ガレージシャンソン歌手山田晃士の
『嗚呼、泥沼回顧録』
其の四拾五

〜このまま履いていきます〜



ガレージシャンソンショーレコ発ツアー”ふたり旅二〇〇五『狂歌全集』”も無
事終了!
お集り頂いた紳士淑女の皆様方、感謝感激。西日本〜九州にかけて寝苦
しい夜を更に寝苦しく、
不快指数上昇の宴を繰り広げて参りました。夢見る
ぞ...!
さてその初日の事、リハーサルと本番の合間に靴を衝動 買いしてしまった私は
このまま履いていきます”とそれまで履いていた靴 の処分を店員に依頼。
新しい
靴の軽やかな履き心地に”こりゃあいい旅にな りそうだ”と勇み足になりながらも、
歩を進めるにつれだんだんと後ろ髪引かれてきたのでありました。
私をいろ
んな所に連れて行ってくれたあの靴、私をい ろんな人に逢わせてくれたあの靴、
それをいとも容易く破棄してしまう己の非情さ...。
時既に遅く、本番の時間も
近づき、私の足跡はこの世 から消滅していったのでありました。
その夜はセンチ
メンタリズムが爆発。
切ない曲は更に切なく、儚い曲は更に儚い表現となったの
でございます。
アキレス腱を切断した時のギブスを三十五年間捨てられずにいた
母の血が、確実に私に流れている事を実感。
いつの日か私はそんな甘っちょろい
感傷主義を脱ぎ捨 て、新しいパンツを買った際には
”このまま履いていきます”
とそれまで履いていた下 着の処分を堂々と店員に依頼出来る、
そんな逞しい大人
の男になれたらと願っています。
御機嫌よう。


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