FF9異聞/シーン4


 舞台はまだ、そのまぶたを伏せて、目覚めの時を待っていた。
 藍色に落ちついたばかりの空の下、客席にぴたりと構えられたプリマビスタの舞台。それ覆う屋根の冠を照らすのはまだ、中天に差し掛かった赤と青の月の光だけ。
 月の光によって濃く深く浮き上がる彫刻の屋根。その冠の中に刻まれたベランダの薄闇の中で、人々のうごめく気配がした。劇団付きの楽団が、開幕に備えて準備をしているのだ。
 そんな舞台の目覚めを今か今かと待ちわびる人々の姿は、灯りに照らされて淡い赤に染め上げられている。貴族席を埋める、イブニングドレスや燕尾服の人々や、一張羅を引っ張り出してきた一般席人々は、城に設置されたいくつもの大きなかがり火によって、屋根の上から普段着で見ている人々は、それぞれが持参した小さなランプによってであったが、その色に違いはない。
 王族席の玉座に収まった人物も、同じ。アレクサンドリア城の城主にして、アレクサンドリア王国の女王、そして『何とも溢れんばかりのお姿と迫力満点の御容貌』と評されたブラネ女王は、やはりかがり火の光に赤く照らされ、上機嫌の様子でそこにいた。常人の倍はあろうかと言う容量の身体をゆったりと扇子で仰ぎながら、ちょっと女性とは思いがたい顔に満面の笑みを浮かべている。
 そんな女王の姿に、貴族席ではこんな感想が交わされている。
「女王が民の前に姿を現されるのは、久しぶりですな」
「しかし、ご健勝なご様子でほっとしましたよ」
 ちょっとぎょっとする姿ではあっても、夫亡き後、民の声をよく聞く善政を敷き続けていた女王は、親しまれ人気を集めているようであった。
 一方、その母親とは全く逆の理由で人気のあるガーネット姫については。
「ああ、やっぱり絵姿などよりおきれいな方だねえ」
「でも何だか元気がないよ、何かあったのかな」
 一般席で、そんなことをささやき合う母子がいる。
 確かに、炎で照らされた空間の中、母親の斜め後ろに控えた彼女の顔は憂いを帯びて青白い。その星をちりばめたような黒い髪、知的に潤んだワイン色の瞳も、雪花石膏の肌も、もし明るく輝くならばさぞかしその場が華やぐことだろうに。顔を上げようとしない彼女の姿に、不安そうにさざめく人々は少なくなかった。
 しかし、待ちに待ったこの日に、いつまでも湿った話題は似合わない。
 そんな人々のお喋りも、城側に灯されたかがり火に、明かりを押さえるための金網の覆いがかけられて、観客席がすうっと暗くなると同時に静まる。
 城の王族席に控えた騎士が、準備が整ったのを見届けてこくりと頷く。
 舞台の、目覚めの時間だ。
 騎士は、ゆっくりとその背に負った剣を抜き、プリマビスタの舞台を覆う冠に向けて高く掲げた。
 辺りを覆う薄闇の中、剣に宿る輝きが、軽く振りおろされる。
 途端、かぁっと冠が輝きを宿し、高らかにファンファーレが鳴り響いた。
 舞台を照らす光の帯が舞い踊り、巨大な冠は黄金で作られたそれのように光を放つ。楽団のいる辺りから観客席に向けて色とりどりの紙ふぶきが舞った。
 軽快な音楽と、視界を支配する色や光の華やかさに観客が心を奪われれると、紙ふぶきが収まるに連れて、曲は徐々に重みを持ったメロディーへと変化していく。力強く響くホルンの音が、その力を押さえ込むように低くなっていく。
 激動を予感させる音楽の中、とうとう舞台はその冠を開き始めた。
 殻を破った物語の先触れを勤めるのは、その冠の下から現れた、『王』の衣装をまとった一人の男。
 一歩進み出て男が吸い込む気配に、観客がぐっと息を飲んだ。
「さて皆様」
 と、男は朗々とした声で語り出す。
「私どもが今宵演じますのは、はるか遠い昔の物語でございます…。場所はとある王国。民を苦しめる戦を終わらせようと、王の暗殺を企むヴィジランツという組織がございました。そのヴィジランツの一人マーカスは、ある日情報を得るために城へ忍び込み、衛兵に見つかってしまいます。追い詰められ、城の一室に飛び込むマーカス。その部屋の主とは王の美しき一人娘コーネリアでありました。重なり合わぬ運命のはずの二人の出会いは、一体何を引き起こすのか…この物語、どうか手には厚手のハンカチを用意してご覧ください…」
 語り終えた男からスポットライトは離れ、舞台にしつらえられた扉の辺りへと向けられる。
 扉のところでは、一人の女性がドアを開け、その外にいる人物と話をしている様子であった。
 窓の外はあわただしく衛兵達の走る音。
 柔らかな絹の夜着をまとった女性は言う。
「ええ、私は無事ですわ。賊はこの部屋には来てはおりません」
 死角になっているドアの外から、衛兵の声がする。
「そうですか。ではコーネリア姫。賊を捕らえるまで、扉の前に衛兵をもう一人置かせていただきます」
「ええ。頼みます」
 姫と呼ばれた女性はそう返事を返すと、扉を閉めた。
 と同時に、部屋の寝台にもう一つのスポットがあたる。女性はくるりと振りかえると、燭台掲げて寝台の様子を伺った。
 誰もいないはずの場所にあたるスポットに、観客は注目する。
 ややの沈黙の後、その寝台のカバーがめくれる。
 そして、ベッドの下から、一人の盗賊の姿をした男が現れた。盗賊は短剣を構え、けして姫から目を離そうとはせずにゆっくりと立ち上がる。そして、警戒心も露に、低く鋭い声で問いを放った。
「何故、庇った」
 姫も男から目を離さず、に答える。
「分かりません」
 その手に持った燭台は、わずかに震えている。
「分からないのに、助けたのか」
「分からないから、助けたのです。善人かも知れぬ人を、衛兵に渡すことは出来ません」
 『善人かもしれない』。その言葉に、盗賊はうろたえる。
「俺は城に忍び込んだだけで罪人だろう?」
「罪人が悪人とは限りません。『罪人』とは、この城に住む者が、己に都合の良いように決める基準ですから」
 その『罪人』を決めているのは、この国の王。その王の娘とは思えぬ物言いに、盗賊は興味を引かれたように尋ねる。
「まるで自分はこの城の住人ではないような言い方をするな、コーネリア姫」
 姫の掲げた燭台の炎が、ぴくりと震える。
「…『コーネリア姫』は、この城の住人ですわ。ただ…」
「ただ?」
 姫は首を振る。
「何でもありません。窓の外の衛兵達もそろそろここを離れたことでしょう。そろそろお帰りになられませ」
 盗賊は、それ以上追及しなかった。盗賊は短剣を下ろして、頭を下げる。
「助けていただいたこと、感謝する」
 そして窓から去ろうとした盗賊を、姫は一度呼び止めた。
 振りかえると、姫は盗賊をまっすぐ見詰めていた。
「名を、教えていただけますか。次に会えた時にこそ、あなたが善人かどうか確かめられるように」
 盗賊は一瞬逡巡した。
 じっと見詰め合う2人の沈黙に、観客がぐっと息を詰める。
 名乗るか、否か。
 名を明かすことは、危険に決まっている。それに、また会うことなど、ない方が良いのだ。
 けれど。
「マーカスだ。コーネリア姫」
 姫を見つめ返して答える盗賊。
 そして、盗賊はひらりと窓から身を躍らせた。
 名乗りまでの緊張を解いて、ふうと息をつく観客達。そして、運命の出会いのその後に期待を高めていく。
 情報収集の失敗を仲間に咎められながら、思い悩むマーカス。仲間を裏切る気はない。けれど、王を暗殺すれば、あの不思議な憂いを帯びた姫を不幸に陥れるのではないか、と。
 それに気になるのは、『この城の住人ではないのか』と言う問いの答えだ。民の前に現れる度、幸福そうな微笑を見せているはずの彼女が、何故あのようなことを?マーカスは、あの夜のことをただ一人の親友・ブランクに話しながら、もう一度あの姫に会い、あの答えの意味を問い詰めたいという思いを募らせる。
 会いたいなら会いに行け。そんな空気が、舞台の前にあふれる。
 観客をじらしながら数日後、とうとうマーカスは、情報収集を口実に、再びコーネリアの居室に踏みこんだ。
 コーネリアは、そんなマーカスを笑顔で迎え入れた。彼女の方もこの数日間、マーカスの事に心を占められていたのだった。その日から、マーカスは毎夜のごとくコーネリアの元へ通い始めるようになる。
 会う毎に、互いのことを想い合うようになっていく2人。
 惹かれ合う恋人同士の姿に、観客席の婦人達が頬を染めて魅入る。
 2人の距離が縮まる毎に、音楽は高く切なげに震えた。
 昼は互いのことを想い、夜は互いのことを語らいながら、マーカスはコーネリアが、ただ心のままに笑ったり泣いたりすることも出来ず、きれいに飾られて微笑む『コーネリア姫』という人形を演じなければならぬ運命を嘆いていることを知り、彼女を救い出したいと思う。
 そのためには王を倒さねばならぬとマーカスは考える。2人が逢瀬を重ねる間も、戦争は激化し、民はますます貧困にあえいでいる。
 「王を暗殺せねば」。マーカスの決断を期に、物語は激動の中盤へ入る。
 数人の仲間と共に、城へ侵入するマーカス。
 城は、不気味なほどに静かだった。
 弦楽器と管楽器がなりを潜める中、ドラムの不穏なリズムだけが舞台に響く。
 調べの通りに衛兵達を避けて、順調に王の居室にたどり着くマーカス達。
 そして、まさしく王の寝台に向かって剣を振り下ろそうとした瞬間のこと。
 かっと辺りは明るくなり、たいまつを掲げた衛兵達がマーカス達を取り押さえてしまったのである。暗殺計画が、王に知られていたのだ。
 マーカスがコーネリアの元へ通っていたことをも知っていた王によって、コーネリアは塔に幽閉される。ほんの一条の光を投げかける小さな天窓に向かって手を差し伸べるコーネリア。
「ああ!私のこの身が小鳥のそれであったなら、今すぐにでもあなたの元へ飛んで行くのに!」
 マーカスは明日にも処刑されるかもしれない。
 引き裂かれようとしている運命を嘆き、悲痛な叫びを投げかける。
「今ここにある私の身体は、私の抜け殻でしかありません。私のこの身体を満たすべき心はあの人の腕の中にしかないのです。あの腕に抱かれて初めて、私の身体は心を得て、至上の幸福に満たされるのです!それなのに、運命は私からあの人を奪って行こうとしている。ああ、神よ!私から心を奪おうと言うのなら、この抜け殻もいっそ焼き滅ぼしてくださいませ!」
 現実の世界で聞くなら仰々しい言葉も、舞台の上のコーネリアにはふさわしい慟哭の叫びとなる。前半部分のクライマックス、泣き崩れるコーネリアの演技は、完全に観客の心を虜にしていた。
 大切な人を失おうとしているコーネリアの悲しみに嘆息する一般席。
 ハンカチで目頭を押さえながら劇に見入る貴族席。
 そして、もらい泣きをしているのは、貴族席にいる小さな2人の侵入者達もであった。
 すっかり劇に夢中になっている貴族達が気にも留めないのをいいことに、芝居が真正面から見られる階段部分をちゃっかりと陣取っている。
「くぅ〜っ、いい芝居だぜ!あのコーネリア役、去年以上の熱演だなあ。わざわざ屋根の上を通ってここへ来たかいがあったってもんだ、なあ、ビビ!」
 握り締めたこぶしを震わせて言うパック。
 呼び掛けられたビビの方は、
「うん、そうだね…」
と無意識に頷きながらも、話しかけられたことさえ殆ど気付かないほどにのめり込み、しきりに袖で顔をこしこしとぬぐっている。
 上の空の返事に、パックは可笑しそうに笑った。
 ここにたどり着いた途端に、プリマビスタの美しさと舞台を交錯する光と音に心を奪われたまま、今までずっとこの調子。出会いのシーンに息を呑み、なかなかコーネリアに会いに行こうとしないマーカスにそわそわし、王の暗殺に向かうシーンでぎゅっと手を握り締めて。
 一生懸命、カードゲームで勝ち獲ったチケット。
 知らない貴族に頼み込んでまで連れてきてもらった、見知らぬこの町。
 大の苦手の高いところを我慢してまで、見たいと望んだこの舞台。
 夢にまで見た世界が、今期待以上の輝きを放って目の前で繰り広げられているのだ。
 シーンとシーンの隙間毎にため息をついて見入るビビの様子が、パックは楽しくて仕方ない。
――わざわざ連れてきてやったかいがあるってもんだ。
 次のシーンでどんな反応をするのだろう。話の先を知っているだけに、なおさらそれが気になる。
 舞台は幽閉されたコーネリアから、残ったヴィジランツのメンバーへと視点を変えるところだ。このシーンでは、国王が暗殺計画を知った理由、すなわち、情報をもらしたヴィジランツの裏切り者の正体が明かされるのである。
――きっと、目真ん丸くして驚くんだぞ。
 そんなことを思いながらビビの様子を伺うパック。
 しかし、ビビの反応はパックの予想よりずっと早く現れた。
 ヴィジランツのメンバーが登場した瞬間、ビビの肩が大きくびくりと跳ねたのである。
――おいおい、まだ驚くところじゃないぞ?
 一体何がビビを驚かせたのだろうと、パックの視線が舞台とビビの間を往復する。しかし、凍り付いて舞台にくぎ付けになっているビビが何を見つめているのかを、見定めることは出来なかった。
 パックが戸惑っている間に、芝居は続いていく。
 舞台に登場したヴィジランツのメンバーは4人。マーカスの親友・ブランクに、他3人。
 4人は、今この場にいる中に裏切り者がいる事は間違いないと考える。互いを警戒しながら、話し合う4人。
 小柄な男が言う。
「裏切ったのは、マーカスとコーネリアの仲を知り、かつ王に暗殺計画を伝えることが可能な者、と言うことだ」
 その言葉に、他の3人が、驚いたように目を見開く。
 それに当てはまるのは、この場にたった一人しかいない。
「シナよ。つまりそれは…」
 金の髪の若者が、震える声で呟いたのを合図に、3人の視線が、ゆっくりと裏切り者へと向けられる。
 その視線の先にいるのは、ブランク。マーカスから唯一コーネリアの話を聞いていた、親友だったはずの男。
 芝居の内容を知らない者の多い一般席から、驚きの声が上がる。
 ごまかせぬと悟ったらしいブランクは、仲間だった者達からゆっくりと離れながら言う。
「考えても見ろ。コーネリア姫が隣国の王子と結婚すれば、二つの国は平和になるのだ」
 その言葉に、金の髪の若者がかっと激昂し、剣に手をかけた。
「笑止千万!それですべてが丸く納まれば、世の中に不仕合せなど存在しない!」
「落ちつけジタン!」
 静止する仲間を威嚇するように、しゅっと振り上げられる金の尻尾。
 裏切り者が判明した時でさえ微動だにしなかったビビが、その瞬間ひゅっと息を吸い込んだ。
――やっぱり、あの人だ…!!
 町へ来る時に出会った、ジタンと名乗ったあの人。
 金の髪、金の尻尾。役柄上、昼に会った時のような明るい顔はしていないけれど、精気に満ちた目も間違いない。
 ほんの数時間前に出会い、触れ合った人が、今目の前に繰り広げられている夢の世界の中にいる。
 舞台全体が見えるようにと取った階段十数段分の距離が、急に消えて無くなったような気がした。声をかければ、振り向いてもらえそうなくらいに。
 手の届きそうな舞台では、ジタンが仲間達の静止も聞かず、ブランクに向けて剣を振り下ろす。
「おのれ!友の仕合せを願う心はなかったのか!?」
 思わず頷くビビ。
 けれどブランクは剣を避けて花道へと飛び下がりながら、ジタンの台詞に顔をゆがませる。
「言うなジタン!俺は、これ以上の無駄な流血を避けるため、最善と思える道を選んだのみ!」
 ブランクを追って花道へと駈け入り、剣を振り上げるジタン。
 その2人をスポットが追う。
「その考えが甘いと言うのだ!」
 その台詞と共に響く、鋭い剣戟。
 立て続けに打ち込まれる剣を、見事な身のこなしではじき返すブランク。
 花道の中程で演じられる立ち回りに、観客達が息を飲む。
 ビビの様子に気を取られていたパックも、弾ける金属音に耳をひたと寝かせて、目を見張った。
「ひゅ〜、まるで本身の刃みたいな音だ。演技とは思えないな。さすがリンドブルムの一流役者は、動きも違うぜ」
 一流役者。
 その言葉に、ビビのおなかの辺りでひやりとしたものがわだかまる。
 スポットを浴びる彼は、上演中の芝居の役者。ビビは、暗がりの中でそれを見ている大勢の観客の中の、ただ一人でしかない。
 きっと彼も大通りで会った大道芸人達と同じ。ビビのために立ち止まっていてはくれないだろう。
 縮まったと思えた距離に、見えない壁が立つ。
 一際高い剣戟に、跳ね返されて飛び離れるブランクとジタン。
「さらばだ、ジタン!」
「そうはさせるか!」
 立ちまわり終了の台詞に、観客がわっと拍手を送る。
 音楽がかき消されそうなほどの拍手に送られて、逃げるブランクと追うジタンが、花道を下っていく。
――行っちゃう…。
 呼びとめたい気持ちに駆られても、ビビの声はのどで張りついたままだ。
 呼んでも、きっと、無駄。
 小さな手を打ち合わせても、この耳が割れんばかりの拍手の渦に、かき消されてしまうだろう。
 足元から、体が透明になっていく気がした。
 ブランク役が、花道のそでへと駈け込んで消える。
 続いて、ジタンも。
 いなくなってしまう。ビビの身体が震えた。
 しかし。
 そでに張られた幕を跳ね上げたジタンの、その姿が見えなくなる、寸前。
 くるりと、ジタンが首だけでビビの方を向いた。
 たった今までの裏切り者への怒りも憎しみも消えた、素の顔で。
 どきんと、ビビの心臓が跳ねあがる。
 目が、はっきりと合って。
 ジタンの片目が、バチンと瞬いた。
「…!!」
 それも一瞬の出来事だった。ビビが瞬くと、もうジタンは幕の中へ姿を消していた。
 すでに舞台へと視線を戻そうとしていた観客の殆どが、それに気が付かなかった。気付いても、ジタン役がよそ見した、位にしか思わなかっただろう。
 だから、今の瞬間ジタンがビビを見ていたことを証明するものは何もない。
 願望による、幻でも見たのだろうか。
 信じられない気持ちでそんなことをぼんやり思うビビ。
 しかし、ビビにつられてジタンを見つめていたパックだけは、2人の見交わした視線に気が付いていた。
「お、おい、一体今の何だよ?」
 パックにぐいっとそでを引っ張られて、ビビははっと我に返る。
 幻じゃ、ない?
 そう思いながらもビビは、パックの問いに答える言葉を持たなくて。ただ、
「わかんない…」
と、首を振るだけだった。

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山月のはんこ


   こめんと
 そーおですとも。このシーンが書きたかったんだよっ!
 いえ、書きたくないシーンなんて一つも書いてませんけどね。特に書きたかったんだよう。
 この話は、山月のプレイ日記みたいなところもあるもので…。だって冒頭で真っ先に出てきたプレイキャラクターが舞台に出てきたら、注目するじゃん、どうしても!だってあいつタンタラスの中でもデザイン浮いてんだもんよぉ〜!!
 はあ。とにかく、これから先も書きたいシーンはごろごろしてんだ。だって山月、FF9のほぼすべてを愛してるから。
 どうしてもシーン1みたいな勢いとインパクトは失せちゃうけど、頑張って書くぞ!