ガレージシャンソン歌手山田晃士の
『嗚呼、泥沼回顧録』
其の参拾

〜官能小説のススメ



紳士淑女の皆様、五月の病のお加減は如何であろうか?
無気力の坂を転げ落ち、もぬけの殻と成り果てぬ様御注意を。
う〜ん、それにしても眠い、眠いなあ...。
いかんともしがたい睡魔を退治するには
やはり”エロ”のチカラを借りるのが一番。
”エロ”の前では寝ぼけ眼もギンギンに冴え渡る。
さて高校時代、現国の授業は格好の爆睡タイムであった。
クラスの1/3は涎をたらしていた。
そんなある日の事、
クラス一のロマンティスト”タミー”が
教科書の片隅に官能小説『和男の性春』を執筆。
回し読みが始まった。
これが中々の出来で、例えば
”ふくよかな乳房を揉みしだく”だとか
”痛い程にそそり立った陰部””舌の上で踊る喘ぎ声”等々
文学的表現が見事であった。
さすが現国の授業中だけの事はある。人気爆発。
クラスメート達の熱きラブコールを受け連載がスタート。
現国の授業は爆睡タイムから興奮タイムへと一転した。
一番大変だったのは作家タミーである。
週イチの〆きりに追われ産みの苦しみと戦う日々。
「最近つまんねーぞ」などとほざく輩も出てくる始末。
その日はストーリーが山場を迎えており、誰もが我れ先に読みたがっていた。
タミーの教科書を奪い合う読者達。
と、勢い余って教科書が教壇の方へ飛んでしまった。
拾い上げたのはフェミニンなインテリ女教師。
瞬く間に鬼の形相となり「一体誰が書いたの!!!」......。
結果タミーは教員会議にかけられ停学処分となってしまった。
停学明けに後輩から
「センパ〜イ、何で停学くらったんですか?」
と聞かれた所で
「ケンカだよ」「タバコだよ」と言えれば格好がつくが、
タミーの場合は変態行為により停学である。
その後奴は無口になり、
一人孤独に黙々と『和男の性春』を書き上げたそうだ。
だがしかし読んだ者は一人も居ない。
おそらく傑作に間違い無い。残念だ。


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