■髭(ヒゲ)の歯科医師
私いま、歯科に通っています。職場近くの歯医者から、仕事を辞める事により近所の歯医者へ鞍替えしようと思い立ち。
面倒がって長い間放っておいたムシバラス(知ってる?)を見せるのは、かなり勇気がいったので、親切で怒らなそうな所を名前で選んだ。
なんで分かるかって?そこはキリスト教の聖者の名を冠していたから。限りなくホスピタリティーを感じさせるその歯科医院に飛び込んだら大正解。牧師の様に穏やかな笑みと髭を蓄えた紳士が、ほぼ無痛に近い治療を施してくれた。
そして早くも2回目の診療で、そのホスピタリティーが本物である事が判明。
私が無職である事を知った髭の彼は、「私も職を失った事があるので解るんですよー」ええ?歯医者さんなのに?「借金の保証人になったら逃げられてしまってねー、開業してたんだけど全部取られてしまって…」マジですか?「職安で求人を探したんだけどなかなか無くて」そ、そりゃあそうでしょ逆に。「雇われ医師として勤めたんだけど、こっちは『医は愛』とか思っててもよそは利益第一でしょ、合わなくってね…」はあー、ご苦労されたんですね…。
一度はブラックリストに載ってしまったが、地道に借金を返済して信頼を回復、再度の開業に至ったそうだ。事務をしている奥さんらしき女性も、絶えず笑顔だが日本語がカタコトで、韓国語を流暢に話し、待合室は韓国人らしき患者さんで賑わっている。根堀り葉(歯)堀り聞きたい事は山ほどあるが、咥内を治療してもらっている状況では相槌を打つ事さえままならず、先生が問わず語りに話し出すのを待つしかない。
賛美歌の流れる診察室で、ちょっぴり敬虔な心持ちで大口を開ける私。二人の出会いが、合同結婚式でない事を祈りながら…。
(2004-04-26/B)