ガレージシャンソン歌手
山田晃士の
『嗚呼、泥沼回顧録』 其の九拾壱 〜ジューサーバー〜
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写真:加藤仁史
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JR渋谷駅改札内のジューススタンド。
最近よく利用している。 ジューサーで絞った生ジュースの店。 バナナジュース、パインジュース、メロンジュース…etc。 どれもシンプルで美味しい。 飲み干せば何だか懐かしい気持ちになる。 昔はこういったジューサーでジュースを売っている店がどこにでもあった。 私が中学・高校と七年間通った桜木町駅。 学校帰りに駅構内のスタンドで飲んだオレンジジュース。 美味しかったなあ…。 一緒にアメリカンドッグも食べた。 ゆで卵に衣をつけて揚げてあるタマゴドッグも大好きだった。 ほとんど毎日寄っていたのでお店のおばちゃんと仲良しになった。 ある日の事。 「お兄ちゃん、これ新発売しようと思うんだけど食べてみて。」 タマゴドッグに続くその店のオリジナルで、メンチに衣をつけて揚げたモノ。 「うん、おいしいです!」 次の日からアメリカンドッグ、タマゴドッグと並んでバーグドッグがケースに並び始めた。 ただ値段が高かった。 アメリカンドッグが100円、タマゴドッグが90円、バーグドッグは120円だった。 学校帰りに立ち寄るといつもバーグドッグが売れ残っていた。 本当は私はタマゴドッグが食べたかったりしたのだが、バーグドッグを頼んだ。 責任を感じていたのだ。 オレンジジュースを飲み干した。 やがてバーグドッグは姿を消した。 私は何だか気まずくなってそのスタンドに立ち寄らなくなった。 今や桜木町駅はみなとみらいの玄関口、華やかな駅である。 あの頃のうら淋しい面影は微塵も無い。 もちろんあのスタンドもとうの昔に消えた。 “あのオレンジジュースが飲みたいなあ…。” 渋谷のジューサーバーでそんな事を思い浮かべている。 |
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