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ウルトラマンメビウス外伝 RAYGA

 第6話  史上最大の逆襲 生ある"もの"たちの反撃 その5

 地球より離れること120万億km第四惑星近傍宙域。
 唐突に出現した小さなワームホールの輝きの中から、二人の宇宙警備隊隊員が姿を表わした。
 赤い体、肩から胸を彩るプロテクターと呼ばれる銀色の装飾――ウルトラセブン。
 そしてもう一体は、銀の身体を鮮やかな赤で彩った、卵形の顔立ち――初代ウルトラマン。
「セブン、ここか」
 初代ウルトラマンの問い掛けに、周囲を見回していたウルトラセブンは頷いた。
「そうだ。――そして、第四惑星はあそこだ」
 指差す方向で輝くこの星系の中心、名もなき恒星。そこから少し離れた方角に、地球に似た青い星が輝いていた。
 頷き返した初代ウルトラマンは、しかし小さく不満げな声を漏らした。
「どうした、ウルトラマン。何か心配なことでもあるのか」
「うむ……ここまで何の障害もなく来れたというのが、少々腑に落ちない。全宇宙の有機生命体を殲滅すると宣言したわりに、手薄すぎないか」
「そうだな」
 少し考え込んだウルトラセブンは、ふと何かに気づいたように第四惑星を見た。
 しばらくじっと凝視した後、唸った。
「ウルトラマン。第四惑星の地表を見てみろ。凄い数の戦艦だ」
「む?」
 慌てて第四惑星を注視する初代ウルトラマン。
 二人の目が捉えた光景は――

 金属なのか、コンクリートなのか。大地を覆いつくす、灰色の土台。
 その上を埋め尽くす戦艦の群れ。
 その周囲に林立するのは、戦艦を造り続けている建設機械。
 灰色の土台の外側、地面の露出した部分では、別の工作機械が緑の木々を薙ぎ倒し、大地をならし、着々と灰色の範囲を広げている。
 別の区画では工場らしき建物から人の姿をしたロボットがぞろぞろと現れ、動く歩道により戦艦建造区画へと運ばれて行く。
 完成した宇宙戦艦は空中で整列し、何隻かが一まとまりになった時点で惑星の重力を突破して宇宙空間へと飛び去っている。

「……惑星の資源全てを、侵略のための宇宙戦艦建造に回しているのか。なんという……」
 怒りさえ滲む声色で唸る初代ウルトラマンに、ウルトラセブンも拳を握り締める。
「住むところを求めるためでもなく、自分達が生きるための資源を奪うためでもなく……ただ、自分たちが宇宙を統べる存在だと思い上がって、それを証明するためだけに戦争を起こし……そんなことのために、あの星の人類を、全ての生命を全滅させたというのか。……許せん!」
 二人は向かい合い、頷き合った。
「セブン。奴らの暴挙、我々の手で必ず止めるんだ」
「ああ、もちろんだ。だが、そのためにはあの第四惑星に侵入し、その中心たるコンピューターを止めなければならん。……厳しい戦いになるぞ」
「わかっている。だが、これは我々にしか出来ないことだ。やるしかない」
 二人は再び頷き合い、両手を真っ直ぐ伸ばして滑るように宇宙空間を飛翔した。
 その目指す先は、第四惑星――今やロボットと宇宙戦艦の製造工場と化した荒廃した惑星。

 ―――――― ※ ―――― ※ ――――――

 地球――ニューヨーク沖の海上。
 GUYS総本部内大会議場は大騒ぎだった。
「フェニックスネスト、反応消失! レジストコード・レイガと共に完全にレーダーの範囲から消えています!」
「こちら観測班! マウナケア天文台から、フェニックスネストが光と共に消失したとの通報が!」
「GUYSスペーシーからも反応消失、視覚的にも見失ったとの報告が!」
「インターネット上で、フェニックスネスト消失の話題が! マスコミも反応を!」
「その宙域に宇宙人らしきシルエットが見える、と通報が押し寄せています!」
 それらの報告を、タケナカ総議長はただ黙って聞き続ける。
 その様子を不安に思ったのか、ある国の代表が立ち上がった。
「総議長! どうする気かね!?」
「どうする、とは?」
 低く、重厚なその声に気圧され、その代表は思わず息を呑んでいた。
「フェニックスネストが失われた今、我々に勝ち目は――」
「失われた? フェニックスネストは我々の目の届く範囲から消えただけだ。もう一人の青いウルトラマンと一緒に」
「ウルトラマン? あれが? しかし、あれは……」
 議場がざわつく。
 そのざわめきを聞き流し、タケナカ総議長はメインパネルの片隅に映る模式図の月を見据えていた。
(……さこっち、頼むぞ)

 ―――――― ※ ―――― ※ ――――――

 日本上空、大気圏最上層部。
 長方形の防御陣を組んだ百体以上のバルタン星人が、爆撃艦隊より発射される光弾を次々と撃ち落してゆく。それでも時折、撃ち漏らした光弾が防御陣をすり抜ける――が、それは地上からの砲撃で撃ち抜かれていた。
 別のバルタン星人二体は、その防御陣及び背後の新マンへキングジョーを寄せつけまいと、こちらも重力嵐で翻弄していた。
 守られている新マンは、疲れ切っていた。カラータイマーの点滅は異様に早く、少し腰を屈めた前傾姿勢で肩を大きく上下させている。だが、その顔は防御陣とキングジョー、双方の攻防戦を交互に見つめ、状況を冷静に観察していた。
 不意に、合体しているメリットがない、と判断したか、二体のキングジョーはそれぞれ分離してバルタン星人の重力嵐から逃れた。
 都合八機の小型宇宙船と化して邪魔者へ襲い掛かる。
 次々と浴びせかけられる光線を、分身の術で躱してゆくバルタン星人。
 しかし、バルタン星人の攻撃もペダン合金製の装甲には歯が立たず、重力嵐で吹き飛ばすのが関の山。
 膠着状態であるように思われたその時――
 戦場に新たなシルエットが登場した。瞬間移動で出現したらしきその数、三体。
 一体は生協組合長であるメトロン星人。残りの二体は――盛り上がった頭頂部が、お尻のように二つに割れた形状が印象的な異星人・バルダック星人。(帰ってきたウルトラマン第39話登場)
「待たせたな、バルタン星人、ウルトラマンジャック」
 そう言って頷くと、メトロン星人はさっと腕を振るってキングジョーを示した。
「――やれ!」
 折りしもバルタン星人が身を引き、重力嵐をやめたのを好機と見たか、それぞれに合体したところだった。
 そこへ襲い掛かったバルダック星人は、鳥のくちばしのような口から冷凍ガスを吐きかけた。
 ライトンR弾頭弾以外のあらゆる攻撃を寄せつけなかったペダン合金の装甲が、たちまち白い霜に覆われてゆく。
「ふふふふふ、−234度の瞬間冷凍ガスだ。いかに怪力を誇り、高硬度装甲を備えたロボットといえども、氷漬けにされては動けまい!」
 高らかに勝利を宣言するのはバルダック星人――ではなく、その後方に控えるメトロン星人。
 大気圏上層部という場所柄、どこから水蒸気を得ているのか不明だが(もしくはガス自体がそういう性質なのか)――やがて、二体のキングジョーの全身は霜で真っ白に染め上げられていた。
 霜はすぐに霜柱となってぐんぐん立ち上がり、さらに膨張してゆく。それに伴ってキングジョーの動作は緩慢なものとなってゆく。そして、腕や突起から氷柱が下がる頃には、ついにその動作は完全に止まってしまった。
 さらにわずか数秒。そのごく短時間で、怪力堅牢を謳われたスーパーロボットは氷の塊の中に閉じ込められていた。
 その戦果に、メトロン星人は満足げに頷いた。
「これで当分は動けまい。キングジョー、攻略したり! 名づけて『 氷の棺 』作戦! バルダックの諸君、ご苦労だった!」
 振り返った二人のバルダック星人も満足げに頷く――メトロン星人の肩越しに新マンの姿を見て、軽く頭を下げた。
 新マンも頷き返す。感謝の意を込めて。
「さて」
 メトロン星人は場を仕切り直すように両腕を打った。
「バルタン星人、この氷の塊を地球防衛組織の宇宙ステーション近傍まで運んで行ってくれ」
 二人いるバルタン星人は、顔を見合わせた。
 その様子に、メトロン星人が得意げに頷く。
「連中は、防衛線上にペダン合金を破壊できるライトンR30を用いた機雷(※)を敷設している。動けぬキングジョーをそこへ突っ込ませれば、ゴミ掃除は終わる」(※ウルトラマンメビウス第11話で使用)
 得心がいった様子で頷きあったバルタン星人たちは、キングジョーを閉じ込めた氷塊にハサミを向けた。そこから発する力場に氷塊を捕らえ、いつもの笑いを残して飛び去ってゆく。
「これでロボット軍団に対抗する目途が立った。……最後は手作業なのが今ひとつ気に食わんが、この際そう言ってもいられん」
 ぼやきなのかなんなのか、呟いたメトロン星人は新マンに向き直った。
「ところでジャック、青二才とGUYSが来ていたようだが? 姿が見えんな」
(彼らは、月へ行った)
「月? なぜまたそんな」
(月の、裏側だ)
 黙り込んだメトロン星人は、すぐに深々と頷いた。
「……なるほど。そういうことか。やはり地球防衛は人類に一日の長があるな。月の裏側の可能性は見落としていた。そういえば、衛星というものは自転と公転周期が等しくなるため、決して背後を見せないのだったな。忘れていたよ。だが……GUYSの援護に、あの青二才でよかったのかね?」
(心配ない)
 自信に満ちた新マンにたじろいだか、メトロン星人の頭部が少し揺れた。
(あいつはもう自分が何をなすべきか、理解している。だから――)
 話を打ち切って、新マンは腰だめにした右手刀を、真っ直ぐ伸ばした。
「ヘアッ!!」
 手刀の先から、針状の光線が数発走り、バルタン星人の防御陣をすり抜けた光弾を撃ち落した。
 そして、その姿勢をゆっくり解きながら、話を再開する。
(――だから、俺はここを守りぬく。月からレイガが戻ってくるまで。そう約束した)
 胸の前で両拳を交差させる。左腕のブレスレットがきらめき、今の今まで赤く点滅していたカラータイマーが再び青に戻った。
 メトロン星人は頷いた。
「ふむ、そうか。キミがそう言うなら、私に否やはない。私にも……残念ながら、現状を覆すような良策が今のところないのでな。奴を信じるというキミの言葉にすがるとしよう。そして――私も、私の出来る最善を尽くす」
 そう言って、背後に控える二人のバルダック星人をそれぞれ示す。
「私はこれから、バルダック・バルタンを中核とした白兵戦部隊を率い、あの厄介なロボットどもの排除を行う。つまり、奴らがこちらに来ぬよう、我々が盾となるわけだ。ジャック、お前は心置きなくここを守れ。我々がピンチに陥っても、助けになど来るな。いいな」
 触手の塊めいた腕先で差すメトロンに対し、新マンは力強く頷いた。
(わかった。そちらは任せた)
「ではな」
 頷き返したメトロン星人はバルダック星人二名を引き連れて、その場を離れる。
 そして、月をちらりと見やりながら独りごちた。
「まさか、私自身が最前線で指揮を執ることになろうとはな――とはいえ、ここからがこの戦いの正念場。GUYSの諸君、頼むぞ」

 ―――――― ※ ―――― ※ ――――――

 宇宙空間某所。

 暗がりの中に、いくつもの計器類が明かりとして浮かび上がる空間。
 オペレーターの報告と長官の指示が激しく交錯していた。
「地上爆撃の効果、ほぼ0。バルタン星人の分身による防御陣は頑強。やはり同期を伴わぬ砲撃では、敵に防衛の機会を与えてしまうようです」
「構わん。全力同期砲撃が出来るようになるまで、現状を続けたまえ」
「移動型防衛拠点と新人宇宙警備隊隊員の反応消失。こちらの有効捕捉範囲に確認できず」
「消えた? ……瞬間移動か。まあいい、無視して構わん。あの程度の戦力が宙域の何処に移動しようと、戦局が変わるはずなどない。探すだけ時間の無駄だ」
「宇宙警備隊隊員排除に差し向けたPdnKJタイプが、二機とも極低温攻撃を受け機能停止。バルタン星人の手によって大気圏外の惑星防衛拠点の方向へ移動させられています」
「再起動をかけよ。無理なら放置でよい。一体二体の戦力低下など今さら問題にもなるまい。その代わり、全ロボットをバルタンの防御陣へ回せ。爆撃・砲撃で破れぬなら、数と装甲で押し切れ。無論、爆撃砲撃も止めるな」
「抵抗勢力艦隊、爆撃艦隊外縁部下方を高速で移動中。こちらの集中砲撃でウルトラマンジャックとの合流は阻止していますが――追撃艦隊、後方より惑星防衛部隊の背撃を受けています」
「抵抗勢力艦隊は放置。追撃艦隊はただちに全艦回頭し、背後の防衛部隊を迎撃。その殲滅を優先事項とする。なお、爆撃艦隊の外縁部隊は、抵抗勢力艦隊が転進して追撃艦隊の背後を襲撃せぬよう弾幕を張れ」
「――爆撃艦隊の全有効戦力復帰完了。全力砲撃、行けます」
「では、全力同期砲撃を――」
「お待ち下さい、長官。コンピューターが同期砲撃再開には警告を発しています。このまま同期攻撃に移れば、先ほどの二の舞になると」
 がり、と長官の爪がデスクの表面を掻いた。
「いかにウルトラマンジャックと言えども、あれほど大掛かりな技を、そうそう気軽に出せるものでもあるまい。消耗しておるはずだ。――解析担当、先ほどのウルトラマンジャックによる反射防御技の解析はどうなっておる!」
「今、解析の回答が得られました。――残念ながら、情報が少ないため、ただ単に飛来物体のベクトルを変える技であるのか、空間自体を捻じ曲げたのか、あるいはその他の力が働いたのか、断定することは不可能。ただし、観測結果によれば、全ての砲弾が例外なく発射装置に向かって戻って来るコースをたどったとのことです」
「なるほど。ならば話は簡単ではないか。光弾が戻ってくることを前提にして、艦隊全体を動かせばよい。砲弾が戻ってきた時に、そこにさえいなければ、どれほど跳ね返されようと、我々が戦力を失うことはない。そのように艦隊を動かしつつ、同期砲撃を再開せよ」
「了解。――長官。現在、想定ケースを大きく逸脱した事態が進行中です。状況を確認し、指示を願います」
 感情のないアンドロイド・オペレーターの報告に、長官は苛ついた声で答えた。
「そんなことはわかっている。確かに戦況は事前の想定ケースにはない状況に陥ってはいるが、お前達に指摘されなければならないほど――」
「長官。緊急事態です。状況を確認し、指示を願います」
「だから、今指示を下したところではないか」
「現状に対する指示は、今のところいただいておりません」
「なに?」
「緊急事態です。状況を確認し、指示を願います」
 繰り返される緊急事態報告に、ロボット長官はようやく怪訝そうな表情になった。
「……緊急事態の詳細を報告せよ」
 その言葉が終わるや否や、正面メインパネルの表示が切り替わった。映し出されるのは、星の輝き浮かぶ宇宙を背景に、白っぽい荒野が果てしなく続いている風景――月面。
「たった今、第三惑星の衛星裏面上空に、地球の衛星軌道上から消失した宇宙警備隊隊員と移動型防衛拠点が出現しました。想定外のケースです。状況を確認し、指示を願います」
 月面上空の一点が拡大され、そこに表示されるのは蒼い身体の巨人と、巨大な砲塔を背に負った飛行要塞。
 思わずロボット長官は立ち上がっていた。
「馬鹿な! なぜ奴らがあそこにいるのだ!?」

 ―――――― ※ ―――― ※ ――――――

 フェニックスネスト・ヘッドブリッジ内部。
 正面パネルには、フェニックスネストの正面に広がる風景がそのまま映し出されていた。
 月の裏側と言っても、全く真っ暗なわけではない。地球から見て今日は満月ではないため、かなりの部分が太陽光に曝される。
 荒涼とした薄い灰色の大地。表側と違ってクレーターや峡谷だらけで起伏も激しく、気軽に着陸できそうには見えない。
「……もう、着いたのか……」
 ようやくサコミズ・シンゴが絞り出したその言葉に、呆気に取られていた一同は正気を取り戻した。
 素早くシノハラ・ミオの指がコンソール上を走る。
「――現在の時刻と太陽、地球、星の位置から空間座標特定開始。イクノ隊員、地形スキャンお願いします」
「G.I.G」
 応じたイクノ・ゴンゾウの指もコンソール上を走り、デスクのモニターに船外カメラの映像が映る。
「着陸できそうな平地は――と、真下に巨大なクレーターがあります。でかいな、これは……。月の裏だと……コロレフかな?」
「イクノ隊員、当たりです。――現在地は月面経度西経157.4度、月面緯度南緯4度付近。高度200km。真下の巨大クレーターはコロレフです」
 メガネを光らせてモニターを読み上げるその表情が得意げなので、理科の女教師に見えそうなシノハラ・ミオ。
「んで? 敵はどこにいるのさ、ミオちゃん」
 ヤマシロ・リョウコがいつもどおりの呑気な軽口を叩いた途端、静寂の帳が落ちた。
「……え? ミオ、ちゃん?」
「その……対策を練る前に飛んでしまって、あっという間に到着しちゃったから……」
 済まなそうにうつむくシノハラ・ミオの肩をサコミズ・シンゴが叩いた。
「気にしない気にしない。とりあえず、変な物がないか、片っ端からスキャンとサーチをかけてみようか」
 シノハラ・ミオはその言葉に気を取り直し、すぐに顔をあげた。
「はい。そうですね。落ち込んでる場合じゃありません。さて。では、何から――」
『おい、聞こえるか?』
「きゃあっ!!」
 ヘッドセットのヘッドホンから聞こえてきた若い男の声に、シノハラ・ミオは思わず悲鳴をあげて立ち上がっていた。むしりとったヘッドセットをコンソールに叩きつけるようにして置く。
「なに!? どうしたの?」
 すぐにヤマシロ・リョウコが食いつき、腰のトライガーショットに手をやる。
「わ、若い男の声が……通信回線は閉じてるはずなのに!!」
『……っかぁ〜。いきなりでけえ声で喚くなよ! びっくりするじゃねえか! ……あれ? また静かになっちまった。おっかしぃなぁ。位相がずれたか? ここらへんのはずだが……なんで通じないんだよ。お〜い』
 緊張感のない声が、延々ヘッドホンから流れている。
「え〜と……あれじゃない?」
 少々とぼけた感のあるサコミズ・シンゴの声に、一同が正面パネルを見やる。
 そこには、ヘッドブリッジを覗き込むようにして、顔の横で手を振るレイガの姿があった。
 イクノ・ゴンゾウが苦笑しつつ報告する。
「どうやらそのようです。声も、先ほど聞いた若者のものですし」
「なんだ、レイガちゃんじゃない。……ってか、あの子、通信機なんか持ってたんだ?」
「そんなわけないでしょう!! 第一、敵の乗っ取りプログラム電波対策で、通信回線は閉じてます!!」
 怒りの声をあげたシノハラ・ミオは、ヘッドセットを取り上げて頭にかぶった。
「――聞こえました。こちら、フェニックスネストのシノハラ・ミオ。なぜ、こんな真似を」
『おお、ようやく返事が来た。ええと、その声は……リョーコじゃなくて、メガネのねーちゃんだな? はは、なんでってお前、宇宙じゃ声が届かねーじゃん。特にそっちが。目標見つけたときに、どうやってお互いに報せるんだよ』
 たちまち、シノハラ・ミオの顔から表情が消えた。
 レイガ本人にその気はなくとも、さして親しくもない(むしろ寸前まで敵扱いしていた)相手に馴れ馴れしい口調で常識ぶった物言いをされると、プライドを刺激されるものである。特に頭脳面に自信のあるタイプは余計に。
「……あなた、曲がりなりにもウルトラマンなんでしょう? テレパシーとか超能力があるんでしょ? だったら、変な力の出し惜しみをしないでいただきたいわね」
「ミ、ミオちゃん……ちょっと、なんか声が怖いよ……?」
『はあ? 出し惜しみなんかしてねぇって。あのな、オレをウルトラ兄弟みたいなエリートどもなんかと一緒にすんなよ? こちとら正規の訓練なんざ受けてねえんだ。力の加減もわからねえのに、お前ら貧弱な地球人の頭にテレパシーなんか送ったら、脳みそ茹で上がっちまうぞ』
「……ひぇっ……」
 自分もヘッドセットをかけて声を聞いていたヤマシロ・リョウコは、思わず自分の頭を抱えるような仕種をした。
 シノハラ・ミオはきり、と奥歯を噛み締める。
「なんですか、その言い訳は。地球に来るなら、それぐらい身につけてきなさいな」
『詳しい話はしねえけど、来たくて来たわけじゃねえし、来るつもりもなかったんだよ。けど、まあこういう事態になっちまって、一緒に肩を並べて戦わなきゃいけねえからさ、オレに出来る範囲でやってみてるんだよ。こっちの声を電波に変換して、そっちのヘッドホンに直接送ってんだけどな』
「……聞いてる限り、至極真っ当な意見ですね」
 イクノ・ゴンゾウが作業をしながら呟く。それを聞いていたサコミズ・シンゴも苦笑しながら頷いた。
「うん。聞いていた話ほど荒っぽくもないし、子供っぽくもないようだね、彼。それに、それなりの機転も利くようだし……」
「総監!」
 背後から味方に撃たれたような顔で上司を睨むシノハラ・ミオ。
 そんな内部のやり取りなど知らぬげに、レイガの呑気な声が届く。
『それで、この後はどうするんだ? 一応、地球から見て真裏に出たはずなんだが……どうやって敵のボスを見つけるんだ?』
 こちらが何かの腹案を持っているのだろうという期待に満ちたその声に、再びシノハラ・ミオの表情が硬張る。
「――あーのーねー! あなたが何の相談もなしに翔んでくるから――」
 その肩を、サコミズ・シンゴが軽く叩いて話を遮った。
「ボクが話そう。――レイガ。とりあえず各種スキャンをかけてみる。結果が出るまで、しばらく待ってくれ」
『カクシュスキャン? ……なんだそれ? 終わるまでどのくらい時間がかかるんだ? いや、それより。地球人の文明レベルで、向こうの擬装を見破れるのか? 頭の上に来てたのに、気づかなかったんだろ? お前ら』
 的確な指摘に、サコミズ・シンゴは思わずイクノ・ゴンゾウを振り返っていた。
 イクノ・ゴンゾウは首を横に振る。
「彼の言うとおりです。地球の大気圏外に存在する敵艦隊を、地球の技術では今でも視覚以外では捕捉できていません。宣戦布告前の隠れていた時には、我々は観測で直接視認することすら出来なかった。その上、月面の裏側は見ての通りクレーターと峡谷だらけです。隠れるところは無数にある。視認でも、各種センサーでも、『ここにあってはならないはずの何か』を捉えられる可能性は低いと言わざるをえません」
 その報告を聞いたサコミズ・シンゴは一つ頷いて、顔を正面に戻した。
「レイガ。今、こちらで話していたんだが――」
『ああ、聞こえてた。……じゃあ、どうする?』
 その時、ヤマシロ・リョウコが無邪気なほど気軽に声をあげた。
「レイガちゃんの力で何とかできないの?」
「リョーコちゃん!」
 叱責を含んだその鋭い声はシノハラ・ミオ。ヤマシロ・リョウコは思わず背筋を伸ばしていた。
「いえ、ヤマシロ隊員。これは地球人の戦争です。宇宙人であるレイガに全て頼るのは、地球を守るCREW・GUYS隊員としてどうなんですか?」
「ミオちゃん……」
 一度は気圧されそうになったヤマシロ・リョウコはしかし、すぐに顎を引いてぐっと表情を引き締めた。
「ミオちゃんには悪いけど……あたし、GUYSの誇りは地球を守りきってこそだと思ってる。こんな何の意味もない一方的な戦い、一秒でも、一瞬でも早く終わらせられるなら、ミオちゃんが言うようなプライドなんて、あたしは要らない。それこそ、そんなのじゃ地球は守れないもの。それと……レイガちゃんはもう友達だよ。一緒に戦おうって時に、それが出来る友達に頼らないのは、それこそ友達としてどうかって思うよ」
「地球防衛のプロフェッショナルが口にしていい言葉とは思えません。甘すぎます、ヤマシロ隊員は」
「甘くて結構、それがあたしのプライドだよ。じゃあ、ミオちゃんはどうなのさ。レイガちゃんに頼るなって言うんなら、何か策をすぐに考えてよ。あたしと違って、頭良いんだからさ。ここで生かさなきゃ、意味ないじゃない」
 棘のあるその物言いに、ミオの頬にさざ波が走った。
「そんな言い方……っ!! 私だって、必死に考えてます!」
「考えてるから何? 何も出てないよね? まだ。それこそ、ミオちゃんが言ってるプロフェッショナルらしくない言い訳じゃない!」
「なんですって!? ……あなたがぶーぶー不満を言わなければ――」
『――あー、こんなとこまで来て、ケンカはやめろよ。なー?』
「あんたは黙ってろ!!」
「あなたは黙ってなさい!!」
「――キミ達こそ落ち着けっ!!」
 二人を凍りつかせたのは、サコミズ・シンゴの一喝。
 腹の据わったその一言で、たちまち二人は悪い夢から醒めたかのような顔つきになって俯いてしまった。
「ともかく、今は敵の――」
『なぁ』
「拠点を探し出すことに全力を――」
『なぁって。先に言っておきたいんだけどよ』
 訓示をぶった切るその声に、サコミズ・シンゴは苦笑して肩をそびやかせた。
「なにかな、レイガ?」
『期待してくれてるリョーコには悪いんだけどよ。連中の視覚擬装は、オレでも見破れねえんだ。スマンね』
「え〜!? そうなの?」
『正規の訓練受けたウルトラ戦士なら透視光線とかの超能力をガンガン使えるんだろうけど、オレ、やり方知らねえし。まあ、その戦艦の装甲ぐらいならぎりぎり通して見れるけど、この範囲を見るのは、ん〜……目の前にない限り無理だな』
「なんだあ。案外出来ないこと多いんだねぇ。ウルトラマンのわりに」
『だーかーらー、オレはウルトラマンじゃねえって。お前らがオレをウルトラマンって呼ぶな』
「それはともかく。敵拠点の捜索について、あなたが役に立たないことは理解しました」
 敵意剥き出しでぴしゃりと二人の会話をぶった切ったシノハラ・ミオに、なぜかヤマシロ・リョウコがふくれっ面を向ける。
「協力できることが無いのなら、黙っていていただけると助かります。耳元でやいやい言われると考えがまとまりません」
『へいへーい。……あ、そーだ。黙る前に一つ聞きたいんだけど、メガネのねーちゃん』
 指名されたシノハラ・ミオは、ため息を一つついて渋々応答した。
「私はシノハラです。……それで、なにか?」
『ああ、じゃあシノハラ。さっき言ってた、『ここにあってはならないはずの何か』っての、どういう意味だ?』
「どうもなにも、そのまんまの意味ですが。まだ地球人はこのエリアに人工物の建造を行っていません。ですから、そういった類の物があれば、それはつまり敵の拠点である可能性が高いということです」
『ふ〜ん……』
 生返事だけを返して、周囲を見回すレイガの姿。
 それに対して鼻息荒く振り返ったシノハラ・ミオは、サコミズ・シンゴに告げた。
「――総監、しばらくはこのコロレフ・クレーターの内側を旋回するように移動することを提案します」
「理由は?」
「何か効果的な策を思いつくまでですが、時間を無駄にするわけにも行きません。幸い、レイガとヤマシロ隊員は目がいいようですので、視覚的な探査を任せてもいいかと。無論、今の会話でもわかるとおり、それで見つかる可能性は限りなく低いと思われますが……今は――」
「どんな小さな可能性でも自ら放り出すことはない、か。わかった。では、とりあえずそれで行こう。リョウコとレイガは、今聞いたとおり目を皿のようにして月面を観察してくれ。どんな小さな異常も見逃すな」
『あいよー』
「G.I.G」
「イクノ隊員は各種センサーによるスキャンを続行。そちらも何か反応があれば報告を」
「G.I.G」

 フェニックスネストとレイガは月の空を滑るように移動を始めた。

 ―――――― ※ ―――― ※ ――――――

 宇宙空間某所。

 暗がりの中に、いくつもの計器類が明かりとして浮かび上がる空間。
「移動型防衛拠点及び宇宙警備隊隊員、移動開始。……移動方向と速度、移動型防衛拠点から放たれている各種スキャナー波から推定して、地表を探査しながら移動している可能性98.4453」
 オペレーターの報告に、ロボット長官は鼻を鳴らした。
「ふん、ならば放っておいて問題はあるまい。コンピューターの判断はどうか」
「コンピューターからは対応の指示が出されております」
「ふむ。提示された選択肢はいくつだ?」
「一つだけです。そちらのモニターに表示します」
 手元のモニターに表示された文字列に目を走らせたロボット長官は、すぐにその画面を閉じた。
「……なるほど。有機生命体の殲滅は決定事項。一つの例外も許すわけにはいかん、というのがコンピューターの意志か。よろしい。コンピューターの指示に従い、プログラムを組め。だが、今は第三惑星の攻略が最優先だ。こちらのプログラムは条件が揃い次第、私の命令など待たずに自動的に発動するようにしておけ」
「了解」
「それで、同期爆撃の方はどうなっている」
「たった今、全艦隊へのプログラム送信完了しました」
 別のオペレーターが無感情に答える。
「カウント100で同期爆撃再開。ただし、ウルトラマンジャックとバルタン星人の部隊が存在しているため、爆撃による地表への影響率は極少と予想」
「想定内である。ウルトラマンジャックの防御技の効果時間が切れた直後に、全機動兵器をその宙域に突入させ、バルタン星人・ウルトラマンジャックの排除を行う。その結果如何によらず、次弾装填完了次第、第二射だ。全て押し潰せ」
「了解」
 ロボット長官は頷いて、頬をにんまりと緩めた。
「くっくっく……愚かな有機生命体めらが。貴様らごときの文明レベルで、この中枢に迫れるとでも思っていたのか。我らが本隊は光の国さえ攻略中だというのに、なめられたものだ。もっとも、万が一見つけられたとて、この施設、攻略などできようはずもあるまいがな」

 ―――――― ※ ―――― ※ ――――――

 フェニックスネスト・ヘッドブリッジ内部。
 シノハラ・ミオの唸り声だけが静まり返った室内に悶々と響いていた。
「高周波、X線、赤外線、紫外線、音波、光波、電磁波による探信、温度分布、分子成分分布、エネルギー反応、映像の単純スキャン、空間の歪みに重力異常に振動波、過去のデータによる異次元干渉波に至るまで、どれも今のところ異常データなし」
 疲れ果てたように、ばったりとモニターにうつぶせる。
「そもそも、こちらの視覚さえ欺くということは、この程度のスキャンやサーチ、センサーが欺かれている可能性も高いわけよねー……。こちらの眼が全部塞がれてる状況で、それでもなお見えない敵を見つける……矛盾もいいところだわ。あー、もう。私にどうしろって言うのよ」
 シノハラ・ミオの愚痴は、しかしそれを支えるイクノ・ゴンゾウの思いでもある。フェニックスネストが誇る各種スキャンシステムを総動員しても、コロレフ・クレーターの中に、未だ何の反応も感知できない。
「……やはり、どこか深い谷のような、視覚的にも探査的にも困難な場所に潜んでいるのでしょうか。視覚擬装が得意とはいえ、地球上のシステムでも、一応それなりに拠点を発見できていたわけですし」
「厳密には拠点" 候補 "ね」
 倦み疲れた口調で、身体を起こしたシノハラ・ミオが答える。
「最後まで、そこに敵がいるという100%の確証は持てなかったわ。彼らが視覚擬装を解いたことで、初めてわかった……しょせん、地球のテクノロジーレベルではそんなものね。もし……イクノ隊員の言うとおり、どこか深い谷間に潜んでいるのなら、完全にお手上げだわ」
 そう言って、両手を肩の高さに上げてため息をつく。
 その後ろ、操縦席でヤマシロ・リョウコもため息をつく。
「タイっちゃんがいればなー……」
「はあ? どうしてクモイ隊員の名前がそこで出るの?」
「だって、タイっちゃんなら気配とかで『そこにいる!!』とか、言えそうじゃない?」
「ああ、確かにね……。けど、マンガじゃあるまいし、そんなオカルトに賭けるっていうのも――」
「気配はオカルトじゃないよっ! あれはほんとにわかるんだからっ! アスリートが極限まで感覚を研ぎ澄ませた時、感じる世界なんだよ!」
 立ち上がり、身を乗り出して力説するヤマシロ・リョウコ。
「はいはい。私はアスリートじゃないから、どれだけ言われてもそんな非日常な経験、理解できないもの。一般人にとって理解できないものは、オカルトと同じよ」
「ひっどーい」
 口を尖らせてどっかり席に腰を落とすヤマシロ・リョウコを振り返りもせず、シノハラ・ミオは頬杖をつく。
「……そうよ。理解できない世界のものを、どうやって見つければいいのよ。私は……アスリートでも軍人でもない、ただの常識的な一般社会人なんだから。こんな異常な世界、そもそもわかるわけないのよ」
「焦らないで。諦めないで。ちょっと、一息入れてみようか」
 そう優しい声をかけたのはサコミズ・シンゴ。お手製のコーヒーをシノハラ・ミオのコンソールデスク隅にそっと置く。
「サコミズ総監……」
 漂う芳ばしい香りとその微笑に、凍りついてささくれていた心がたちまち溶けてゆくのを感じた。
 何の気なしに見やると、ヤマシロ・リョウコ、イクノ・ゴンゾウの席にも、それぞれ湯気の立つコーヒーカップが置かれている。
 サコミズ・シンゴはお盆を小脇に抱えたまま、シノハラ・ミオの肩に手を乗せて頷いた。
「シノハラ隊員。君はこの戦いが始まった時、見えないものを見つけた。敵の存在にいち早く気づき、GUYS総本部さえ出し抜いて、敵の拠点の半数を暴きだした。確証は無かったと言うけれど、その的中率は100%だった。でしょ? その前にも、ガンフェニックストライカーが出撃できるように、アライソ整備長に的確な進言したりもしてくれたよね?」
 コーヒーカップを両手で包むように持ったシノハラ・ミオは、チェアを回してサコミズに正対した。その顔はしかし、沈んでうつむいている。
「……私は……私は、みんなと違って前線に出て戦う力も勇気もありませんから。性格もこうなので、結局のところ頭を使うのだけが私のとりえですし。それに、そもそもそれを期待されて配属されたわけですから、的確な進言・提案をするのは当然のことです」
「当然のことを当然にするのは、難しいことだよ。それに、みんなわかってる。君のちょっとキツめのお小言は、みんながきちんと戦えるようにという思いやりだって。ね」
「……やっぱり、キツいですか。私」
 ちょっと上目遣いに顔を上げたシノハラ・ミオはすぐに顔を伏せて、ため息を一つついた。
 そんな様子に苦笑を漏らすサコミズ・シンゴ。
「かもね。でも、それも含めて、みんな君の事を信じてる。ここにはいないけど、リュウも、マサトも、タイチも。ミサキさんも、トリヤマさんだって。君がお小言を言うからって嫌う人は、GUYSにはいない。それは……君を仲間だと信じているから、なんじゃないかな」
「仲間……。私が……?」
「そう。そして、君は無力じゃないし、君の持ってる常識は確実にボクらを助ける力だ。大丈夫、必ず道はある」
「はあ……ありがとうございます」
 さほど気分を盛り返した様子もなく、頷いてコーヒーカップに口をつける。
 その肩をもう一度軽く叩いて、サコミズ・シンゴはその場を離れた。
「はぁ……」
 シノハラ・ミオはため息を漆黒の薫り高き水面に落とした。
 とはいえ、活路は何も開けていない。サコミズ総監の激励は単純に嬉しい。しかし、だからと言って、見えないものが見えるようになるわけではない。激励、勇気、友情、信頼、愛情……そんなもので見えるようになったら、それこそオカルトの世界だ。
「……見えないことと、存在しないことはイコールではない、か。オカルティストの言葉を、まさかこれほど現実の状況に即して思い知らされることになろうとはね……世の中、深いわ。――それと、このコーヒーも」
 再びため息が落ちる。
 吐息は黒々とした水面に波紋を描く。
 それをじっと見て――……

「あ!!!」

 不意の大声に、みんながシノハラ・ミオを見た。
 船外にいるレイガまでもが。
「あああああああっ!!! これ!! これですよ! 総監、これがありました!!」
 勢い良く立ち上がり、必死でコーヒーカップを指差すシノハラ・ミオ。
 当然、何のことかわからぬ一同はしかめ面で顔を見合わせ、めいめいのコーヒーカップに目を落とす。
「さすが総監です! 私、大事なことを見落としてました! バカじゃなかろうか、私ってば! でも、これに気づくなんて、私天才!! それに、このタイミングでコーヒー出してくれるサコミズさん、グッジョブです!!」
 最前までの低いテンションがプラスとマイナス、ひっくり返ったかのようにはしゃぐシノハラ・ミオに、さすがのサコミズ・シンゴもついてゆけない。恐る恐る手を伸ばして、引き攣り気味に笑う。
「ちょ……シノハラ隊員、ちょっと落ち着こうか?」


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