論理哲学論考 1-7 6.1-6.5 6.31-6.37 6.371-6.375
      
6.375 論理的必然性だけが存在するのと同様に、論理的不可能性だけがまた存在する。
6.3751 例えば、ふたつの色が視野の一箇所にともに在ることは不可能、しかも論理的に不可能だ。それは色の論理的構造によって排除されるのだから。
この矛盾が物理学においてどう表わされるか考えてみよう。それは、おおよそこうだ: ひとつの粒子が同時にふたつの速度をもつことはあり得ない、つまり、ひとつの粒子は同時にふたつの場処には在り得ない、つまり、同じ時、色々な場処における諸粒子は同一ではあり得ない。
(ふたつの基本的文の論理積はトートロジーでもコントラディクションでもあり得ないことは明らかだ。視野の一点が同時にふたつの相異なる色をもつという言明はコントラディクションだ。)