ガレージシャンソン歌手 山田晃士の
『嗚呼、泥沼回顧録』
其の拾弐
〜予習不足〜




二十五年前。
私がその青春を捧げたハードロックバンド『AROUGE』。
練習場所は道玄坂にあるYAMAHA渋谷店であった。
大体週二回位のペースで学校の放課後に練習。
終わる頃にはお腹ペコペコである。
帰り道、よくメンバーで腹ごしらえに寄ったものだ。
吉野家で牛丼を食べていた時の事。
無口そうなオヤジが入って来た。
店員「御注文は何に致しましょう?」
オヤジ「牛丼…。」
店員「並盛ですか大盛ですか?」
オヤジ 「牛丼…。」
店員「並でよろいですか?」
オヤジ「牛…。」
しばらくバンド内では
「御注文は」「牛丼」が挨拶となった。
ケンタッキーでフライドチキンを食べていた時の事。
挙動不審なジジイがヨタヨタと入って来た。
店員「御注文は何に致しましょう?」
ジジイ「鳥…。」
店員「何ピース差し上げましょう?」
ジジイ「トリ…。」
店員「1ピースでよろしいでしょうか?」
ジジイ「サ、サカナ…白身魚……アジ…アジ」
何処から海に向かったのだろうか?
しばらくバンド内では
「御注文は」「トリ サカナ アジ」が挨拶となった。
 
ところで今私はスターバックスで上手にオーダー出来ない。
何事も予習が必要という訳か。
 
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