ガレージシャンソン歌手 山田晃士の
『嗚呼、泥沼回顧録』
其の七拾八
目から鱗





大道芸イベントに行って来た。
いくつもの会場で様々な大道芸人達がその技を競い合う。
全体的な傾向としては、
大道芸本来が持っている退廃的な匂い、うら寂しい雰囲気は鳴りを潜め、
サーカス同様、イリュージョン&エンタテイメントな方向に向かっている感がある。
アングラ世界を求めて行くといささか拍子抜け。
まあ、何に関しても敷居が低くなっている昨今、
広くゆきわたっていく事は決して悪い事じゃないけどね…。
私も芸人のはしくれ、大いに勉強になった。刺激を受けた。
缶ビールを呑みながら、拍手、笑い、驚き、投げ銭。
会場を転々とする。嗚呼、愉快愉快。
中でも私が心強く惹かれたのは、女性1人ののパントマイム。
人形を使って男女の愛劇をコミカルに、ブラックに、エロに繰り広げる独り舞台で、
彼女に関してはデカダンな匂いプンプンだった。
舞台が終わると
”気に入ってくれた方は帽子の中にお心遣いをよろしくお願いします”と非常に謙虚。
観客に丁寧に挨拶。
そして様々な小道具を片付け、舞台上を整理し、次の出番に備え裏で休憩に入る。
芸人の基本を垣間見た。
私も常々、アーチスト気取りなんてモノは糞喰らえ、
如何に酒場で驕ってもらえる唄をうたうのか、という考えをしているつもりだが、
知らず知らずの内にどこか気取っているのかもしれないなあ。
彼女は舞台人として簡潔に完結していた。
自分1人のチカラとしての技を披露し、それに対して御褒美を頂く。
この基本姿勢を忘れてはならない。目から鱗が落ちました。
ギター片手に今一度芸人魂を磨きたい。
そんな気分であります。
 
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