ARMORED CORE BATTLE FIELD OF RAVEN


第10話   八年前―悪夢始まる―




 「えっと・・・げ」
 ガード養成学校で、俺は成績を確認していた。
 搭乗時戦闘能力、1000点満点中998点、同年生587人中1位
 戦略理解度、1000点満点中898点、同年生587人中16位
 この部分を見る限りでは、彼が相当な天才であることを思わせる、だが。
 機関工学、1000点満点中102点、同年生587人中587位
 相互連携、1000点満点中108点、同年生587人中586位
 一般教養、1000点満点中180点、同年生587人中579位
 この辺りをみれば、彼が一般人以下であることもあることが理解できるだろう
 一個でも100点未満があった場合留年か退学だからである

 まあいいか、どうせ俺はパイロット志望だ、中央司令員や整備員になるつもりはないし。
 彼はその様に軽く考えていた  「ノア、お前はどうなんだ?」
 「ああ、結構いい成績だ」
 「どれ?見せて見ろよ」
 搭乗時戦闘能力、1000点満点中988点、同年生587人中3位
 戦略理解度、1000点満点中968点、同年生587人中1位
 機関工学、1000点満点中892点、同年生587人中18位
 相互連携、1000点満点中985点、同年生587人中1位
 一般教養、1000点満点中987点、同年生587人中1位
 「お前成績良すぎ」
 「そうかな?」
 「そうだよ」
 ため息1つ。
 「それで、何でグランブルシティーまでMT取りに行くの欠席するんだ?
  確かあっちで支給される奴を選んでどこに配属されるかを決めるんだよな?
  ま、お前の成績ならどこに配属されても平気だろうけど」
 「そう言うなって、しょうがないだろ?親父が急病で倒れたから
  回復までの3日間くらいは事業経営に社長代理として参加しておいてほしいって」
 「おま・・・経営の方まで成績優秀かよ、やってられねえほど多才じゃん」
 「そう言う訳じゃなくてな、兄貴が行方不明になったのは前言ったろ?」
 「ああ」
 「それで仕方無くってかんじだよ、次点って奴だ」
 「へぇ、もったいない、せっかく街の英雄ラムダが同乗してくれるってのに」


 英雄ラムダ・・・数年前、街を襲撃したACを完全な罠に引っかけて街を守った英雄、当時35歳。


 「そうなんだよ、それが残念なんだ」
 「気を落とすな、後で写真でも撮ってきてやるから」

 そうだったな、それでノアは欠席したんだっけ・・・

 「おお・・・」
 彼、いや、彼等は生まれて初めて都市の外に出た。
 と、言っても生身の状態ででている訳ではない。
 そもそも普段は一般人が外に出る事は基本的には許されていない。
 人員輸送列車「バーガム」の中で、遠ざかる自分の生まれ育った土地を見やりながら、
 何もない外の風景に見とれていた・・・
 「すっげぇな、こんなにも無開発地帯があるなんて」
 「はいはい、一般教養でもやったように、この辺りだけでなく、世界中の都市の外側がこんな感じなんだ。
  何故人類が普通に外に出ないかというのは簡単で、大破壊の時に開発された
  即死性ウイルスが世界中に散布されたため、と言うのは知っているな」
 彼はその辺りで一般教養のポイント稼いだからその事はよく知っていた。

 「現在はそのウイルスに対する浄化剤の研究が何十年間も続いているが、
  まだ開発の目処は立っておらず、実際はMTやACのように密封性の高いモノに頼らねばいけないのですね、
  さらに仮にそのウイルスを吸い込まなかったとしても、
  大破壊時に汚染された空気を吸い込むと危険なのです、分かりますね?」
 教師は楽しそうに話しているが、顔は険しいままだ。
 「そこで・・・」

 ボシュン!
 ドガァ!

 衝撃と爆発が列車を襲った。
 「な、何だ?」
 辺りの連中が騒ぎ始めた。
 「こちらはバーガム列車長です、現在この列車は所属不明のAC三機に襲われています。
  現在所属不明機は列車直営ガードと交戦中です。
  現在近隣都市の各ガードに連絡、十分後には到着する、とのことです、
  緊急時に備えて、全員対毒ガススーツを着用してください」
 ガードの出動は無駄だな、こんな列車、五分もあれば恐らく残骸と化すだろう。
 人ごとのように冷静に考えている自分に気が付くジオ。
 とりあえず、スーツを着込む。
 俺は死ぬかもしれないが・・・だがガード見習いとして、列車を安全な所に逃がさなければ・・・
 確か、この後ろの車両にはグランブルで量産してもらうための新型MTがあったはずだ。
 よし!それをいただいて直営に回ろう!
 俺は後ろの車両、みんなとは逆の方向に走りだした。

 この時、彼は自分の死について軽く考えていた。


 「これか!」
 MTを見つけるとダッシュでコックピットに乗りシステムを起動させる。
 「基本操作はビショップや有明とそうは変わらない、いけるぞ!」

 この時の彼は知る由もなかったが、
 この機体はテラフォーミング段階の火星での戦闘をも考慮された試作機体「ハリケーン」と言うものである。

 システム、戦闘モード始動
 火器管制、待機から臨戦に
 機動部、異常なし
 「MT起動!」
 走る列車のコンテナのハッチを開け、外に出た。

 「列車長!聞こえますか?」
 「誰だ?今忙しい!」
 忙しそうだと言うことはこの列車が攻撃を受けた段階から分かっている、
 この輸送列車には一応防衛用の火器が付いているためだ。
 そしてそれらがせわしなく方向を変えて、火線が直営機を援護している。
 ・・・目に見えての効果はないが・・・
 「自分は養成学校の生徒です!自分が囮になります!その間にできるだけ遠くに逃げてください!」
 「正気か?死ぬぞ!それに直営部隊の援護もしないことには!」
 ここは旧世紀の軍隊じゃない、非戦闘員を乗せた列車が逃げたところで誰も攻めはしない。
 いや、軍隊ではむしろ勲章ものだろうな、一般人を助けたんだから。
 「このままでは全滅します!ならば被害は少ない方がいい!」
 「若造が何を言う!私は味方を見捨てるわけにはいかない!」
 「分かりました・・・突入します、援護、下さい!」
 列車長が退かないのではどうにか敵を倒すしかない、しかしAC三機相手にMT10機程度では厳しい・・・
 でも行くしかない。
 彼はそう判断した。


 「ん?MTの反応?」
 ACがこちらを振り向く、気付かれた。
 ACのメインカメラ部を狙いマシンガンを撃つ。
 「小賢しい!」
 四脚のACがグレネード弾を放つ。

 ジオは必死で回避行動をとりどうにかかわす。
 それた弾はこのMTが格納されていた後部コンテナを吹き飛ばした。
 回避しても列車への被害がでてしまう。
 回避しなければ死ぬ。しかも火力も向こうのほうが上。
 不利な条件しかない戦いだった。

 それなら・・・
 どの程度の戦力を本部がどの程度出してくれるか分からないけど・・・
 敵の映像とデータを、ガードに送れば、もう少し、良い展開になるんじゃ・・・
 そう判断し索敵を開始する。
 金色の中量二足、装備、右腕、マシンガン、右肩、レーダー、左肩、ミサイル、それにブレード・・・
 黄色の重量タンク、装備 右腕、バズーカ、右肩、ミサイル、左肩、チェインガン、左腕は装備無しのようだな。
 青色の軽量二足、装備 右腕、ハンドガン、右肩、装備無し、左肩、グレネード、それに強化ブレード・・・
 映像、及びデータをガードに送信する。
 「速く届いてくれよ・・・」
 そんな一言と共に

 そんなことをしている内に味方機が一機、また一機とうち倒されていく。
 「ここで撤退すれば被害は列車にいってしまう、守りつつ敵を叩くしかない・・・か」

 ドゴゥ!
 列車の車両が一つ吹き飛ばされた。
 そして、また直営機が墜とされた、ついに八機目だ。
 「列車長!限界です!速く発進させてください!」
 まだ生きている彼は再度通信を入れる。
 「く・・・仕方ない、すまんが、時間稼ぎをお願いする」
 それは死んでくれ、と同義だった。
 でも時間さえ稼げば彼以外の何百人もが生き残る、そう彼は決断した。
 「了解です!速く発進してください!」
 「分かった、武運を祈る」
 生還を祈る、ではないあたりが列車長の苦悩を思わせた。


 「ぬああああ!」
 俺は、黄色のタンクが隊長機である、と考え、残ったエネルギーを一気に噴出させ、突入する。
 狙うのはコックピットただ一つ、である。
 さすがに過酷な環境下での戦闘を想定しているだけにか、機動能力は相当な物である。
 マシンガンを乱射しつつ敵機に迫る。
 だがその程度では貫通できないことはお互いにも分かっている、
 黄色のタンクはチェインガンを放つがろくに回避もしない。
 「ぬおあああああああああああああ!」
 白兵距離に入った。
 敵も、相手がやろうとしていることに気が付いたのだろう。
 ブーストを使って逃げようとする。
 「させるか!」
 マシンガンを放ちながら、敵のコックピットに腕を叩き込んだ。
 貫通する、中の人間は即死だろう。
 同時に彼のMTが中破した。  「だがこれで隊長機を・・・」
 ドゴァ!
 そう考えた刹那、MTをグレネードの砲弾が襲った。

 ACやMT特有の強化バランサーも効果無く、MTは倒れた。
 機体は大破したが何とか彼は生きているようだ。
 「さ、さすが新型・・・パイロットの、生存確率、上がっているぜ」
 でも、どうやら、今の爆発で何かが腹に突き刺さっているようだった。
 しかも遠くから爆音が聞こえた、恐らく列車が破壊された音だろう。
 「ははは、でも、こりゃ、ダメかな?」
 その時は不思議に死ぬことが怖くなかった。
 でも、この後、彼は、死んだ方が良かったと思うような事になる。
第10話 完


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後書き

雪のため連中を呼ぶことが極めて難しいため、ひとりで行うこととなりました。

はいども〜、作者のgeoです。

過去編です、八年前のことです。
過去編なのでジオの視点で書いてます、あくまでジオの過去ですから。
自分の設定では火星テラフォーミング計画は地球政府によって行われる前に、
一部の企業、場合によっては都市そのものによって計画されており、
この連合都市の場合、八都市全てが画策していました。
その証拠がジオが搭乗した「ハリケーン」です。
テラフォーミング計画は地球政府が行ったときには既に数回行われ、
それが第一次、第二次となって、地球政府は第五回より参加したということになってます。

武装されていることからも想像されるとおり、環境安定の前に戦闘は起こってます。
この都市にしても自己の権力増大を狙っていたのでしょう、
権力者にありがちな「権力を示すための無駄な出兵」と言ったところでしょうか

ちなみにジオがMTのことを知っていたのは生徒に公表していたからで機密を知っていた訳ではありません。
(もちろん火星進出を狙っていることは秘密ですが)



これからしばらくは過去編が続きます。
いきなり9話の続きを始めると絶対混乱が起きますから(今も十分混乱してきているけど)




一人で後書きって凄く辛いんですね。
次からはなるべく連中を呼ぶようにしようっと。