ガレージシャンソン歌手 山田晃士の
『嗚呼、泥沼回顧録』
其の壱百
〜本牧家




私が住んでいる横浜では『吉村家』を本家とする“家系”醤油 トンコツらーめんが有名。
今から25年前、実家の近くにある『本牧家』のらーめんを初めて食べた時の衝撃は忘れられな い。“旨い!”の一言に尽きる。その味にハマりまくり、20代前半の私は週1〜2のペースで『本牧家』へ通っていた。<現在の『本牧家』とは別の店>
 
その頃は所謂らーめんブームなんてなかったし、勿論“家系”なんてコトバもなかった。
らーめん400円。普通盛、中盛、大盛。チャ―シュウ増し、海苔増し、麺固め、味濃い目、脂 多め。ご飯を頼むとたくあんが2切れ乗ってくる。
ステンレスの厨房とカウンター席のみ。店員は上下、腹巻、長靴、ハチマキ、タオル、全て白。
客のほとんどがトラックの運転手。軟弱なバンドマンにはちょっと入りずらい雰囲気であった。
早朝5時開店、夕方4時閉店。私は夜更かしした後、開店時を目指して行くことが多かった。
開店時のスープの味が一番好きだったんだ。
 
やがてらーめんはブームとなり、次から次へと新しい店がオープンし、行列店も多し。ガイド本も沢山出版されている。味も多種多様。らーめんは本当に美味し くなったと思う。でも値段は高 いし、並んでまで食べる気が知れない。有名店の主はタレント扱い。B級グルメなのに評論家までいらっしゃる。やはりどんなジャンルでも、メジャーになって ゆく過程で、いろいろな誤解を孕んで大きくなってゆくのだな。
 
私が今まで食べたらーめんで一番美味しかったのは…
AROUGEの解散ライブの後、メンバー&スタッフで明け方まで呑んで、その後メンバーの家に機材を降ろしながら、最後に私の家へ着く手前で当時のマネー ジャーと『本牧家』に寄り、カウンターに並んで食べたらーめんである。
 
あの味を越えるらーめんは未だ無い。
 


 
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