ガレージシャンソン歌手山田晃士の
『嗚呼、泥沼回顧録』
其の四拾六

〜リバーサイドステーション



私はパスネット愛用者だ。

いつも五千円のカードを購入している。
一円もおトクじゃないのはどうかと思うのだが
やはり便利さは否めない。
先日新しいパスネットを購入しようと
東横線多摩川駅の自販機に千円札五枚を投入。
すると一枚だけ戻って来てしまった。
何度入れ直しても戻って来る。しょうがないなあ。
始めからやり直そうと思い”とりけしボタン”を押し た。
ありゃ?お札は一枚も戻って来ない。
それなのに”紙幣をお取り下さい”との表示。
自販機がピー!ピー!と鳴り始めた。
今度は”よびだしボタン”を押す。待てど暮らせど駅員 の応答は無い。
「すみませ〜ん!」とKEEP ON SHOUT。
十分後ようやく駅員が登場。怒りを抑え事情を説明す る。
駅員は「お札が詰まった形跡は無い、機械的にはちゃん とお金は戻っている、な
ので四千円は返せない」との事。
まいった。これじゃ詐欺だ。
いくら話しても埓があかないので警察を呼んだ。
おまわりさん四人登場。大事になって来たぞ。
警察の介入により駅側は掌返した様に対応が変わった。
”朝からの自販機の売り上げと中の金額を計算しますか ら...。”
”どの位時間がかかりますか?”
”......急ぎます......”
”こう見えても私あまり暇じゃないんですよ...。”
先は長そうだったので連絡先を伝えてその場を後にし た。
結局お金が詰まっていたという事が判明し、後日現金書 留で四千円が送られて来た。
中には取って付けた様な詫状とカードが一枚。

お詫びの印はパスネット五百円分。
カードの上でサザエさん一家が笑っていた...。



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