ガレージシャンソン歌手
山田晃士の
『嗚呼、泥沼回顧録』 其の九拾七 〜絶唱あるのみ〜
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布施明が好きだ。
特に『シクラメンのかほり』以前の作品が大好きだ。 小学五年ガレージシャンソン歌手の愛唱歌は『愛は不死鳥』であった。 意味も分からぬままに ♪あいは、あ、あ〜、ふ〜しちょお〜う〜♪ と変声期前の歌声を御近所様に披露していた。 晃士少年の心を魅了したモノ、それは初期の布施明のヴォーカルスタイルである。 デヴュー当時の布施明の唄は“絶唱”と呼ばれており、一曲終わる毎に倒れてしまうんじゃなかろうか、そんな歌唱法であった。 まさしく魂全開、喉も全開、振り絞る唄声に晃士少年の琴線は震えまくったのである。 幼い頃からドラマチックな表現に弱い私であった。 さて、昨今巷に流れている様々な音楽。 ヴォーカルスタイルも多岐に渡り、その時々の流行が存在する。 近頃ではファルセットを多用し、狭い口腔で共鳴させ、近鳴りする声、といった所か。 それに引き換え私の歌唱法は ●ビブラート深め ●巻き舌 ●低音 ●野太い ●遠鳴り この様なスタイルはきっと時代錯誤も甚だしいのであろう。 だがしかし私は一向に構わない。 イタリアオペラよりもドイツオペラが好きだし、スキニ―よりもベルボトムが好きだ。 こういう唄い方が好きだし気持ち良いし格好が良い。 自分を曲げてまで流行に迎合する気はさらさら無い。 時代は螺旋階段の如く廻っている。 運が良ければ時代との幸福な邂逅が訪れる、それだけの事だ。 “絶唱”に更なる磨きをかけようと思う。 『愛は不死鳥』レパートリーに加えようかな。 とうの昔に変声期後なんだけどね…。 |
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