ARMORED CORE BATTLE FIELD OF RAVEN


第11話   八年前の悪夢―偽りの楽園、ハニエルの歌声―




 「・・・」
 僕は、誰なんだろう?
 「お目覚めかな?ラグエル君」
 ラグエル?僕の、名前?
 「はい」
 「お祈りの時間だよ」
 「オイノリ?」
 「そう、私達はね、とても罪深い存在なんだよ、だから、神様にお許しを請うんだよ」
 「そう、ですか」
 「来なさい、礼拝堂に案内してあげよう」
 手を優しく握り、その人は僕を礼拝堂に連れて行った。

 そこには、僕よりも小さな子供達が熱心に祈りを捧げていた。
 「みんな、今日からみんなの家族になったこの子を紹介しよう」
 子供達が一斉にこっちを振り向く。
 「ラグエル君だ、さぁ、挨拶を」
 「は、はい、よろしく、お願いします」
 子供達の一人がこっちに走ってくる。
 「ミカエル!」
 そう言って抱きついてきた。
 「やっぱり神様、僕の願い事叶えてくれた、ミカエルが帰ってきてくれた」
 「え?え?」
 「ミカエル、覚えてる?僕だよ、ハニエルだよ」
 状況が分からない。
 「そっか・・・覚えてないんだね、しょうがないよね、一度、神様の洗礼を受けたんだもん」
 少し寂しそうに、僕から離れた。
 「大丈夫さ、名前が違ってもミカエルは帰ってきたんだ、忘れていてもきっと思い出すよ」
 「神父様・・・」
 僕を連れてきたのは神父様、という人らしい。
 「じゃあ、お祈りは終わりにして、部屋に戻りましょう」
 「はーい」
 元気に答える子供達。


 部屋、とはこのカゴらしい。
 「さぁ、ラグエル君、君の部屋はここだよ」
 そう言ってカゴの一つを指さす。
 何の疑いもなくカゴに入る僕。

 歌声が聞こえた。
 ハニエルが聖歌を歌っている。
 よく分からないがとても心に響く心地の良い歌。
 やがてそれも終わり、ハニエルが僕の隣のカゴに入る。
 「ミカエル、昔のこと、忘れちゃったんだね」
 「う、うん」
 覚えていない、昔のこと、全部。
 「ミカエルは、ミサの洗礼で一度僕たちの前から居なくなってたんだ」
 ミサの洗礼で、死んだ?

 「ミカエルは、僕が洗礼を受けるはずなのに、代わってくれたんだ、とても痛いモノだからって」
 「優しかったんだね、僕」
 「うん、とっても」
 ハニエルが優しく笑う。

 「ハニエル」
 「神父様?」
 「そろそろミサの、洗礼の時間ですよ」
 「はい、あ・・・」
 「どうしました?」
 「神父様、その前にミカエルと礼拝堂でお祈りしてきてもいいですか?」
 「いいですよ、でも少しだけですよ」
 「うん、行こ、ミカエル」


 そしてお祈りが終わる。
 「ミカエル、少しだけ待ってて、ミサが終わったら、迎えに来るから」
 「え?うん」
 「よかった」
 ハニエルは笑った、そして、ミサに向かった。


 ハニエルは十分ほどして戻ってきた。
 「ミカエル・・・」
 「あ、ハニエル」
 ハニエルがそのまま倒れていく。
 「ハニエル?」
 倒れていくハニエルを受け止めた。
 ハニエルは血まみれだった。
 「どうしたの?大丈夫?」
 「だい、じょうぶ、少し、休めば・・・」
 僕は、何かが引っかかった。
 「ミサの、洗礼ってどこでやったの?」
 何かがおかしい、ボクの何かが教えてくれた。
 「この先の、突き当たりを、右、に行った、ところだよ」
 虫の息なのか、とても途切れ途切れだ。
 「ねぇ、ミカエル、僕、もしかして、洗礼、うまく、できたかな?」
 「ハニエル?」
 様子が変だった。
 「あの時、覚えてる?ミカエルが、洗礼を、受けたとき。
  あの時・・・君の・・・」
 ふっ、と、一つのビジョンが頭の中に飛び込んでくる。

 ――テレパシー能力。
 それはハニエルの特殊能力。

 もっと、今より小さな自分に似た、とても小さな子供。
 その子供が倒れている、血まみれで。
 そしてその返り血にまみれて、ハニエルが泣いていた。
 倒れている小さな子供の目を右手に握って。
 「君みたいに、一度、神様の、ところに・・・召されるかも、しれないけど、悲しまないでね、
  君みたいに、また、戻って・・・」
 そこまでだった、そこから先、ハニエルは一言も話さなかった。
 息もしていなかった。
 「うああああああああ!」
 何かを思いだしたかのように、ハニエルが言ったところ、ミサの場所へと走る。

 そこには、二人の子供達が戦っている、凄まじい力で。
 「どうしたのかな?」
 そこには神父が立っていた。
 「ラグエル君?どうしたのかな?」
 答えられない、その奇妙な気配。
 「それとも?こういえばいいのかな?」
 何か、さっきまでと違う、気配がした。
 「戦闘兵器オルフェラウス」
 その言葉で、全てを思い出した。

 昨日までの自分、サンプルとしての自分を。
 そして思い出す、試験場としての教会の存在を。
第11話 完


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後書き代わりの座談会

ジオ「ふい〜、11話でござりす」
ノア「過去編って言うか・・・聞きたいのだがジオ=ラグエル=オルフェラウスか?」
ジオ「そうだよ」
カリナ「何が何だか分からないわよ、これ」
ミリアム「具体的に何が言いたいの?それに先週までこの部分って別の話じゃなかった?」
ジオ「いいじゃん、この前学校で天使ヒエラルキーっての見つけてさ、名前がカッコ良くって」
ルシード「そのためだけに訳のわからんモノを?」
ジオ「その通り!」
ノア「それだけでこんなの作るなよ」
ジオ「だってさ、暴走の原因作っといた方がイイだろ?想像力にお任せってのもいいけどさ」
カリナ「だからってテレパシー能力のキャラを出して速攻殺すのはどうかと思うけど」
ミリアム「テレパシー能力ってニュータイプ能力みたいなモノでしょう?ガンダムで言うところの」
ノア「そうだろうね、でも画像まで相手のココロに移せるかまでは知らんよ」
ジオ「でも別にいいだろうが、ガンダム書いてるわけじゃなし」
ミリアム「そうだけどさ、ACから離れてる気がしない?」
ジオ「するけど・・・まあいいじゃん、プラスの手術の1つにこんな事件がありましたって感じで」
ノア「いいのか?それで、収拾つくのか?」
ジオ「ああ、それについては大丈夫、頭の中で完結済みだから」
カリナ「そう、だったら安心ね」
ジオ「それじゃまた次回!」
全員「こうご期待!」