ガレージシャンソン歌手 山田晃士の
『嗚呼、泥沼回顧録』
其の壱百壱拾四
〜悔しさは泡となって消えた〜


その日はやらねばならない事柄に追われ、日がな一日奔走していた。
不慣れな場所で、不慣れな人達と会話し、変な汗をかいた。
実は割と人見知りしてしまうガレージシャンソン歌手。
帰路に着いたのは23時。はっきりいってヘトヘトだった。ぐったりだ。
家の最寄り駅に到着。ビール買って帰ろう。
駅に隣接している深夜営業のスーパーマーケットで買い物。
いつもと違う銘柄のビールが呑みたくなり、目に着いた白い缶の500ml6缶パック&おつまみを少々。
レジ袋をぶら下げ、本日最後のチカラを振り絞り、坂道を登り降りして帰宅した。
お腹をすかせた猫達がお出迎え、カリカリを与える。
そして風呂にゆっくり浸かる。はぁ〜、生き返るなあ・・・。
風呂から上がり、髪を乾かし、おつまみを並べ、さあ!お待ちかねの時間だ。
良く冷えたビールをグラスに注ぐ。至福の一時である。
グッと一気に飲み干す。・・・ん!?・・・、何だコレ?何か変だぞ、大事なモノが足りない気がするぜ。
缶を手に取りよ〜く見てみると、そこには“ノンアルコール”の文字が!
ショック!!!!!!
愕然とした。一気に力が抜けた。私とした事が・・・。しかも500ml6缶パックである。
期待が一瞬で失望へ変わった。でも私はへこたれない。
そうだ!ホッピーにすればよかろう、と焼酎をノンアルコールビールで割ってみた。
成程、ホッピーっぽいね。でも私が望んでいたものとは明らかに違うね。
気持ちは誤魔化せなかった。目移りしたのが失敗だったのだ。いつもどおりサッポロ黒ラベルにしておけばよかったのだ。様式美が大切だったのだ。ディープ パープル。
次の日、残りのノンアルコールビールを全部飲み干した。
悔しさはオシッコの泡となって消えた。

<<back
next>>