の指示には従うのが筋でしょう？」
いつものように『ミリィ』とは呼ばなかった。
「カリナ！お前まで何言ってやがるんだ？」
「『ヴァーノア』の言うとおりだ」
こちらも『カリン』とは呼ばなかった。
「この前から、お前らおかしいぞ！」
この短いやり取りの間に既にミリアムは指揮下の部隊に後退指示を出している。
その事を知りトガワ達も後退指示を出す。
「仕方ねぇ！いったん退いて全力で戦線に復帰する！」
ミリアムを除いた全部隊は後退しているはずだった、
正確に『その事』に気付いたものは誰一人としていなかったのだろう。
唯一予定と違うことを知った者はその少女と、基地に帰還した彼女の麾下の飛燕分隊の数人だけだったのだから。
彼女はＡＣを駆り、工場区画を走っていた。
幾つもの思考に脳内を占拠されながら。
『らしくない』か・・・
確かに・・・そうなのかもしれない。
きっと、あのいつも笑っている、アイツの笑顔・・・
何も知らない笑顔の毒気にやられたのかもしれないな・・・
レーダー性能が極端に低下している・・・
バグの補足は目視か音に頼るしかないか・・・
彼女はそう判断した。
・・・左後方！
７時４０分の方向か？
攻撃を回避しつつ、射撃し、まだ色々な事を考えてしまう。
『綺麗・・・まるで突き抜けるような空と、日が沈む前の夕焼け色みたい』
あの日の言葉を思い出す。
違う・・・違う・・・違う・・・違う・・・
違う、違う、違う、違う、違う、違う、違う、違う、違う
違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う
チガウチガウチガウチガウチガウチガウチガウチガウチガウチガウチガウチガウ
「違う！」
声に出して叫ぶ。
「違う！！」
私の、私の瞳は夕焼け空のように綺麗なんかじゃない！！
そうだ・・・数日前見た彼女の気。
あれは・・・あの気は！
カチンッ・・・
その音で思考が別のもの一色に染まる。
今まで自分とバグの間を遮っていた二つのもの。
そのうちの一つ、弾幕が無くなった、弾切れになったのだ。
彼女が弾切れに気付く。
その瞬間、バグの攻撃がもう一つの壁、ＡＣを攻撃する。
コックピットに衝撃が走り、バグに比べ軽いＡＣが吹き飛び、
後ろにあった倉庫の壁に叩きつけられた。
「ぐぅぅ・・・」
まるで眠気が襲ってくるかのように頭がぼうっとしてくる。
先程の衝撃が脳内にも衝撃を与えたのだろう。
それでも、死の恐怖は無かった。
「ここまで、か・・・」
『彼女』はあっさりと、数秒後に襲ってくるであろう死を受け入れる心境だった。
バグがゆっくりと『彼女』のほうへ向かう。
「まぁ、こんな私にしては上出来、かなぁ・・・」
バグがゆっくりと体を振り上げ・・・
急速にバグが『彼女』のＡＣに向かいのしかかってゆく。
「これで・・・楽になれるのかな・・・『お兄ちゃん』・・・」
『彼女』はゆっくりと眼を閉じた・・・
直後、『彼女』のコックピットを凄まじい衝撃が襲った。
第２０話 完
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後書き代わりの座談会
ジオ「はい、２０話でした〜」
ノア「ところでエラン教授の名前間違えてたんだって？」
ジオ「いきなり痛いところつくね・・・その通りだけど」
ルシード「それはそうと戦闘中、それも勝てるかどうかギリギリ、と言うより負けそうな相手前にして別のこと考えるのは無理だろ」
カリナ「大丈夫なんじゃないの？その辺りはお話の都合ってのもあるし、ねぇ？」
ジオ「視線が痛いんだが・・・その視線やめれ」
ミリアム「私が死ぬこと覚悟しちゃってるんですけど・・・その辺は？」
ジオ「それは・・・２人の感情模様と共に次回を期待してくれと言うことで納得して頂戴」
カリナ「じゃあ文中の壁って言う表現は？」
ジオ「そりゃあバグとミリアムを遮る物をどう表現するかって考えてたら壁って言う言葉が浮かんだのさ」
ノア「行き当たりばったり？」
ルシード「だな」
ジオ「まあそう言うことになる、あ、それとあの『違う』の乱打は間違いなくエヴァ」（中途で切れる）
ミリアム＆ノア「また？（同時)」
ルシード「ＡＣ、ガンダム、エヴァ・・・元作品が多すぎだろう、これは」
ジオ「ンなこと言ったって何作るにしても何かの影響を受けるだろうが、俺の場合それが多いってだけで・・・」
カリナ「それがダメなんじゃない？」
ジオ「う・・・だから俺は尊敬する人物は最初に物語を作った人なのさ」
この後はほぼ雑談に移行するのでカットします
次回もよろしくお願いします