ガレージシャンソン歌手 山田晃士の
『嗚呼、泥沼回顧録』
其の六拾五
〜泥まみれ 雪まみれ





弥生の上旬、75歳になる父と長野県は戸隠に行って参りました。
柄にも無くスキーなんぞやってみたりして、
侮るなかれ、私の華麗なる”パワースキー”を。
頂上から直滑降&ボーゲンで一気に滑り降りるその不様さは、
舞台上でSHOUTする私と寸分変わらぬ佇まい。
不可能を”力技”でねじふせるのが私の美学。
むむぅ、燃費悪い…。
”泥まみれ”ならぬ”雪まみれ”の生き様を晒したのでありました。
水入らずでペアリフトに乗った気まずい親子。
到着する迄の数分間、会話は一切無し。
しかも戸隠スキー場にはBGMが流れておらず、
恐ろしい迄の静けさがふたりを包み込むのでありました。
雪山景色が厳めしかった…。
そしてもう一つの愉しみは蕎麦。
これがビックリする位旨かった。
天ぷらを齧り、日本酒を舐め、蕎麦をすする。
嗚呼、まさに至福の時。
何もかも親父の世話になりました。
スキーは指導員並みの腕前、よく食べ、よく呑み、一切を仕切る。
まるで年齢を感じさせない親父との旅を通し、
自分の愚かさを切実に感じている春の始まりなのであります。

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