ガレージシャンソン歌手 山田晃士の
『嗚呼、泥沼回顧録』
其の六拾六
〜江ノ島旅情〜




写真:加藤仁史

柄じゃないのだが無性に海が見たくなった。
江ノ島でも行くか。
横浜在住の私にとって江ノ島はお気軽リゾート。
幼い頃は家族で、中高生の頃は好きな女の子と、
車の免許をとってからはドライブで、と思い出も多い。
江ノ島独特の何とも言えぬノスタルジックな雰囲気が好きだ。
いくつか新しいスポットが出来たり、
遊歩道が整備されたりしたけれど、時代は止まったまま。
江ノ島は変わらない。
”エスカー”を乗り継ぎ島中央へ。
ちなみに”エスカー”とは単なるエスカレーターの事。
これが結構なお値段を取られる。
エスカー終点からは石段を昇り降りして先端の岩場へと。
その道すがら食堂に立ち寄りちょっと休憩。
ビールと焼きはまぐりを食す。嗚呼、至福なり。
幾つかの鄙びた民宿もある。
お客さん来るのかなあ? 泊まってみたいなあ…。
興味津々。
江ノ島の野良猫達はみんな丸々と太っており、
悲壮さの欠片もない。自由気侭で幸せそうだ。
岩場でごろんごろんとひっくりかえる三毛猫を発見。
30分眺めた。猫になりたいぜ…。
ガレージシャンソン歌手は何処へやら。
ちょっとしたきっかけで、名前も変えて、過去も捨てて、
民宿で住み込みで働いている自分を妄想してみたりする。
アブナイ、アブナイ。
さあ帰らなくちゃ。
下りはエスカーないんだよな…。

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