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雑音に敏感であることの美徳


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12月16日
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 2004

■オバサンクエスト

先日、免許の更新に行った。

最後の難関、新しい免許を受け取りに行こうとすると、2人のおばさんがメェ〜メェ〜おしゃべりしながら同じ方向へ向かって行った。

たしかあのおばさん(仮にAオバとする)は、ひとりで来ていたはずだなぁ…。

一番初めに印紙を買うときに、ぼくはこのAオバを視野におさめており、ひとり右往左往しているのをしかと見ていたのだ。

記憶のファイルを思い返してみる。

免許受け取りの前は「講習」だった。1時間の……。広めの会場で行われた講習は席を指定され、男と女は別の列で分けられていた(なぜ?)。その会場へ入る時、たしか、既にAオバはもうひとりのおばさん(仮にBオバとする)と話しながら入っていった(なぜ?)。

そして、この前は「審査」だった。印紙を貼り、視力検査を終え、写真を撮っていればOKが出される。ぼくはその審査に並ぶ段階で既にAオバを意識していた。AオバとBオバがつきつはなれつして話しているのを見て、「2人は友達なんだな?」と勘ぐり、心優しくも順番を譲ってあげた。ということは、ここで2人は既に会話をやり取りする仲に発展していたのだ。

とすると、この前の写真のタイミングが怪しい。

写真を撮った時は、Aオバは明らかにぼくの前だった。カメラの前で「もう撮るの?」と焦っていたのを見て、次に待っていたぼくは手前の鏡で髪型を直したのをおぼえているのだ。

すると一挙に2人のつながりが見えた。この撮影後、なぜか不要と思われるチェック係がいて、これまでの工程に漏れが無いかをみて、ボンッとこれまた不要な重い判を押すのだ。

この時、申請シートを出すのだが、これをチェック係は一度手元に受け取り、判を押し、返してくれる。その時に必ず次のルートを教えてくれるのだ。Aオバの前にその後仲むつまじくなる2人目のおばさん・Bオバがいたのだと思う。先を行くBオバに係員は「あなたはオレンジのラインです。」と言っていた。そして、続いて判を押してもらったAオバに、係員は、こう言ったのだ。「あなたもオレンジのラインです。」

2人をつなぐきっかけとなったのは、この係員の “も” であろう。

おばさん2人は、試験場という迷宮を、どこへ行って良いか不安なまま次のルートを探りながら進んでいたのだが、この係員の、あんたら同類・一緒くた宣言である“も”を付与されたことにより、この2匹の子羊は、めでたく同じ迷える子羊たちとなったのである。

係員の深い意味も無く発した一文字で、不安の迷路を共に歩むようになったAオバとBオバ。2人は、それまで欲望渦巻く迷宮だとばかりに思っていたこの免許更新の行進を、いつのまにか国の行方を左右する冒険への道のりのように感じていたことだろう。

でも、いつかまた街で出会っても、お互いわからないだろうな。もしくは既に赤外線でケータイ番号の交換なんかしちゃっているのかしらん。

(2004-12-16/K)


長い割に、どうでもよい内容であいすいません。(K)

共に危険を乗り越えた両者には、ほのかな恋愛感情なり友情が芽生えると、心理学でも実証されている、と思う。面接会場で知り合った者同士が、何だか意気投合してしまうのがそれに近い。きっとAB両オバも、これからも5年おきに共に冒険を続けて行くことでしょう。(C)




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