「米百俵」国会における論戦。

 「米百俵」について国会で引用された際の議事録を国立国会図書館の国会会議録検索システムを利用して収集しました。

151回-参-本会議-21号 2001/05/07

○ 内閣総理大臣(小泉純一郎君)
 明治初期、厳しい窮乏の中にあった長岡藩に、救援のための米百俵が届けられました。米百俵は、当座をしのぐために使ったのでは数日でなくなってしまいます。しかし、当時の指導者は、百俵を将来の千俵、万俵として生かすため、あすの人づくりのための学校設立資金に使いました。その結果、設立された国漢学校は、後に多くの人材を育て上げることとなったのです。今の痛みに耐えてあすをよくしようという米百俵の精神こそ、改革を進めようとする今日の我々に必要ではないでしょうか。(拍手)


151回-衆-本会議-28号 2001/05/09

○ 鳩山由紀夫君(民主党・無所属クラブ)
 もし、あなたが自民党を変えようと本気で思っておられるのであるならば、まず、既得権を守るために立候補を予定している比例代表の候補者を見直すべきだと考えますが、いかがお考えですか。(拍手)
 あなたは、所信表明演説で、長岡藩に届けられた米百俵の話を紹介されました。しかし、よく考えてみれば、米百俵を将来への投資のために学校づくりなどに充てることなく、百俵どころか子供たちに借金まで背負わせて、千俵、万俵の米を食い続け、ついには日本そのものを食い物にしているのが自民党政治そのものではありませんか。(拍手)
 私たちは、資源も何もないこの我が国が世界の中で生きていくために、人への投資を徹底的に行うべきだと結党以来訴え続けてまいりました。しかし、そうした議論には一切耳を傾けず、全く利用されない港湾や自然を破壊するための林道開発など、まさに国民の米とも言える大事な税金をあなたの党は食い続けてきたのです。このことが、結果として六百六十六兆円という借金をつくり、我が国財政を破綻寸前まで追いやったのです。米百俵の教訓は、あなたの足元の自民党こそが胸に刻まなければならない教訓です。(拍手)

○ 内閣総理大臣(小泉純一郎君)
 自由民主党の比例代表の候補者の見直しについてのお尋ねがありました。  私は、候補者の選定に当たっては、今後、「聖域なき構造改革」、改革断行内閣、この趣旨と目的に沿った方々にぜひともたくさん出ていただきたい。そして、この我が党の、そして小泉内閣の政策を支持するという方々が、国民の支持も得られて、たくさん当選してくれたらいいなと思っております。
 そうすることによって、自由民主党が掲げたこの改革への意欲、また小泉内閣の掲げる政策の実現のため、すべて一致協力して実行に移していける方々にできるだけ立候補してもらうようにこれからも努力を続けていきたい、そういうふうに考えております。


151回-参-本会議-22号 2001/05/10

○ 勝木健司君(民主党・新緑風会)
 小泉総理は所信表明演説の最後に、明治初期の長岡藩の話をしておられますが、余りにも唐突であり、意味不明であります。単に、国民に我慢しろという趣旨なのか、教育は国家百年の計であるので教育を最優先しようという趣旨なのか、その真意をお尋ねいたしたいと思います。

○ 内閣総理大臣(小泉純一郎君)
 米百俵の明治初期の長岡の話をしているが、余りに唐突、意味不明であると思いますと。この御指摘は心外であります。残念であります。私は、あの米百俵の話、かなり前に聞いて感動しました。その感動を共有できないということはまことに残念であります。今の痛みに耐えてあすをよくしようとする、この精神こそどの時代においても私は必要な精神だと思います。こういう話を聞いて、唐突で意味不明であるという御理解をいただいたということは残念でありますが、よく読んでいただきまして、本当にこの米百俵の精神は、どの時代においても老若男女だれにも必要な精神ではないかということを御認識いただければありがたいと思っております。
 余計なことかもしれませんが、あの私の所信表明で、いろんな方から米百俵の話はいかなる教育論よりもよかったというお褒めの言葉をたくさんいただいているということをつけ加えさせていただきたいと思います。


151回-参-本会議-23号 2001/05/11

○谷本巍君(社会民主党・護憲連合)
 総理は、今の痛みに耐えてあすをよくしようという米百俵の精神を強調しておりますが、これでは痛みを感ずるのは弱い立場にある農業者や中小零細企業と労働者だけということになりかねません。信頼の政治というのであれば、国民や中小企業が安心できるセーフティーネットを本当の意味で構築をし、先の見える安心社会をつくる必要があります。総理の所見を伺いたいのであります。

○内閣総理大臣(小泉純一郎君)
 中小企業に対する金融支援策についてですが、不良債権処理に伴い中小企業への悪影響が生じないよう最大限の努力が必要であります。
 政府系金融機関や信用保証協会等を通じ中小企業への円滑な資金供給を図るとともに、連鎖倒産の危険などが生じないよう、信用保証制度の特例、政府系金融機関の融資及び倒産防止共済といった昨年末に拡充したセーフティーネット対策を適切に実施してまいります。

○小林元君(民主党・新緑風会)
 総理が言われた長岡藩だけではなくて、米沢藩でもあるいは私の水戸藩でも、苦しいときにこそ教育に力を入れた先達がおりました。小泉総理の教育改革は森前総理と同じものですか。それとも、新しく小泉流教育改革を打ち出すおつもりがあるのか、またその中身についてお尋ねをいたします。

○内閣総理大臣(小泉純一郎君)
 私も、教育全般についてさまざまな問題が生じている今日、日本人としての誇りと自覚を持ち、新たなる国づくりを担う人材を育てるための教育改革に取り組むことは極めて重要と認識しております。私は、所信表明演説において米百俵の精神を述べましたが、この精神は教育においても重要な指針となるべきものと考えております。
 教育改革を具体的に進めていくためには、知識に偏重した教育ではなく、バランスのとれた全人教育を推進するとともに、今国会に提出している教育改革関連法案の成立、また教育基本法の見直しなどに全力を挙げて取り組んでまいります。


151回-参-予算委員会-14号 2001/05/21

○佐藤泰三君(自由民主党)
 教育改革への基本姿勢につきまして総理にお尋ねいたします。
 総理は、所信表明で、日本人としての誇りと自覚を持ち、新たな国づくりを担う人材を育てるための教育改革に取り組むことを明言していらっしゃいます。また、明治初期に長岡藩にあった米百俵の逸話は、構造改革の視点からも非常にすばらしい逸話だなと思っております。御案内のように、教育、人づくりは五年、十年、二十年と長い年月を要します。それを、米百俵と共通した点があると思うのでございますが、今後、総理におきましては教育改革の基本姿勢はどのようなものか、お伺いいたします。

○内閣総理大臣(小泉純一郎君)
 人間というのは、人によって評価はまちまちであります。歴史上の人物を見ても、一方の視点から見れば悪逆非道の人物がすごい尊敬すべき英雄として描かれる場合がある。逆に、みんなが偉人と思っているのを別の角度から見るとひどいことをしたなととられて書かれる場合もある。人間を見る目というのは人によってさまざまだなと、思いがあります。
 そういう点で、我々もこれからの人材育成の面においては全人教育というものが大事ではないかと。学校の成績に優秀であるということにこしたことはありませんが、今までどちらかというと学校の成績の評価の方に偏重していたんじゃないか。
 それぞれ人間には得手不得手があります。ある人は机に向かって勉強することが好きな人もいるし、それが苦手で外で遊ぶのが、スポーツが得意な人もいる。あるいは、スポーツの面を見ても、野球がうまい人もいれば水泳がうまい人もいるというふうにそれぞれ違いますから、それぞれ多様性を尊重しながらみずからの能力が発揮できるような温かい目を大人の社会が持つことも必要ではないか。
 また、子供にとってもいろいろ歴史を勉強する際にもいい面悪い面あると思います。やはり励みとなるのは、過去の歴史上においての立派な業績を持った人の本を読めば、ああすごいなと、自分もああいう生き方を見習っていきたいなという気持ちも起こるでしょうし、人のふり見て我がふり直せという言葉がありますように、恥ずべき行為をした人を見れば、ああ自分はああいうことはしたくないという気持ちも思うでしょう。
 そういう面において、いろいろ教育の方法はたくさんあると思いますが、日本の生まれた国に対して、あるいはこれから自分の住んでいく社会に対しても、先人の努力に対して素直な敬意と感謝を持てるような教育というのはどういうものがふさわしいか、あるいはまたみずからの能力を生かして、生きがいを持ってそれぞれの立場でみずからの役割を発揮できる社会というのはどうあるべきかということを、子供のうちからそういうやる気を持てるような社会がこれからの時代にふさわしいのではないか。
 自助と自律という言葉を私は使いましたけれども、わかりやすく言えばそれぞれがやる気と我慢、両方大事ではないかと。あるときは我慢しなければならない、また同時に、やる気を持って、一度や二度の失敗にくじけずに立ち上がる気力も持って、失敗は成功のもとであるというような気持ちを持ってそれぞれの役割を見出していくような社会がいいのではないか、そこに教育の重要性があると思っております。


151回-参-予算委員会-15号 2001/05/22

○松岡滿壽男君(無所属の会)
 「恐れず、ひるまず、とらわれず」、いい言葉だと思います。ただ、ひるまず、とらわれずはあなた自身の決意だと私は思うんですが、恐れずですね、この痛みというものは具体的に何なのか、それから恐れずの主語は何なんでしょうか。

○内閣総理大臣(小泉純一郎君)
 恐れず、ひるまずの対象ですか。

○松岡滿壽男君
 主語。

○内閣総理大臣(小泉純一郎君)
 抵抗勢力に私は、小泉内閣は恐れず、ひるまず、とらわれず、小泉の内閣としてそういう反発、抵抗勢力に立ち向かっていくということを決意をあらわしたのが、恐れず、ひるまず、とらわれず、断行していくということであります。

○松岡滿壽男君
 私は、痛みを恐れずというのは、国民に痛みに耐えてくれという呼びかけかと実は思っておったんですけれども、そうじゃないわけですね。

○内閣総理大臣(小泉純一郎君)
 もとより改革には痛みが伴います。いかに痛みを分かち合って、きょうの痛みに耐えてあすをよくしていこうという米百俵の精神を常に胸に秘めて、雄々しく改革に立ち向かっていきたいと思います。


151回-参-文教科学委員会-09号 2001/05/24

○内藤正光君(民主党・新緑風会)
 小泉総理大臣は大臣の所信表明において米百俵の精神に触れられました。米百俵でございます。最後の方で、まさに教育と絡めてこの米百俵の精神を言われたわけでございますが、まずお尋ねします。文部科学大臣としてこの話をどのように受けとめられたのか、お答えいただけますでしょうか。

○国務大臣(遠山敦子君)
 あの米百俵の話は内閣総理大臣の所信表明の性格づけに大変特徴的なお話であったと思います。しかも、それが米百俵という人づくりの基本を説いたそういう話であったと思っております。
 この米百俵の精神は、新たなる国づくりを担う人材を育成する、あるいは将来に向けて知的資産の創出を進めるということを目指している未来への先行投資という観点から、文部科学行政の推進にとって重要な指針になると考えております。同時にあの話は、耐える心といいますか、そういう未来に向けて今耐えながら将来のために頑張るというふうな精神もあろうかと思います。
 その意味で、今日いろんな社会の閉塞状況にありますが、その中でやるべきことは人づくりであり、未来への投資になる重要な事柄を次々にやっていくという、そういう精神を説かれたのであろうかと思います。

○内藤正光君
 その思いは私も同感でございます。頑張っていっていただきたいと思いますが、ではその米百俵の精神を今後の文部科学行政に具体的にどう反映させていくおつもりなのか、文部科学行政に照らし合わせてお答えいただきたいと思います。

○国務大臣(遠山敦子君)
 米百俵の精神を教育科学行政の中でどう生かすかということで考えますと、一つは、やはり将来の国づくりを担う人材の育成ということでありますので、今まさに文部科学省が力を入れて推進しております教育改革というものをさらに力強く推進していくことであろうかと思います。その意味で、教育改革関連法案の今国会における成立に全力を尽くすという姿勢でこの課題に取り組んでまいりたいと思います。
 同時に、科学技術創造立国を目指しておりますので、創造性に富んだ世界最高水準の成果を生み出すための研究開発というものを総合的に推進してまいる、そのような姿勢で臨みたいと思います。


「米百俵」小泉総理以前の国会での論戦。

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