鍼灸治療院 森の気
千葉県南房総市千倉町川戸238
0470−44ー2999
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■更年期障害
- 頭痛 めまい、耳鳴り 物忘れ 鬱 不眠 不安 倦怠感 しびれ、蟻走感
- 知覚過敏 知覚鈍麻 肩こり 腰痛、関節痛、筋肉痛 のぼせ、冷え 動悸
- 息切れ 皮膚の乾燥 湿疹 発汗 唾液分泌異常 ドライアイ 食欲不振 便秘
- 下痢 月経異常 残尿感 頻尿 性器下垂 性交障害 外陰部掻痒感。書いていて嫌になって来るのですから、読んでいても嫌になりますね。ましてやこれをやっているとなると、さぞかし大変だと思われます。婦人科、内科を始め、精神科、皮膚科、眼下、泌尿器科、まさか全部を受診するわけにはいきませんしね。
一般的に更年期障害は婦人科での扱いとなります。治療はホルモン療法が一般的ですが、不正出血を始めとしたいくつかの副作用が指摘されています。また、一説には癌のリスクの増加や、尿失禁の割合の増加も言われています。第二選択肢として漢方薬が使われていますが、日本でこれほど漢方薬での治療が前面に押し出されている疾患も珍しいですね。つまり、現代医学的な治療法がホルモン療法以外にないというのが現状なんです。
医師は何科、何科と専門分野を細かく分けています。皮膚科の医者は喘息の治療をしませんし、眼科の医者はうつ病の治療をしません。しかし、我々鍼灸師には何科という考えはありません。「鍼灸=肩こり、腰痛」というイメージが強すぎるのですが、整形外科の分野はもちろん、眼科、皮膚科、泌尿器科、婦人科、歯科に至るまで、なんでもこなすのが鍼灸師です。
先頭に書き連ねた症状の数々ですが、我々鍼灸師にはその一つ一つに対処方法があります。もちろん更年期障害の方が全部の症状を持っているわけではありませんが、それにぞれの患者さんに合った治療法が選択できるというわけです。まずは体全体のバランスの崩れを整える、その後に個々の症状を緩和させて行きます。こういった観点からみると、更年期障害は鍼灸の得意とする分野の一つでもあると考えられます。
■月経過多 ■月経不順 ■月経前症候群
- 更年期障害同様、上記の疾患に対する病院での治療はホルモン療法が中心となります。ホルモン療法はあくまで対症療法であり、その原因の解決にはなりません。更年期の欄にも書きましたが、ホルモン療法には副作用が伴います。月経過多や月経前症候群にはいわゆるピルが使われるのですが、何となく抵抗を感じる方もあるのではないのでしょうか。
鍼灸治療の利点の一つに副作用がほとんどない事があげられます。時にだるくなる、眠くなる、一時的に症状が強くなるなどありますが、それほど深刻なものではありません。それどころか、こういった状態になった後の方が鍼や灸の効果が実感されます。いったん体の中の悪いものが出て、その後にすっきりするといった感じです。
上記の疾患の原因は腹腔内の冷えと考え、これらの改善を第一とします。実際の治療には足や仙骨部のツボを用います。特に足にある三陰交というツボは婦人科疾患には重要です。私の場合女性の患者さんであればその疾患が何であれ、年齢などにもかかわらず、とにかくこの三陰交に鍼を施します。それほど女性にとってこの三陰交は重要なツボと考えていいでしょう。
月経過多、あるいは月経前症候群の患者さんは、月経の数日前からこの三陰交に灸をする事で症状を軽くすることが可能です。このツボへの灸は自らでも行える場所にあります。千年灸などの商品名で市販されている簡易的なお灸を用いる事も出来ますが、ちょっと練習してもぐさを形にしてすえる灸の方がより効果が期待できます。
■のぼせ ■冷え症
- 肩こりで来院した女性の患者さんとのやり取り。「冷え症ですね」「はい」「便秘気味ですね」「はい」「生理痛がありますね」「はい」「運動不足ですね」「なんでわかるんですか」。これは読心術でもなければ、私の洞察力が優れているわけでもありません。女性の肩こりの患者さんには、こういう体質の人が多いだけなんです。
東洋医学では「気」が全身を巡っていると考えます。気は生命活動を発揮させるエネルギーです。その気に変調をきたす事で病が発症するとも考えます。いわゆる「病は気から」というやつです。気の不足、気の有余、気の偏り、気の停滞などがその変調です。この中の気の偏り、特に上半身に気が集まり、下半身に不足した状態、これを上実下虚(じょうじつかきょ)と呼びます。
現代社会では精神労働者が増えています。特にパソコンは現代に無くてはならないものになりました。一日を通して目で画面を追い、頭で考え、手でキーボードを打つ。下半身はというと、一日椅子に座ったままです。エネルギーを消費しているのは目であり、頭であり、手であり、すべて上半身です。必然的に気は上半身に集まってきます。反面下半身に不足しがちです、これが上実下虚の状態です。
上実がもたらす症状は、のぼせであったり、肩こりであったり、頭痛、めまいや眼精疲労などです。下虚がもたらす症状は、冷え症であったり、便秘であったり、生理痛や腰痛などです。そして下半身を使わない、つまり運動不足なんです。
頭や肩、頸などに鍼を打つ、これでも充分治療効果は現れます。肩こりが楽になったり、頭痛が治まったり。しかし、これでは上半身に集まった気を動かしたにしかすぎません。せっかくなのですから、この気を下半身に引き下げてやろうではありませんか。そのために足などにも鍼を打ちます、こうしてそこへと気を導いてやるのです。この時使われた足のツボ、気を誘導するためのツボを誘導穴(ゆうどうけつ)などと呼びます。ちなみに、誘導穴の「穴」の字、東洋医学では穴と書いて「ツボ」と読みます。
■不妊
- 不妊の原因は男性側の場合もありますが、ここでは女性側に原因がある場合を前提に話を進めます。更に、器質的な不妊の原因がある場合も除外します。女性の基礎体温は月経周期と深い関連がある事は知られています。排卵を挟んで低温期から高温期へと移行します。この時妊娠が成立すればそのまま高温期が持続されます。
低温期と高温期の体温の差はわずか0.3〜0.5度ですが、このわずかな差が妊娠しやすい環境を作り出しているのでしょう。魚釣りの話で恐縮なのですが、水温が1度下がると昨日まで活発にエサを追っていた魚が口を使わなくなってしまうんです。「魚にとって1度の水温低下は上着一枚分」と言う人もいます。我々の体感的な1度はそれほど問題になりませんが、魚にとっての1度、あるいは基礎体温の0.3〜0.5度はそれらとは別なスケールでみなければならないようです。
さて、ここで問題になって来るのが冷え症です。ここでいう冷え症は、体温が低い状態をいっているのではなく、体を温める能力に乏しい事をさしています。体温はそのほとんどを筋肉で作りだします、ですからこういった人は筋量に乏しい人でもあります。「のぼせ、冷え症」にも書きましたが、肩こり、便秘、生理不順、冷え症を持った典型的な体質の方です。
東洋医学でいう「冷え」は現代医学の「冷え症」とはいくぶんニュアンスが違います。東洋医学において「冷え」は陰陽のバランスの崩れが原因で起こると考えます。冷えの状態は次の二つが考えられます。
陽 陰 陰陽のバランスが取れた健康な状態です。
陽 陰 陰(冷)が強くなりすぎて陽(温)を凌駕している場合。
陽 陰 陽(温)が弱まってしまい陰(冷)を抑制しきれていない場合。
陽 陰の場合は陰を抑制してやる治療法を、陽 陰の場合は陽を補ってやる治療法を施します。しかし、ほとんどの場合は後者であり、前者のパターンはほとんど見られません。いずれにしろこの冷えを解消する事で体内を妊娠に適した環境に整えるのが目的です。
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■逆子
- 歯ぐきの腫れている人のかかとに灸をする。痔の人の頭頂部に灸をする。胃もたれの人のすねに鍼をする。咽の腫れている人の手の指先に灸をする。これで病気が治ったとしたら少し驚きですよね。でも、東洋医学の書物には患部とはかけ離れた場所にあるツボを治療に使う事など当たり前に書かれているんです。
それどころか、古書には反対側治療なるものも存在しており、右の肩の痛みに対して左の肩を治療せよ、左の腰の痛みに対して右の腰を治療せよ、などというやり方が堂々と描かれていたりするんです。私はこの反対側治療を実践した事はありませんが、もしこれを患者さんに施したとしたらおそらく「先生、痛いのは左ではなく右です」と言われる事でしょう。
このように鍼灸治療にはちょっと曲芸に近いような治療法が多々存在するのですが、この逆子の治療もその類に入るかもしれませんね。鍼灸師に「逆子の治療のツボは?」と聞けば「至陰(しいん)」とほとんどの人が答えるでしょう。それほど有名な逆子に対しての至陰の灸、至陰は足の小指の先にあるツボなんです。
小指の先に灸をして逆子を正常に戻す、果たしてそんな事が出来るのか。でも、ちょっと考え方を変えてみてください、もしこの治療を実践して全く効果が無いのであれば今日まで伝わる事はありませんよね、どこかで途絶えていたはずです。しかし、今現在も存在しているという事は、何かしら効果があるという事を示しているのではないのでしょうか。
至陰に灸をすえる、しばらくすると「あ、動き出した」とお母さん。その後は自宅で灸をすえるように指導する。一週間ほど灸を続けると逆子が正常位に戻ります。当院での症例はそれほど多くはありませんが、何例かがこの灸により自然分娩に至っています。まあ、逆子の多くは自然に正常位に戻るとも言われています、それが灸による効果なのか、それとも自然に戻ったものなのか、その答えは神のみぞ知るなのですが。
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