ARMORED CORE BATTLE FIELD OF RAVEN



第4話 15分前から
 ほぼ全てが偶然だった、その時全員が無事だったのは。  突如彼らの居るビルを囲んだ黒い服の男達。  その数はざっと100人。  その一部が扉を蹴破り、数人が飛び込んできた。  男達は見える、正面に一人、女性だ。  男達が銃が構えはじめる。  それと同時に激しい6連射。  発射から次の発射までも切れ間の無い発射。  扉に密集していた男達は倒される。  そして足下の机を蹴飛ばし、入り口に思い切り当てると厚手のソファーに隠れる。  その直後に、別の男達が銃を連射してくる。  ソファーが一瞬でボロボロになる。  射撃音が途切れると入り口に寄りかかった机を蹴り倒すと再び突入してくる。  その攻撃は横合いから一組の男女の射撃で勢いを削がれた。  相手が大口径の銃を装備していることは理解した。  だが、それまでに10人以上が倒されたのだ。  次の攻撃は同時に屋上から降りたった部隊を含めて窓からも行う、指揮官がそう指示する。  攻撃が始まる数秒前、状況は変化する。  攻撃予定地点の一つに集中攻撃をかけたのだ。  襲撃され、あわてふためいて、状況さえ把握しないであろう中の3人が、だ。  一方的に攻撃する予定だった彼らは思わぬ反撃に遭い、対処のまもなく全滅する。  だがその為に他の攻撃部隊が屋内への突入に成功する。  大口径の銃を持っていようとこちらの装備はマシンガン、勝てる。  そう判断した一人の下級指揮官が攻撃開始を命ずる。  だが全員がことごとく射撃前に撃ち倒される。  「カリン! ミリィ! ルシード! 無事だな!?」  ノアがデザートイーグルの弾を詰め替えながら大声で叫んだ。  「大丈夫、なんとかなってる!」  二人の声が響いた。  ルシードの声は帰ってこない、チッと舌打ちをする。  彼がやられるとこちらの戦力も減る、悲しむ以上に、全滅の可能性も考えて怒りがこみ上げてきた。  なにさっさとやられてるんだよ馬鹿野郎と思いながら。  5人の男がバズーカを持って3カ所から突入してくる。  同時に3人が発砲し、3人が倒される。  だが2人の男が構えた。  その2人も倒そうとしたが援護射撃のために慌てて隠れる3人。  先ほどまで頭のあった場所を銃弾が通過し、後ろの壁に穴を開けた。  「畜生! ここまでか?」  ノアが思う、だがバズーカは発射されなかった。  「ぐあっ!」  叫び声の直前に響いた音は同じ銃の同時発砲音。  それも天井からの発砲音だ。  銃を携え、天井裏からあれほど正確な攻撃を行ったのは、紛れもなくルシードだと思った。  同時に天井に向けてマシンガンが撃たれる。  天井板を踏み抜き、難を逃れ、落下しきるまでの間に身を乗り出した迂闊な男達を撃ち抜いていく。  着地点に攻撃が集中する直前、真横に逃れて再び難を逃れる。  「ルシード!」  「………天井裏でちょっとした工事をしていたんだがな、予定変更だ」  「え?」  二人の女性の声が重なる。  「目を閉じろ!」  直後にすさまじく眩しい光が部屋を包んだ。  目を閉じられなかった男が苦悶の表情になり、顔を出す。  ルシードの声を聞いて思わず目を瞑った運の良い男も何が起こったか分からず目を開けられない。  眩しく光った直後、長砲身の銃を二丁構えて飛び出す。  一足飛びに自分の隠れていたキッチンテーブルを乗り越え、  相手の遮蔽物になっていた分厚いダイニングテーブルを乗り越えた。  目を瞑っている男を優先して、ハードボーラーの二丁拳銃であっさり撃ち倒していく。  カチッ。  「弾切れだな!」  隠れていた男が飛び出す。  だが、距離が近すぎた。  飛び出すと同時に回し蹴りを顎に食らう。  直後にカリナの持っていたマテバ、ミリアムの持っていた44マグナム、  そしてルシードが袖から取り出したグロッグに撃ち抜かれる。  同時にノアは二丁のマシンガンを拾い上げ、突入可能な箇所にマシンガンを連射していく。  数人に当たったようだが、牽制の為だったので致命傷ではないだろう。  「逃げるぞ、状況は不明だが危険だというのは分かった、1分で荷物をまとめろ」  「ジオの分は?」  「とりあえず部屋を確認してくれ、マネーカードがあればそれを」  「兄さんは脱出口の確保を」  「分かってるって」  無駄遣いをしないようにと、彼は妹にマネーカードなどの重要な物は預けていた。  今回はそれが脱出時間の短縮と脱出口確保のために時間を稼ぐことに役立ちそうだった。  普通の入り口はダメだろう、と判断すると彼は窓に近づく。  すると窓に大量の穴が空いた。  「窓もダメか………」  同時に穴だらけになったサンドバッグを放り投げ、伏せた。  「考えろ、ノア・ヴァーノア」  冷静に考えた。  「どこなら安全だ?」  ここは元々廃ビルの5階で、自分たち以外に住人はいない。  と、すれば………  マシンガンを入り口に向けて乱射し、再突入をためらわせると、武器を拾い上げ彼は自分の部屋に入った。  「ここなら何とかなるか………」  部屋を確認すると無骨な自分の部屋を見てふっと笑ってしまう。  暇な時間を過ごすのが部屋ならば、自分の部屋はこのビルにはない。  少し離れた場所にある書庫、そこが彼の部屋だからだ。  机の上の文庫本を胸ポケットにしまう、上手く防弾チョッキの代わりになれば幸いという程度に軽く考えて。  そういえばあの本の主人公は撃たれても本が盾になるんだったなぁ、などと考えながら、一瞬だけ笑った。  バズーカの着弾音が響く、どうやら外から攻撃してきているらしい。  「この際好都合だ」  ふと見ると3人が荷物を小さなバッグに詰めて部屋から出てくる。  それを確認すると部屋の扉を開け、出来るだけ遠くから、部屋の壁に向けてバズーカを撃った。  すると比較的小さな轟音と同時に穴が空く。  「行くぞ!」  ノアが叫ぶ、先ほどの笑顔の残滓は微塵もない。  「了解!」  エレベーター整備用の通風口だった。  間取りからしてこの辺りだと見当して撃ったのが大当たりだったようだ。  彼らはそれを使って一気に下まで降りる、その間に役割分担は終わっていた。  カリナが荷物を、ルシードが落ちていた装備をまとめて持ち、ミリアムが前衛としてマシンガンを構えて降りていく。  ルシードは後方警戒をし、ノアがバズーカを構えてミリアムの後ろを走っていた。  閉まっていたエレベーターのドアもまとめてバズーカで吹き飛ばす。  どうやら一階についたらしい。  ドアから出た直後に手近な廃車に隠れるとマシンガンの音、どうやら発見されたらしい。  ノアが車の下から足下を撃ち抜くと、男達が倒れていく、バズーカは近くに転がしておいたようだった。  デザートイーグルはハンドガンの中で屈指の威力を誇る、それに脚を撃ち抜かれたら動けなくなるのも必然だった。  「どうする?」  「何がだ?」  「ACだよ、奪還すればこっちの勝ちだろう」  確かに彼らは一個小隊にもなるほどの人間戦力を投入しているが、  機械化歩兵、いわゆるMTやACは投入されていない。  この状況でACさえ手に入るならば圧倒的優位に立てるだろう。  さらに、一度騙したとはいえ上階にいる部隊が戻ってくれば状況はさらに悪化するだろうと言う判断もあった。  「ここから倉庫までどの程度か分かるか?」  「あの廃車を遮蔽物に使うとして………無事でかつ押さえられていなければ3分だ」  「わかった、カリン、ミリィ、自分用の対人用装備、持ってきてるな?」  ルシードが持ってきた装備の中から残弾数の多そうなマシンガンを見繕い、換えのマガジンを用意しながら聞いた。  「あるわよ」  「じゃあ3人で行ってきてくれ、ここは俺が引き受けた!」  そう言うとノアが別の廃車に向かって走り出しながらマシンガンを乱射した。  一も二もない、指示通りにしろ、と言うことだろう。  「二人とも、行くわよ!」  妹であるカリナが武器を手に真っ先に走り出す、荷物をそこに置いたまま。  倉庫には数人の見張りが居た。  見張りがマシンガンを乱射し、3人も応射した。  直後に3人は一番近くの廃車に隠れる。  「見張りは残り12人、一人当たり4人倒されないと………」  銃弾を補給しながらルシードが呟く。  「遮蔽物も何もない状況で銃撃戦は無茶だわ」  「確かにそうだ、だがそいつを可能にする魔法のアイテムがあるだろう?」  そう言うと魔法のアイテムとは似ても似つかない無骨なボールが握られる。  「ピンを抜いて3、2、1だ、いいな?」  「………分かったわ」  「カリン………とりあえず投げる方に専念してくれ、俺とミリィなら多少の遮蔽物を無視して攻撃可能だ」  それは銃弾によって貫通させるという意味ではなく、相手の動きを『見抜ける』からだ。  「READY?」  どこかで聞いた声のマネ。  二人は無言で頷く。  「GO!」  最初の一撃で3人が倒される。  ピンを引き抜き、銃撃とは違う方向に投げつける。  撃ってきた方向に意識を集中させていた残りの9人は、近くに転がった玉に気付かない。  跳弾がルシードの方を掠める、だが構わない、そのまま乱射する。  ミリアムが射撃を止めて、手榴弾の投げられた反対方向から飛び出していく。  カリナもそれに続いて、射撃を始めながら飛び出していく。  それに気付かず二人が倒される、数人が振り返り、銃で狙おうとした時、手榴弾が爆発した。  爆炎で視界が遮られる前に、狙いは付けられていた。  そこに各々銃弾を撃ち込んでいく。  爆風で軌道が逸れるが、元々近距離だったために、致命傷でなくとも戦闘力は激減していた。  そこにさらに止めの一撃を撃ち込んでいく。  「よし、これで終了だな………」  「まずは最初にミリィ、お前が乗れ、次にカリンだ………」  レディーファーストという訳ではないのだろうが、殿を務めようというのだろう。  軽く左右に頭を振り、人が隠れられそうな場所に銃弾を数発ずつ撃ち込む。  やはり数人が隠れていたらしい。  再び弾を込め、油断無く容赦なく攻撃を加えながらルシードとミリアムは周辺を警戒していた。  その頃ノアは4台目の廃車の影にいた。  「くそっ………バカスカ撃ちやがって、こっちが撃てねぇじゃないか」  そして少しだが距離が詰まってきている。  至近距離まで接近されたらマシンガン相手ではとてもじゃないが勝てない、現に不意打ち以外で撃ち倒せたのはまだ無い。  ゴガン!  そんな音がすぐ背後から聞こえた、どうやらこちら側のドアに弾が当たっているらしい。  と、言うことは大部分が貫通されたか、そう判断した。  「ちっ………潮時か!」  そう言ってまた別の車に向けて走り出す。  次の車は丈夫そうな外見だった、恐らく前時代はVIPを乗せていたのだろう。  「くっ!」  たまたま跳弾が彼の左脚を貫通した。  転がって車の陰に隠れると、迷わずシャツの袖を切り裂いて脚に巻く、それも威嚇射撃をしながら。  「とりあえず、これで動けるな」  残っている弾は、シリンダーに4発、手元に20発弱。  「上等!」  マシンガンの弾幕の中、ノアは自分がまだ足止めできているという状況に満足していた。  「乗れたよ〜」  するといつの間にACに乗り込んだのかACが腕を左右に振っている。  「分かった、何か問題はあるか?」  「ん〜、プログラムに問題はないし、機構チェックでも何もないみたいね、少なくとも爆弾とかはしかけられてないみたい」  妙な違和感があったが、とにかくそれを問題にはしなかった、何より時間が惜しい。  「分かった、急いでノアの支援に行ってくれ!」  「了解!」  やれやれ、とルシードが軽く息をつく。  その直後、ミリアムが彼の方に拳銃を向ける。  「油断大敵」  ルシードの背後に迫っていた男が倒れ込んでくる。  反射的に後ろに向けてエルボーを繰り出す。  その一撃で傷を負っていた男は肋骨が砕ける。  「ハッ!」  追い打ちで強力な掌底を顎に叩き込み昏倒させた。  だが、止めの一撃を頭に撃つことはなかった。  残りは何人だ?  ノアは車の陰に隠れながら音を聞いていた。  最低でも………と注釈を自らの頭に付け加えて聞いていた。  右の車の影に4人、左は………2人は居るだろうな、いや、3人か?  中央には1人、攻めるとすればそこか………  右足で膝立ちになる。  すると止血したはずの左足下には血が流れているのが分かった。  「走るのは無理か?」  ぐっ、と脚に力を込めると、やはり走る激痛。  「ダメだな………ダッシュで走ってこられても迎撃できないかも………」  車のドアガラスが砕かれた、どうやら防弾ガラスだったらしい。  「こりゃやばいな………」  そう思った時、状況が変わる。  敵が巨大な爆発に巻き込まれたのだ。  『無事〜?』  この少しだけポケポケした声と僅かに漏れてくる音楽、そしてこの行動の無茶さからすると一人しかいない。  油断無く影から出ると、そこには十人近い人間が爆発に巻き込まれて倒れている、一種の地獄絵図が展開していた。  「無事だぞ!」  大声で見慣れたACに返す。  炎が照り帰って多少赤く染まって見えるが彼の妹のACだった。  「無事って………脚にケガしてるじゃない!」  慌ててコックピットを空けて出てこようとする。  「馬鹿!まだ開けるな!」  「え?」  慌ててコックピットの陰に隠れると予想通り銃弾がコックピットに飛んでいく。  脚の怪我を忘れる程の勢いで走り出し、迂闊に物陰から乗り出して乱射している男に向けて銃を放つ。  一撃で心臓を撃ち抜かれた男はマシンガンを乱射しながら倒れ、やがて止まった。  「だ、大丈夫?」  「………あんまり」  出血が止まり始めた脚に開いた穴から再び血が流れてくる。  「とりあえず、ガレージで急いで応急処置を!」  ノアをACの腕で軽く掴むと、逆の手に乗せ、ブーストを噴かす。  どうやら別のビルの裏を通って気付かれないように通ってきたらしい、が、そのコースを無視してビルを飛び越える。  「馬鹿野郎!」  『え………あ!』  慌てて空中でブーストを噴かし、落下速度を緩めてゆっくりと降りる。  「お前、本末転倒って言葉知ってるか?手当てする前に余計に怪我させてどうする!」  『ご、ごめんなさ〜い』  少々怒った振りをしたが、まあこの妹なら良いかと思ってしまうのが次男故の甘さかも知れないな、  そんなことを考えつつ、二人はガレージへと入っていった。  「はい、これで大丈夫」  サバイバルキットで丁寧に脚に包帯を巻く、こういう作業に手慣れたカリナがすぐに済ませてくれた。  「で、これからどうするんだ?」  「とりあえず、情報を聞くのが優先だろう」  そう言って倒れた男を指さした。
第4話 完

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