ガレージシャンソン歌手山田晃士の
『嗚呼、泥沼回顧録』
其の壱拾参

煙突の無い街に聖者はやって来るのか?
猫も杓子もメリークリスマス!!
トナカイとカンガルーの区別もつかないサンタクロースよ、一夜限りのにわかクリスチャンよ、
聖歌隊もどきのエキストラよ、”上へ参ります、下へ参ります”即席アバンチュールで街中が大揺れだ。
もはやmake love禁止!make loveはエイプリルフールまでおあずけだ。

忘れもしない、あれは確か二十四歳のクリスマスイヴ。
愛が破滅したばかりの私はもぬけの殻同然であった。
一人部屋にこもり、死んだ魚の目でやけ焼酎を呷っていた。
BGMはブラックサバス。今夜は黒ミサである。頼んだぞ、黒井ミサ、エコエコアザラク・エコエコザメラク...。
私をふった彼女は、今頃山下達郎でも聞きながら誰かと...う、う、ううう...え〜い!
ラーメンでも喰いに行ったるかい!という訳で近くの『鬼っ子ラーメン』へGO!
きらびやかなイヴの夜を横目に、いや〜いるわいるわ、
ラーメン屋のカウンターにはクリスマスなんてまるで関係ないクールな男達が。
ジャージの上下で決めてる奴、素足にサンダルの常夏野郎、メガネも曇る太っちょ汗っかき、
そして魂の抜け殻と化した私。
店内に流れるAMラジオが胸にしみる。
待つ事10分、
「へい!お待ち!」
見るといつもよりチャーシューが多めにのっている。

「うちからのプレゼントです!メリークリスマス!

トホホ...。

今年のサンタクロースはエプロンにねじりはちまきをしていた。
街に聖者はやって来たのである。
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