ガレージシャンソン歌手 山田晃士の
『嗚呼、泥沼回顧録』
其の壱百壱拾壱
〜夜のしじまに〜

温泉が好きだ。
3年前には湯治宿に1週間ほど滞在した事もある。
あれは最高だった。もう、社会復帰出来ないと思った。あぶなかったよ…。

正月は7日から旅巡業。その前に是が非でも温泉に行かねば!と半ば強引に空白の2日間をでっち上げ、塩原へ行って来た。“一泊二食5300円、横浜駅出発 の往復バス運賃600円”というどびっくり!な広告を発見。まあ“安かろう悪かろう”を覚悟の上出かけてみた。

到着すれば、かなり古そうな温泉観光ホテル。昭和の佇まいだ。
聞けばこのツアーを企画しているグループは倒産したホテルを買い取り、手直しして激安の宿として各地で営業しているとの事。ビリヤード無料。卓球無料。社 交ダンススタジオで盛り上がるジジババ。食事はバイキング。絵に描いた様なテレビ東京の世界だ。嬉しいのは一泊二食5300円→5500円支払うと (200円プラスするだけ)、夕食時に飲み放題となるシステム。生ビールは単品580円だから、もう、何と言いますか、意味分からんシステム。勿論、呑ん だくれましたとも。
何の問題も無い。基本的には愛想がない。でもその放っておかれる感じがとても良かった。高級旅館じゃあるまいし。いいお湯とのんびりした時間を求めるだけ ならば充分。良い正月になった。

そして翌日から弾き語り旅巡業へと。5連チャン。唄と酒の日々。連日安宿泊まりである。
旅の最終日、男ばかりで4人部屋に泊まった時、真夜中過ぎに目が覚めてしまった。
8畳間に唄うたい達の寝息がこだまする。
“塩原のホテルは最高級ホテルだったんだなぁ…”
夜のしじまにしみじみとする夜であった。

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