ガレージシャンソン歌手山田晃士の
『嗚呼、泥沼回顧録』
其の四拾四

〜治療は愉し



前回お伝えした通り右足靱帯負傷という アクシデントに見舞われた私は
整骨院通いの日々を送っている。
この梅雨空の下、足を引き摺りながらトボトボト ボ...。
だがしかしこれが中々愉しい。
整骨院って快適なんだ。癒されちゃうんだ。
右足に電気を流してもらったり、マッサージしてもらっ たりしていると
うつらうつらと眠くなって来る。ポポポヤ〜ン...。
いろんな事がどうでもよくなってくる。
”このままどっか消えちゃおうかな”蒸発三代目の血が 騒ぎ出す。
ある時”失踪するなら東北の鄙びた温泉地がいいなあ、 名前は何て名乗ろうかな...”
などと愉しい空想に耽っていると、何処からともなくインド音楽が聴こ
えてくるではないか。
患者は私一人。”このBGMは先生の趣味ですか?”と 尋ねてみた所
”はい、私インドが大好きなんですよ”との返事。
二年近くもアジア〜インドを放浪していた過去をお持ち で、
おそらく私と同世代、役所広司似のハンサムさん。
”よく戻って来ましたねえ”
”ええ、まあ一応”
”良かったですねえ、真人間として社会復帰出来て”
”そうですよねえ”
こんな素敵な整骨院だったから居心地が良かったんだ な。
休日はタブラを叩いたりハーモニウムを弾いたりして過 ごすとの事。
しかも青春時代はメタルの洗礼を受けていた事が判明。
正しく私が行くべき病院であった。
時々遠い目をしている先生。
どうか私の右足が完治するまでドリフトアウェイしない で下さいね。


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