ARMORED CORE BATTLE FIELD OF RAVEN
第11話 銃火−直撃−
響いた銃声は3発。
1人はジオの物。
1人はカリナの物。
1人は狙撃手の物だった。
目的は3つ。
共にその目標に撃ち抜いた。
人が倒れる。
3人倒れた。
次に聞こえたのは女性の叫び声だ。
だが倒れてしまった自分にはよく聞き取れなかった。
次に感じたのは抱きかかえられた感触と銃声。
血が流れている感覚はない、流れすぎてと言う物ではないようだ。
血が、流れていない?
弾が足下に落ちている事を知覚すると、痛みは嘘のように消えていった。
真横からナイフを持った男が2人に近づく。
視線を正面に見据えて2人の男を撃ち殺した直後にナイフが突き出される。
気付いた時はもう遅かった。
刺される、と思った。
だがそのナイフは下から弾き飛ばされ、持っていた男の右腕に突き刺さる。
次の瞬間に顎に一撃くらって倒れ伏した。
「ジオ」
「話は後だ、逃げるぞ」
そう言って先に走り出す、2人の後ろには大声と銃声、そして足音だった。
彼は思う、弾は貫通しているのに、何故血が流れていないのだろうかと。
最初の一撃は体当たりから始まった。
閃光弾の炸裂ととジャミングが一帯に始まった瞬間にフリッツが受けた物だ。
今まで彼らが取ってきたような戦法を食らったのだ。
「フリッツ、そいつは俺が!」
外部マイクを全開にしてノアが叫ぶ。
その言葉で状況を理解した彼は体当たりで空いた僅かな自機と敵機の隙間にグレネードを一発撃ち込んだ。
怯んだ隙に一撃叩き込んで物量の差を埋めようとする。
だがその行動を読み切った二機が進路を塞ぐ。
「くっ………やるな!」
突破できないと判断したノアは、急いで自分の行動手段を再構築すべく一度下がった。
一方、ルシードとミューアも2対5という状況下で苦戦を強いられていた。
今まで彼らは物量差を限定的状況を作る事で切り抜けていたが、
今度の相手はその限定された状況さえ利用する術を身につけた相手だった。
こうなると物量差が確実に戦力比となる。
「ノア………信じるぞ」
ルシードは前後の敵機の攻撃を一度にいなしながら呟いた。
目の前にあるのはオペラだったろうか。
人の心と大きな空間に広がる声。
目の前にちりばめられた幾つもの光点は見る者を魅了する。
「F小隊からJ小隊はエリア7に展開しA小隊からE小隊まではエリア15に展開させろ、K以降は」
「予定通り指定のポイントへターゲットを追い込んでいます」
「よし、以後の指令は貴官に任せる、私は行く、ミスタークレス、貴方は・・・」
「私はココに居よう、君にも、そう、君たちにとっても大事な局面のようだし、この『戦闘オペラハウス』は見ていて飽きない」
「そうして頂けると非常にありがたいですよ、では失礼させて頂きます」
ナイフが折れた。
根本から折れてしまった。
敵は既にこちらを照準に入れている。
すぐに近くのコンテナの陰に隠れ、一気に場所から離れる。
乱射された弾丸が数秒でコンテナを粉々にした。
明らかに殺しに来ている。
対してカリナに対しては威嚇射撃的面が濃いようだ、それなら思い切った作戦がとれる。
そう判断すると、突如物陰から飛び出て走り出す。
それはただの自殺行為に見えた。
ああ、暖かい。
そして、心地良い。
楽園というのはこんな空間だろうか。
あれ、楽園にいるはずなのに………
何故自分は銃を撃っているの?
やめるんだ。
やめてくれ。
やめろ!
―――ラグエル
誰かのコエ
鼓動が、聞こえた。
速度が遅ければ、ただの自殺行為で終わったかもしれない。
だが、そのことを考える暇さえも、知覚する時間さえもなく。
数人の男が倒れた。
倒れながら見た最後の光景は、笑顔。
狂気の笑顔、と称するにはあまりにも神々しい、神の笑顔だった。
ああ、そこで全身の『赤いモノ』が無ければ天使だな。
倒れ逝く男達はそう思っていた。
そして戦闘は膠着状態に陥っていた。
2人の連携は、多数の熟練者にしてみれば恐怖の対象でしかない。
下手なタイミングで飛び込めばこっちがやられる。
そんな恐怖の対象でしかない。
新兵が見ればただの二機にしか見えず、飛び込んでそのまま帰らぬ人となるだろう。
その二機が、二組、ゆっくりと近づき、四機になる。
どちらかが発砲すればそれが合図になり、決着は数分以内につくだろう。
そしてどちらも、勝ったとしても半数が破壊される事が分かっているから、下手に動けないで居た。
そして、戦いは停止した。
第11話 完
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