論理哲学論考 1-7 6.1-6.5 6.31-6.37
      
6.37 或ることが生じたということから別の或ることが生じざるを得なくさせるような、そんな強制は存在しない。ただ何らかの論理的必然性だけが存在する。
6.371 いわゆる自然法則全般は自然現象全般の説明だという錯覚が、近代的世界観全体の基礎を成している。
6.372 それで、ひとびとは自然法則全般のもとに、何やら不可侵のもののもとでの如く、立ち尽くしている。古人が神や運命のもとにそうしたように。
そして、どちらも正当性と不当性をともにもってはいる。しかし、新たなシステムのもとでは総てが説明されているかのように見えてしまうのに対して、はっきりとした断絶を認めている点で、古人の方が明晰だ。
6.373 世界は私の意志とは独立している。
6.374 たとえ我々が望むことの総てが生じたとしても、それはやはり謂わば運命の恩寵でしかないだろう。それを保証するような、意志と世界の間の論理的聯関など存在しないのだし、それに、我々は仮定された物理的聯関そのものをまた欲することなどできないだろうから。
6.375 論理的必然性だけが存在するのと同様に、論理的不可能性だけがまた存在する。 〔6.3751