ガレージシャンソン歌手山田晃士の
『嗚呼、泥沼回顧録』
其の弐拾九

〜”分かち合う””奪い合う”


新学 期、新年度。新しい環境には慣れたであろうか?
”初めまして”が徐々に”こんなもんだ”に変わってゆく頃、
友情や愛情が芽生えはじめる。
片意地はらずに己を曝け出そうぜ、皆の衆。

ところ で私は高校の入学式を二回経験している。
十六歳の春、私はひとつ年下のクラスメート達に囲まれ気まずい毎日を送っていた。
そんなある日、ホームルームで学級委員を決める事になった。立候補者も無く推薦形式となった。
するとどうだろう、唐突にとある女生徒<名前すら知らない>が
「山田晃士君がいいと思います!彼は私達よりひとつ年上なので、その分人生経験も豊富なはずです。
そしてなによりもこの学校の事を私達より知っているからで〜す。」
などとぬかしやがった。
私は心の中で叫んだ。
「お前に俺の何が分かると言うのだ!」
あの日の事は忘れない...。

それか ら随分と時は過ぎ、私は幾つもの恋愛を経験した。
愛が破滅し、恋人が私の元を去ってゆく時、彼女達は決まってこう言った。
「あなたにわたしの何が分かると言うの...。」

分かち 合えるモノを見つけるのは決して容易くはない。
では、御機嫌よう。

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