エディがAV(オーディオ・ビジュアル)やホームシアターに関して熱く語る


次世代ディスクレコーダー想2007秋

(2007.9.23)


 ソニーからブルーレイレコーダー4機種が
 一気に発表された。この辺りで次世代ディスクレコーダーに
 ついて感じることをまとめてみる。



    エディの最近の録画生活

 ブルーレイレコーダーについては2月にコラムを書いているが、
 (⇒「ハイビジョンレコダー想2007春」
 高画質・高音質のソースはDVDにダビングできない、
 それで250GBしかない「RDZ−D70」のHDDが逼迫してきており、
 ブルーレイレコーダーの購入は時間の問題だと述べた。

 しかし、HDDが180GBくらいでひとまずストップしたため、
 ブルーレイレコーダーの購入はせずに済んでいる。
 画質・音質を落としてまでDVDにムーブしたくないと思えるような
 高画質・高音質の放送が「のだめカンタービレ」「プラネットアース」終了後に
 ないからHDDがいっぱいにならずに済んでいる。

 そうは言っても、VHSの時代からの録画マニアと自負する私であるから、
 常にブルーレイ機は気になっている。
 皆さんご存知のように、ハイビジョンディスクレコーダーとしては
 ブルーレイとHD−DVDがあるわけだが、興味はもっぱらブルーレイだ。

 消費者不在のメディア戦争はとうの昔に懲りて呆れて、
 「午前1時を過ぎて峠を越えた徹夜状態」の如く冷めている私だ。
 HD−DVDを推す東芝の様子などは、
 「一度出した手は引っ込められないんだなー。大変だねー」
 と可哀相な思いで見ている。
 メディア戦争は、両陣営が頑張れば頑張るほど消費者は冷めていく。



    ソニーが本気を出したブルーレイ機

 そう思っていたら、ソニーから力のこもった新モデル4機種が発表された。

SONY
BDZ-X90

※11月8日発売予定
(予想売価 200,000円前後)


4モデル中のTOP、高品位な1125P信号を出力する「DRC-MFv2.5」、次世代オーディオ出力にも対応するなど内容てんこもりの機種

 昨年にAVマニアをひどくがっかりさせた二層ディスクへの記録に
 対応しているのは当然として、「MPEG4−AVC」エンコーダー搭載によって、
 ハイビジョンレコーダーとしては初めて、ハイビジョン画質を保ったままの
 トランスコーディングに対応した。これは一つ画期的なことだ。
 
 従来はハイビジョン放送を録画する場合、ストリーム記録する「DR」しか
 選択肢がなく、その他の「XP」とか「SP」などといったモードは
 MPEG2を使ったSD画質に変換して記録せざるを得なかった。
 それがMPEG4のビットレート次第で数モードの記録方法が
 柔軟に選べるようになった。ソースに応じてレートを設定すれば、
 内蔵HDDを効率良く使えるし、ディスクに長時間記録することもできる。
 やはりこのようにユーザーの使い勝手に幅が出るというのは嬉しいことだ。
 
 そしてこれが4機種に共通したフィーチャーになっているのが嬉しい。
 最も下のモデル「BDZ-T50」は内蔵HDDが250GBでシングルチューナーだが
 予想では10万円を切る価格で入手できると噂されており、
 そうなると一気に売れそうな予感だ。
 「ソニーってば、やればできるじゃない!」と思う反面、
 「なぜもっと早くやらなかったの?」と思ってしまうが・・・。
 
 4機種の内蔵HDDは250GB、320GB、最高でも500GBというのは
 若干少ない気もしたが、従来のHDD/DVDレコーダーの場合は
 「ムーブできない」「ハイビジョン記録はDRモードのみ」
 という縛りがあったから500GBだの1TBだのが必要になっていたと
 考えることができるから、ブルーレイディスクに書き出せて、
 しかもMPEG4のトランスコーディングがある今回のラインナップでは
 適切な容量なのかもしれない。内蔵HDDが多ければ多いで
 確実にコストアップ、価格アップに跳ね返るわけだから、
 ソニーの企画の判断はあまり悪くない判断だと思っている。
 
 最高機種の「BDZ-X90」は内蔵HDDが500GB、デジタルWチューナー、
 高品位な1125P信号を出力する「DRC−MF」「DeepColor出力」、
 次世代オーディオ出力対応のHDMI端子、高画質・高音質パーツ使用、
 その他従来からのXMB(クロスメディアバー)、おまかせ・まる録、
 写真を取り込むアプリケーションなど、まさに最高の出来栄えと言って
 いいのでは?と思える。現在の予想売価は20万円となっているが、
 15万円くらいまで下がれば私としてもかなりググッと来るものがある。



    HD-DVDの良さを精一杯考えてみる

 さて、HD−DVDである。
 大手企業連合のBlu-ray陣営に比して圧倒的に不利と思えるHD−DVD、
 一層ディスクで15GB、二層ディスクでやっと30GB、
 ブルーレイは一層で25GB、二層で50GBと、容量でも大きな差があり、
 しかもPS3の発売によってBlu-ray再生のプラットフォームが
 数百万台というオーダーで世界にバラまかれ、海外では戦略的な
 格安HD-DVD再生機をリリースして対抗せざるを得なくなっている。

 見た限りでは全く同じ、ハイビジョンが記録できる12cmディスク。
 それが2つ並び立たねばならない理由などあるのだろうか?
 いや、ないはずだ。だからBlu-rayで決まりでいいじゃないか。
 ソニーの新モデル4機種の発表を見た人の多くが、
 「あ、これで勝負あったな。ブルーレイで決まりだ」
 と、そう思ったはずなのである。
 
 だが、HD−DVDのことも、一応この機会にちゃんと考えてみよう。

TOSHIBA
RD-A600

(売価 135,000円程度)

二層HD-DVD記録に対応した上位機種。内蔵HDDは600GB、少ない300GBの下位機種は1万円ほど安い

 HD−DVDの有利な点は、現行DVDと同じ0.6mm貼り合わせ構造の
 ディスクであることによる
 「ディスク製造コストの安さ」
 ピックアップ部も現行DVDの製造設備がそのまま使える部分があることから
 「ハード製造コストの安さ」
 が大きく挙げられる。

 まず、現在のブランクディスク価格をヨドバシで調査してみた。
 安価で最も使う機会が多いと思われるR(一回書き込みのみ)で比べてみる。

   BD−R   HD−DVD−R
 一層25GB  1200円程度  一層15GB  1500円程度
 二層50GB  3800円程度  二層30GB  4000円程度

 こ・・・これは??容量が少ないくせに価格が高い!
 しかも15GBでは地上デジタルで2時間、BSデジタルでは80分程度しか
 録画できないから、HD−DVDでは高価な二層ディスクに頼る機会が
 多いはずで、それが4000円もするなんてあり得ない!
 この勝負、HD−DVDの惨敗である。
 
 次にハードコストの比較。
 「RD-A600」は発表時の店頭予想価格は20万円となっていた。
 今回のソニーの「BDZ-X90」も店頭予想は20万円になっている。
 両者はHDD容量は600GBと500GB、Wチューナーで、大きなコストが
 かかる部分は大体同じスペックになっている。
 HD−DVDのハードの割安感は感じられない。
 この勝負は引き分け。
 
 それから、「HD−DVDは現行DVDからのデータコピーに適している」
 という点がある。詳しく説明すると、
 「VRモードで記録されたコピーフリーDVDをHDD経由で高速・無劣化で
  HD−DVDに書き出せる」

 しかしここには疑問を差し挟む余地が大いにある。
 
 ■「VRモードで記録」→最も使われていたのはビデオモードのDVD−R。
  DVD−RAMと、RWのVRモードディスクのみが対象となる。
 ■「コピーフリー」→2004年4月から地上/BSデジタルは全てコピーワンス。
  それ以前のデジタル放送を録画したものか、アナログ放送を録画した
  ディスクのみが対象となる。
 ■「HDD経由で」→ディスクを一旦HDDにコピーした後にHD−DVDに
  書き出すという二度手間をどれほどの人が行うのだろうか?
 
 HD−DVDの現行DVDとの親和性というメリットも、
 実際にはその有効性が発揮できる機会はかなり少ないと思われる。
 
 以上から、HD−DVDが有利な点は現時点では見当たらない、
 と私の脳内では結論づけた。



    ここ4年で激変した録画メディア

 世界初のブルーレイディスクレコーダーは2003年4月の発売だ。
 ソニーの「BDZ−77」である。当サイトでもコラムで取り上げている。
 (⇒「Blu-rayディスクレコーダー発売!」
  ※昔のコラムはページデザインが垢抜けてないなぁ〜。当サイトも見やすくなったのねん
 それから4年半が経過していることになる。そおかぁ。
 
 2003年当時はD-VHSがハイビジョン録画の主流だったが、
 今やほぼ完全に姿を消した。いや、それは新製品がなくなっただけであって、
 今でもD-VHSを使用しているユーザーは多いと思われる。
 かつてD-VHSで録画していた人の全てがブルーレイ機に
 シフトしているとは思えないからだ。
 何なら次世代ディスクフォーマット戦争が決着するまでD−VHSで
 しのごうと思っているユーザーも少なくないだろう。
 
 2003年から2005年くらいにかけて、DVDレコーダーが一気に普及した。
 そう、ブルーレイ機が登場した時期は、DVDレコーダーすら
 普及していない時期だったのだ。やっとDVD録画が一般化したところで、
 「はい、次はブルーレイを買ってください」
 というのはいささか性急とも思える。
 この時期にVHSからのメディアチェンジをした消費者にとっては、
 「ついこの間買ったばかりなのに、もう買い替えなければならない」
 という事態は納得できないものがあろう。

 地上デジタル放送が開始されたのが2003年12月であるから、
 ハイビジョン放送の普及とDVDレコーダーの登場が
 たまたま一致しただけなのだが、今振り返れば
 DVDレコーダーというのはVHSからハイビジョンディスクへの
 橋渡しの役割を担ったとも見ることができ、
 旬の短い録画メディアになるのかもしれない。

 2003年当時はハイビジョンソースはBSデジタルだけであったから、
 ハイビジョンレコーダーといえばBSデジタルを録画するためだった。
 それが今や地上デジタルは全国展開、受信可能エリアは90%以上になった。
 それを考えると、今は既にハイビジョン録画が安心してできる、
 そういう製品市場が形成されていて安価に購入できる、そういう状況に
 なっていて然るべきなのであるが、残念ながら次世代ディスクレコーダーは
 10万円を切るような状況でもないし、ブルーレイとHD-DVDとのメディア戦争が
 行われているという有様である。
 
 ソニーが力の入ったブルーレイの新機種4モデルを一気投入したのに続き、
 シャープも簡単操作に特化したブルーレイ機を投入してきたことで、
 次世代ディスクのフォーマットが決まり、消費者が安心かつ安価に
 ハイビジョン録画できる状況になると期待している。