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雑音に敏感であることの美徳


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5月20日
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■秘密の小部屋

墨田区の下町にある我が家は、戦後間もなく建てられた。木造鉄筋2階建て、築50数年の、仕事場を兼ねた複合住宅だ。だから先日「ビフォー・アフター」というリフォームの番組で、同じ様な家が出てきた時は思わずテレビにかじり付き、完成時には拍手してしまうほど感情移入した。

20年ぐらい前までは、家業のトタン加工をまだ営んでいた。薄暗い工場の奥には裁断された鉄屑が積み上げられ、ジャングルのような有様。危険なので近づく事は許されず、幼い私にとって前人未踏の秘境が残されていた。

その後、家業を辞め、工場を倉庫にした時、いままで巨大なトタンのロールや、機械に隠されていた我が家の全貌が明らかになった。そのガランとした様子にあっけにとられ、と同時に少しさびしくもなった。

そして10年後、なつかしい興奮がよみがえる場面があった。何の気無しに自分の部屋に造りつけてある本棚を眺めていると、その裏にかなりの空間がある様に思えてならない。裏は納戸になっているが、その奥行きと本棚の位置の辻褄が、どうも合わない気がしたのだ。好奇心に衝き動かされ、取り憑かれた様に納戸の荷物をかき分ける私の心は震えていた。

すると、あった。奥に秘密の小部屋が。そっと扉に手をかけると、中にポツンと一つ、鉄製の茶箱が。先祖伝来の秘宝(言い過ぎ)が今、白日の元にさらされるのかと高鳴る胸。慎重に箱を開けると出てきたものは……おまる。

そして溲瓶。

いずれも下関係。死んだ曾おじいちゃんの介護用品だった。謎は謎のままの方が美しい。

(2004-05-20/B)


●関連:Sunday Pholumn 2004-09-05 11:00




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