ガレージシャンソン歌手 山田晃士の
『嗚呼、泥沼回顧録』
其の壱百弐
〜営業の魂




私にとって最高の癒しを得られる場所、万座温泉に行って来た。
二年前、丸一週間、湯治宿にこもって以来の万座。
万座の最古の温泉、日進館の“苦湯“に浸かれば感動すら覚える。
 
さてその日進館であるが、毎晩八時から九時までの一時間、ロビーにてフロアーショーなる催し が開かれている。これがとにかく凄い。『メルシー兄弟と従姉』に匹敵する、いやそれ以上に濃い 世界なのだ。
 
日替わりで様々なジャンルの出演者達がショーを繰り広げる。
命・愛・平和のメッセンジャーであるシンガーソングライター・泉堅、
日本初の親子デュオ・山田龍二&大輔、
手話を取り入れたムード歌謡・花井紫、 
山田が以前『おきらくシアター』で御一緒した事のある腹話術師・マルセまゆみさん、
等々プロフェッショナルな芸人さん達が目白押しである。
 
ロビーは浴衣姿のおじいちゃん、おばあちゃんで満席。バラの花は一本500円で“おひねり“と して売られている。これがバンバン売れる。常連客のおばあちゃんが、突如、前衛的な創作舞踊 を始めたりもする。曲に合っていないが力強い手拍子。まさに“カオス”である。出演者側も握 手、デュエット、問いかけ、等々コミュニケーションを忘れない。そう、ここには“営業の魂” が溢れているのだ。これぞプロである。
 
先日私が行った時にはQ.T.Honey(キューティーハニー)なる女性アカペラグループが出演してい た。お綺麗なお若いおねいさん達。日進館フロアーショーにはちょっと場違いかな?と思いきや そこは営業のプロ。“アカペラって初めて聞いたお客様、どれ位いらっしゃいますかぁ?”握手や ジョークを交えながら、あれよあれよとおじいちゃん、おばあちゃんを惹きつけてゆく。アカペ ラグループとしての実力もホンモノ。中でもボイスパーカッション担当のten-tenさんには驚い た。凄まじかった。人がやっているとは思えない。打楽器から風の音までものの見事に表現して いた。どびっくり。ファンになっちゃいました…。
 
改めて世の中にはツワモノがいるのだなあ…と思いながら浸かった苦湯は、骨の髄まで沁みたの でした。
 
今度営業に行ってみるか、『メルシー兄弟と従姉』で。


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