ガレージシャンソン歌手
山田晃士の
『嗚呼、泥沼回顧録』 其の壱百四 〜若いって素晴らしい〜
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中学一年生の夏休み、右の腹が痛くなった。 親父が「盲腸かもしれない。俺の友人の外科病院へいくぞ。」と1000ccBMWの大型二輪の後ろに私を乗せ、病院へGO!エンジン全開。振動が右腹に響 く。うう…いたいよう。 血液検査の結果「こりゃ、盲腸だね。」と診断される。 「早速、切っちまおう。尚典(親父の名)、入院するから晃士君のパジャマやら、洗面用具やら取って来て」“ええ〜、手術ぅ〜。聞いてないよ。こわいよ う。”と心の中で叫ぶも、病院へ来てから僅か30分後には手術室の前にスタンバイしていた。 キレイな看護婦さんに下腹部を剃毛される。赤面。 脊髄麻酔。これが激痛!まるでぶっとい杭を腰に打ち込まれているかの様だ。 “なんだこの展開の早さは。気持ちがついていかないぜ。普通、手術って前日から食事抜いたりするんじゃないのかな…。” 局部麻酔が効いてくる。右半身の下半身が痺れて来る。 先生は「おい尚典、手術見るか。」と親父を誘って手術開始。 「これが盲腸。」「うへえ、気持ち悪いな。」なんて喋りながらの執刀。 私は手術室の時計を見ていた。およそ5分で手術終了。 「腸がちょっと動いたから気持ち悪くなるかもしれないよ。」案の定気持ち悪くなった。薬をもらって眠った。傷は麻酔が切れても動かなければ大して痛くはな かった。次の日の朝にはオナラが出た。3日目には抜糸、そして退院。 「キャンプぅ?まあ、激しく動かなければ大丈夫かな。」と先生が言ってくれたので、4日目から 音楽学校のキャンプに出掛けた。キャンプファイヤーで踊り、ドッヂボールで遊んだ。激しく動いた。キャンプでの私の名前は“盲腸君”であった。盲腸君は大 いにはしゃいだ。 13歳の夏の出来事。 若いって素晴らしい。 |
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