上方浪曲ニュース最新号
2002.10
一心寺寄席100回目
芸術祭協賛で記念公演


 大阪唯一の定期浪曲寄席、一心寺門前浪曲寄席は、十月公演で百回目を達成、七日から三日間、芸術祭協賛公演として開催された。
 一心寺寄席は平成六年七月十一日旧一心寺シアターでの第一回公演から八年四ヶ月、途中改築のためパート2に会場を移した期間も含めて、毎月三日間、一回も休まず百回目を迎えた。
 この寄席で初舞台を踏んだ新人も多く、浪曲親友協会の唯一の道場として新人からベテランまでこぞって出演し、衰退が言われる浪曲の砦としてファンの期待にこたえてきた。入場者数も年々尻上がりで増えており、今年七月からは文化庁の芸術団体重点支援事業に指定されて、安定した維持運営が図られることになった。
 十月公演では、春野百合子、筑波武蔵、京山宗若、真山広若、真山誠太郎が出演し、ファンの期待にこたえた熱演を聞かせた。中でも二日目の百合子の「高田の馬場」は、近来出色の出来で、インターネットの掲示板にも称賛の投書が寄せられていた。

三原佐知子昼夜六席の熱演
大阪文化祭参加で独演会


 

十月十二日、ワッハ上方で「三原佐知子浪曲の世界」が開催された。これは大阪文化祭参加公演で、三原佐知子の浪曲道の軌跡をたどり、転機となった二作品と新たなチャレンジを示す作品を口演し、一人の浪曲家がその芸風を確立する道程での出会いと発見の重要さを表現しようというもの。
 口演した作品は、三原佐知子が少女浪曲時代から憧れと尊敬を抱き続け、目標としてきた冨士月子の十八番で後年月の栄から贈られた「三味線やくざ」、民謡酒場の専属歌手時代に身にしみた民謡の魅力を浪曲の中に取り入れ三原の出世作となった「母恋あいや節」、そして今回初上演のポピュラー音楽家西浦達雄の編曲による全編シンセサイザー演奏の音楽浪曲「恋と武士道」の三篇。
 「三味線やくざ」は、金屏風とテーブル掛けのオーソドックスな浪曲スタイルで、中川加奈女の三味線一丁で口演、「母恋あいや節」は、浪曲三味線のほか、長谷川一義の津軽三味線、井上整山の尺八を下座に、独り芝居の立体スタイルで演じ、新作「恋と武士道」は音楽性を重視してスタンドマイクによるコンサートスタイルで歌うなど、三作品それぞれの演出を使い分け、三原浪曲の幅広さを示した。
 昼夜六席全編声振り絞る大熱演に、立ち見も出る満席の客席も熱狂、幅広い浪曲の可能性に堪能したようだった。

参考「三原佐知子の浪曲行路に幸あれ」浪曲評論集5

近松劇場の棚読みに浪曲
四郎若・初子今年も出演


 近松の世話物を新劇の舞台で再現しようと、シリーズで公演されている関西芸術アカデミーの「近松劇場」に今年も松浦四郎若と藤信初子が棚読みで出演する。
十三回目の今年の演目は「博多小女郎波枕」。大阪の商人が博多の遊女と恋に落ち、身請けの金のために悪の道に転落する悲劇。表淳夫の台本、筒井庸助の演出で関芸の若い俳優達が近松悲劇に挑む。
 歌舞伎や文楽では義太夫がちょぼを務めるところを、芝居も新劇なら棚読みも浪曲でと要請され、四郎若も協力してきた。二時間の芝居に語りのない部分でもずっと出ずっぱりのため、心理的にも大変な舞台だが、今や四郎若の棚読みはこの公演になくてはならぬものになっている。
 公演は、十一月七日二時と七時、八日二時と五時、の四回北浜のコスモ証券ホールで。入場料は四千円。

国本武春の来演で
NHK東西浪曲大会


 NHK東西浪曲大会は、九月二十一日大阪NHKホールで開催された。今年は東京から国本武春が来演、春野百合子、京山福太郎、三原佐知子、松浦四郎若、真山広若の関西勢に交じって「英国密航」を語った。
 この公演はNHKのテレビ録画も兼ねており、百合子・武春組は十月二十七日午後五時から放映される。その他は十二月八日の公開録画収録分と組み合わせて来年早々にも放送の予定。

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