ガレージシャンソン歌手 山田晃士の
『嗚呼、泥沼回顧録』
其の壱百壱拾弐
〜懐かしさの距離〜


只今『山田晃士&流浪の朝謡』の1stアルバムレコーディング真只中。
我々の“業”がカタチになってゆく様は愉しい。これは音楽家にしか味わえない喜びの一つだと思う。
そのリズム録音(主にドラムとベースを録音する作業、云わば土台作り)で訪れた永福のPOWER HOUSE STUDIO。はからずも泥沼楽団『びらん』の時と同じスタジオであった。
初日、車を停めて楽器を搬入する。地下のスタジオへ降りてゆく。目に飛び込んでくる景色に記憶の蓋が開き始める。嗚呼、懐かしや…。スタジオも、コンソー ルルームも、ロビーも、あの時と同じだ。変わらない。蘇るなあ…あの日々が。はて、あの日々っていつの事だったっけ?え〜と『びらん』を出したのは……?
えぇ、2003年!? もう、8年も経つのか。驚いた、せいぜい2〜3年な気でいたのだが。
偶然にもレコーディングエンジニアはあの時と同じ石川達也さん、メンバーもロジャーとナベさんは一緒だからなのかもしれないが、8年も時間が過ぎた事実に 本当に全員が驚いてしまった。
一昔と言ってもいい事柄が、手の届く距離で懐かしいのだ。
おそらく“懐かしい”という感覚そのものが変わって来たのだと思う。
例えば年1回のペースで唄いに行く舞台では“懐かしい”という感情は起こらない。
“また来ましたよ、今日もよろしく”といった気分になる。2、3年振りでもきっとそうだろう。
確実に自分にとっての時の流れの速さが変わってしまったのだ。
そしてそれはますます早くなってゆくに違いない。
ぼやぼやしてたらヤバイ。お迎えがやって来る。時の流れに身を任せているバヤイではないのだ。
『山田晃士&流浪の朝謡』として最高の1stアルバムを創り上げたら、それを引っ提げて旅に出よう。
ひとつひとつの舞台で完全燃焼!情熱を滾らせ己を曝け出す。出し切る。そんな所存でおります。
勿論メンバー一同、駄目な大人と重々承知の上で、な。

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