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UPDATE 2005.10.02

 【第 3話】 約束

アパートに着き、小一時間取り留めの無い話を繋ぎながら、啓太郎は隙を窺っていた。

 

 「いやぁだぁ〜〜〜、啓ちゃんエッチだぁ〜〜〜」

 

嫌がる陽子に、一気に襲い掛かった啓太郎は、頑なな防衛線を突破し、なんとか口唇を

重ねる事に成功。

 

「もぉ〜、啓ちゃんエッチだから、私もう帰るぅ。」

 

1人暮らしをしている血気盛んな26歳の男のアパートに、彼氏がいようとも来ているのだから

それなりに“脈”があるだろうと、強行突破を試みた啓太郎だが、ここは引く事にした。

何故なら今夜、“種”は蒔いた。

そう、「口説く」というスタートラインに自分は立っているんぞというアピールはした。

あとは、「芽が出るかは解らないけど、水は撒いてみて。」という彼女のスタンスを

引き出す事にしたのだ。

 

「判った。ごめん。いきなりだったもんな。

でもさ、彼氏がいようとも陽子の事を口説きたいって程、惚れちゃったんだよぉ。

勿論さぁ、彼氏がいるのだから、突然で戸惑うだろうし少しの間、考えてくれよ。」

 

「えぇ〜!?」と困惑する陽子。

 

「考えるくらい良いじゃねぇかよぉ。それで子供が生まれる訳じゃねぇんだし。

だからさ、一ヵ月後、そう来月の同じ日までの一ヶ月間の間、考えてよ。

それで、会社か自宅に電話して。(※注1)

嫌でもどっちでも、必ず電話頂戴よ、マ・ジ・で。」

 

「さぁ〜、どぉかっな。とりあえず私、帰るね。」

 

会社の電話番号は名刺を渡しているので、自宅の番号を教えて、

終電も無いのに無理やり自宅まで連れて来てしまった手前、男気を見せる為

啓太郎は彼女を自宅近くまでタクシーで送り届けた。

 

〜一ヵ月後の同じ日〜

 

「赤城さぁ〜ん、2番に電話です。」

日中、会社に啓太郎あてに1本の電話があった。

 

「はい、お電話変わりました赤城でございます。」

営業職の啓太郎は、当然お客様対応モードで電話に出た。

 

「もしもし、陽子ですけど。」

 

「おぉっ・・・・!」

掛かった!電話をくれた時点で、掛かった。

 

と、啓太郎が思いをめぐらせているのも束の間、陽子が言った。

 

「電話したからね!約束は守ったからね!それじゃぁね!」

 

「おいおいおい、ちょっと待てよぉ。

折角、電話くれたのに寂しいじゃねぇかよ。

ゆっくり話したいのに。

だからさぁ、今夜9時過ぎには帰ってるから、家に電話ちょうだいよぉ。」

 

「ん〜〜〜ん、わかんないけどね。」

 

電話を切る瞬間、啓太郎が言った。

「電話ありがとう。マジ嬉しいよ。」

※注1:1989年に携帯電話の普及は皆無。

 

「かりそめのSwing」

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