ガレージシャンソン歌手山田晃士の
『嗚呼、泥沼回顧録』
其の伍拾伍

〜駅前交番の旦那



5・6年前まで、私は港北ニュータウンという街に暮らしていた。
最寄りの駅は横浜市営地下鉄の仲町台駅。
その駅前交番の警官がどうにもならなかった。
その日私は銀行のキャッシュサービスを利用する為、
駅前ロータリーに車を停車、2、3分で戻った。
するとワイパーには出頭を命ずる用紙が。
あちゃ〜、 確かに駐車違反ではある。交番に行ってみた。
「すみません、お金を卸しに一時的に車を停めてしまいました。」
「おたくねえ、もう40分以上停めているんだよ。」
「いやいや御冗談を。ほんの2、3分だったんですが…。」
「嘘をつくな!切符は切るから。」
警官は切符を切り始めた。
「ちょっと待って下さいな。確かに非は認めますが、
40分は言い過ぎですよ、旦那。」
「今日は駅前の違反車を全部取り締まってるんだよ。
どの車もチョーク引いてチェックしてあるから間違いないんだ。
嘘ついたってわかるんだよ!何ならお宅の車一緒に見に行こうか。」
「嘘はついていないので一緒に確認しましょう。」
勿論私の車はチョークなど引かれていなかった。
私は言った。「嘘言わないで下さいな。」
旦那は言った。「私だって嘘をついた訳じゃないんだ!」
…意味分からん…。
翌週駅前で財布を落としてしまった。
気が進まなかったが交番へ届けに行った。
ところが警官の姿はない。いくら待てども戻ってこない。
仕方がないので交番の電話から近くの警察署へ連絡してみた。
すると
「ああ、仲町台駅前ね。自転車あるでしょう。
きっとね奥で寝てるからドアを叩いてみてもらえませんか。」
ドン!ドン!ドン!するとどうでしょう。
奥の部屋から寝ぼけ眼の不機嫌そうな例の旦那が御登場。
「ん〜、何ィ財布落としたァ。」
面倒臭そうに欠伸しながら紛失届けの書類を製作して下さった。
財布は絶対に出て来ないであろうと悟った。
当時神奈川県警は諸々の不祥事で世論から叩かれていたにも関わらず。
旦那は国家権力を持っているのだ。くわばらくわばら。


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