ARMORED CORE BATTLE FIELD OF RAVEN


第15話   レイヴン達の戦場




 「何だ?あの男は?」
 その男はラグだった。
 銃弾を弾いた空気の壁に手を伸ばす。
 瞬間的にラグの腕から血が吹き出す。
 だがラグは退かない、そのまま空気の壁を突破する。
 彼以外の者は動かない、頭が動いていても体が動かないのだ。
 血まみれにも構わずジオの首筋をつかむ。
 ラグの血がジオの服にこびり付く。
 「思い出せ!記憶を失ったお前がバーンと呼ばれていた訳を!」

 そうだ、俺の名前はジオ・・・
 でもバーンと呼ばれていた・・・
 バーン、焦土、全てを壊し、全てが燃え尽きて・・・

 「お前はあの研究所と同じく、この都市を焦土にする気か!」
 そうだ・・・それだけは、しちゃいけない・・・
 この都市には、俺の仲間がいる、俺の友達がいる、知り合いがいる。
 この都市は壊したくない!

 「ラグ・・・」
 ようやく言葉が話せた。
 「ジオ?正気に戻ったのか?」
 「力が、力が止まらない!」
 「何!?」
 止めようとしても止まらない、無制限に力があふれてくる。
 だめだ、止まらない!
 体の中から力が吹き出して・・・
 自らの体さえも爆発させてしまうほど・・・
 絶望が彼を襲う。

 「ジオ!」
 「兄さん!」
 え?
 聞こえるはずのない、二人の声。
 「約束したじゃない!帰ってくるって!」
 「そうよ!帰ってきて!」
 そうだ、俺は帰るんだ、仲間のところへ!
 そのことを思い出したとき、急激に暴走は収まっていった。

 「暴走させるのが感情なら、それを収めるのも感情、か・・・」
 ギーレンは独語した。

 ラグは思い出した。
 そして空中を見上げる。
 「ジオ、感動のシーンに水を差して悪いが・・・上を見てみろ」
 ジオは上空を見上げる、そして全てを理解する。
 「おいおい・・・こりゃあ・・・」
 「そうだ、飛空挺主砲が都市を狙っている」
 その言葉に全員が戦慄を覚えさせた。

 「全世界を、ひいては全人類を、一個人の感情などという不安定な物に任せるわけにはいかない」
 輸送艇の中、首に付けたペンダントをもて遊びながら、独語した。
 「扱いきれない力は、単なる害悪でしかない・・・」
 スゥ・・・と深呼吸を一つ行う。
 「あと180秒でチャージ完了します」

 「ジオ、お願い・・・兄さんを、リオル・ヴァーノアを止めて」
 カリナがジオに言った、止める、それは兄を殺してくれ、と言うのと同じ事だ。
 彼女も決断したのだ、人類全ての未来ではなく、自分自身の未来を。
 「・・・分かった」
 決断は終わった、あとは行動だ。



 「ふぅ・・・ふっぅ・・・」
 息も絶え絶えに。
 「どうにか・・・勝ったか?」
 2人は呟く。
 「・・・いや・・・終わってはいないようだ・・・」
 「どうした・・・増援か?」
 既にACに弾薬は無く、ブレードも出力が上がらない。
 「いや・・・上・・・」
 上にはこちらに、都市に向けて砲撃しようとしている飛空挺の姿があった。



 「主砲チャージ完了まで、あと30秒・・・」
 「?主砲付近になにか・・・あれは・・・オルフェラウス!」
 上空数百メートルに浮かぶ飛空挺が目の前で破砕した。
 「主砲が!?チャージ完了寸前だったんだぞ!」
 「急速離脱だ!爆発するぞ!」
 部下達が慌てているなかで、『彼』は笑っていた。
 静かに、ゆっくりと。

 爆発光が見えた。
 僅かな差をおいて爆音が聞こえる。
 ジオは空中で金属片、ペンダントを見つけ、その手に収める。

 やつらのやってきたことは許せない・・・
 それでも、俺は・・・
 この都市を守るためとはいえ、この俺の力は・・・

 空中の悲劇を見届け、カリナは泣き出した。



 「この仕事なんかどうだ?」
 「報酬は?」
 「3万コーム、悪くはないだろ?」
 フゥ・・・ジオは思わずため息を付いた。
 「どうした?」
 「いや、この前のことを思い出しただけだよ、
  お前が俺を拾った頃から俺が何なのかを知っていたって事をな・・・
  なんで教えてくれなかったんだ?」
 「お前が自力で思い出さなきゃ無意味だからさ」
 「あーそうですか」
 「そういえば、あの組織はどうなったんだ?」
 「ああ、活動はだいぶ弱まったらしいが未だに強い影響力をもっているらしい、
  なんでも元腹心のギーレンって奴が仕切ってるらしい」
 「・・・そうか」
 そう言うのとほぼ同時にカリナが部屋に入ってくる。
 「ジーオ、何かいい仕事見つけた?」
 「ちょうどいいや、この仕事一人じゃ面倒そうだし、一緒に来てくれよ」
 「うん、いいわよ、退屈よりはずっとね」
 カリナは微笑んで言った。

 二人で並んでゆっくりとガレージに向かって歩く。
 「・・・あれから、もう一ヶ月か」
 「・・・そうね」
 「もしかしたら、リオルも、やりかたはどうあれ・・・
  最後に見ていたのは平和だったのかもしれないな・・・」
 「・・・そうかもね」
 カリナはあの時から首に掛けているロケットペンダントを開いた。
 その中には小さな頃の、幸せそうに微笑む幼少期のカリナとリオルの写真が入っていた。
 「そしてその平和を脅かす殺戮兵器、オルフェイル・・・か」
 カリナは前に駆けだし、振り返ってジオにほほえみかけた。
 「大丈夫よ、ジオは本当に優しいもの、ただの兵器になろうとしても、なれっこないわよ」
 「・・・そうだな、少なくとも俺達は自分たちの正義を信じて戦っている」
 「そう、だからこそ、誰かの兵器になんかなれっこないわ」
 そう言ってカリナはジオに微笑みかける。

 ここは、俺等がレイヴンとして生きて来た、街。
 そしてこの狂った時代が続く限り・・・
 俺達の戦場が無くなることはない。
第15話 完


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後書き代わりの座談会

ジオ「第1部、完結〜!」
ノア「と、言ってもまだネット機能は回復してないだろ?アップ不能じゃん」
ジオ「う、痛いところを・・・」
カリナ「まぁいいじゃない、一応の完成でしょ?」
ミリアム「お祝いお祝い」
ルシード「ところで・・・チャージに何百秒もかかる主砲って性能悪すぎないか?」
ジオ「まぁエネルギー弾ってのは得てしてそういう物だろ?」
ミリアム「でも確かあのジャスティスでも5分よね?」
ジオ「う〜む・・・じゃあこういうのはどうだ?あの飛空挺は大破壊以後に作られた、ってのは」
カリナ「設定になってな〜い」
ジオ「最後まで聞けって、だから技術レベルも落ちてて充填効率がめちゃめちゃ悪いってのは?」
ルシード「なるほど・・・」
ノア「あと疑問は他にもあるぞ、前の時はすっかり忘れていたが空気の壁って何やねん」
ジオ「・・・強化人間だけが生み出すATフィールドみたいな物」
ノア「エヴァかよ」
ジオ「だって究極の強化人間だもんよ」
カリナ「だから暴走があったのね」
ルシード「あと一人称と二人称が混合してるが・・・」
ジオ「それは気にするな、頼むから」
ノア「最初から見てみるが・・・解けてない謎があるな」
ジオ「伏線伏線、これからも伏線は増えるぞ〜」
ミリアム「それで・・・解けないまま終わるのね」
ジオ「ちゃうわ」

チョップ一撃

ミリアム「痛い・・・」
ジオ「我慢しろ、ちゃんと終わりは考えてるから」
ミリアム「ところで・・・結局出番が少なかったんだけど・・・」
ジオ「ちゃんと第2部で主役扱いにしたるから我慢しろ」
カリナ「ってことは今度は過去編ね」
ジオ「その通り」
ノア「その2人って事はしばらく俺らは出番無しか」
ジオ「まぁその次お前らだから我慢しろ」
ルシード「了解」
ジオ「長くなったし、終了にしようか」
ノア「そうだね」
ジオ「じゃ、終了」
全員「第2部もよろしく!」


最後に・・・geo(=ジオですが)の好きな一言でしめようかと思います。
OPEN UP YOUR MIND AND CLOSE YOUR EYES(心を開いて、瞳を閉じて)

追記:この座談会は3月3日に収録されました