『monochrome -the past generation-』


始まるも何も、もう全ては終わっている。

ただ時代の残り香が今に伝わるだけ。
あの、暗く苦しく恐怖に彩られ誰もが怯えていた時代はもう戻ってこないのだ。
暗く、けれど輝かしかったあの時代は。
ただ懐かしむことしかできないのだ。


違う。


少なくとも、まだ自分は生きている。
いなくなった彼らが残したものは確かにここにある。
正の遺産も負の遺産も、全て残っている。
時代は連なりであり、人は消えても血脈は続く。
もう終わったという言葉で、未来を放棄してはいけないのだろう。


けれどしばし。
しばし懐かしい時間に浸ってもよいだろうか。
思い出とすらまだ言うことの出来ない、鮮明な記憶のなかに。