ガレージシャンソン歌手 山田晃士の
『嗚呼、泥沼回顧録』
其の六拾七
〜味わい深く




写真:加藤仁史

遊園地。
門をくぐればそこは夢の国。
日常から非日常へと、
少年の私の胸は高鳴るのでありました。
”好きな女の子と遊園地でデートする”
これ以上のシアワセがあると言うのでしょうか。
多摩川園・としま園・花やしき・ドリームランド…
まだディズニーランドがなかった頃の、
淡く切なく、ちょっぴり物哀しい思い出。

ループもスクリューも無いジェットコースターで手に汗握り、
見せ物小屋みたいなお化け屋敷で悲鳴を上げ、
塗装の剥げたコーヒーカップで目を廻し、
軋んだ音のする回転木馬に揺られて…。

今思えば”郷愁”こそが
遊園地の最大の魅力だったと思う今日この頃。

昨今、遊園地に限らず娯楽は
映画にしても音楽にしても
より強烈な、より過激な”刺激”を追い求め
そのインパクトといったら凄まじい。
一体何処まで行くのやら。
麻薬と一緒だぜ。
効き目がなくなるぜ。

私は”味わい深く”唄いたい。
より強烈に、より過激にな。


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