ガレージシャンソン歌手 山田晃士の
『嗚呼、泥沼回顧録』
其の
〜愛の囚われ人〜





公演後、私はもぬけの殻と化して帰宅。ドアを開けれ ば愛猫ベラミー〈♀雑種0歳7ヶ月〉が深夜にも関わらずお出迎え。

家に居る時はのべつ幕無し私の傍から離れようとしないベラミー。踏んづけてしまわぬ様、気を付けなければならない程に。シャワーから出ると必ず脱衣所で 待っているのだから可愛い。

さて、私は自他共に認める無類の猫好きである。去年の夏に天に召されたMARIEは“もしかしたら連れて行かれるんじゃないか”と思う程、私に御執心〈猫 莫迦承知〉であったが、ベラミーの振る舞いはそれを凌駕している。猫のくせに私に依存〈猫莫迦炸裂〉しているのだ。

ベラミーは生まれつきの鼻炎持ちで、そのせいなのだろうか、猫特有の喜んでノドを鳴らすその音がヒジョ〜に大きい。

“グルグルグル ゴロゴロゴロ…” 

眠る時は私の顔にピッタリくっついてその音を発するので、聴覚上爆音となる。眠れたもんじゃない。その上くしゃみを連発して鼻水のシャワーを私に振りかけ る事もしばしば。
 
ようやく眠りについたのも束の間、日の出〈早朝5時〉と共に彼女はギターを弾き始める。器用にも6弦を歯に引っ掛け、引っ張り、弾くのだ。

“ビィィーン…”

開放弦Eの低音が私の浅い眠りを妨げる。

床から這い出し朝ゴハンを与える迄、およそ10秒おきのスヌーズ機能で、Eのアラームが鳴り止む事はない。何度でも何度でも繰り返されるのだ。

そして満腹になった彼女は再び私の枕元にやって来て“グルグルグル ゴロゴロゴロ ックション!”を繰り返す。

二度寝の私の夢を破るのである。

ベラミーの私への愛が深まれば深まる程、私は夢現に陥り、白日夢に悩まされる。

もはや私は愛の囚われ人なのかもしれない。



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